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部屋をぐるりと見渡す。
天蓋付きの3人は寝られそうな大きなベッド、
調度品もぱっと見ただけで高級品と分かり、綺麗に磨かれている。
部屋はベージュとピンクで可愛らしくまとめられており、
女性らしさが感じられる部屋だった。
でも
ここは”私の部屋ではない”
痛みの取れた体を起こして、鏡台に映った私を見る。
シルバーの腰までの長い髪に、薄いブルーの瞳。
間違いなく美人の部類に入るだろう、整った顔。
そして今流れてくる、ロザリアとしての記憶。
間違いない、ここは乙女ゲームの世界、
しかもロザリアは悪役令嬢だ。
元々私は高卒のフリーター、23歳、
高校を出てから、近所のスーパーで働き、
韓国ドラマとゲームが趣味という、どこにでもいる庶民だった。
両親と一緒に住んでおり、家に5万入れれば、
そのうち結婚して出ていくだろうと、何も言われなかった。
放任主義だったが両親からは、しっかり愛情を受けていた。
それが、帰宅途中でトラックに撥ねられて・・・
そこまで思い返して、体がぶるりと震える。
多分即死だったのだろう。
お父さん、お母さん、
孫の顔見せてあげられなくてごめん・・・
頭の中で、前世の私、ゲームの知識、ロザリアの知識をまとめる。
エマの話だと、断罪の3日前、
ロザリアの記憶だと、ヒロインは皇太子ルートをクリアしそうだ。
そこまで思い返して感嘆する。
皇太子ルートは隠しルートか?と言われるほど攻略が難しく、
スマホで攻略を見ながらプレイしても、私は一度も皇太子を攻略
できなかった。
元々ヒロインは平民設定、皇太子を落とすには、
知識、魔法、マナー、ダンス、魅力、
全てのステータスをかなり高く上げなくてはならず、
どれか一つが欠けてもルートから外れる。
現実で考えると、とんでもない努力が必要となり、
それを学園生活の3年でしたと考えると敬意すら感じる。
こりゃ、家庭教師を付けて、幼い頃から勉強しながらも、
中の上ぐらいだった私では到底敵わないわ。
ヒロインの性格が悪ければ、将来が不安にもなるが、
悪いのはどちらかというと自分で、
よく皇太子、ヒロインを選んでくれたわねと言う感じ。
あの2人なら、この国は安泰だろう。
3日後卒業パーティで断罪が行われ、私は国外追放。
3日となると、ストーリーは変更できないと
考えた方がいい。
処刑など死ぬ運命ではなかった事に安堵しつつ、
対策を考える事にした。