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冒険者ギルドを出た私は、再び公園に戻ってきた。
すると昼間はいなかった女性の集団ができていて、
なにやら調理しているらしかった。
「こんにちは」
大きな包丁を振るっている女性を見る。
頭巾に縮れ毛を纏め、恰幅のいい女性が、
料理している女性集団のリーダー格らしく、
一番大きな動物を捌いていた。
そのリーダー格の女性に話しかける。
「何をされているんですか?」
「見ての通り、調理だよ」
「家で作らないのですか?」
「変な事を聞くね、家で料理するのは貴族様ぐらいだよ」
へえとあいずちを打つ。
見ていると、牛ぐらいの大きな動物を、
器用に捌いていく。
「こんなに食べきれるんですか?」
「これは、市場の串焼屋の肉さ、下処理を頼まれてね」
またへえと答える。
「私のも、解体してもらえますか?」
その言葉を聞いて、調理していた女性が、
始めて私を見た。
「もちろんだとも、調理が私の仕事だからね」
私は収納ブレスレットからウルフを出す。
「これをお願いしたいんです」
確かウルフは食べれたはずだ。
「これは鮮度がいいね、50リラだけどいいかい」
「はい、あ、なら5匹お願いします」
「いいよ」
今している串焼き肉の解体の次と言う事で、
その作業を見ながら、いろんな話をする。
この国では、朝食、昼食は市場で買って食べる、
独身者や冒険者は夕飯も市場で済ます事が多いらしい、
家庭がある、一部の女性は夕飯を作るが、お金を稼ぐ為に、
自分で食べるの以外に、動物やモンスターの解体の依頼も
受けているらしい。
ちなみに調理はこの公園の一部のような、
調理専門スペースで行う、
自宅にキッチンはなく、家で火を使う事に抵抗があるようだった。
ウルフを解体してもらってから、せっかくだし焼こうと、
火打石を出す。
石と石をカンカンと打ち付けていると、
調理していた女性が、あきれた声を出してきた。
「何してんだい」
「火を起こそうかと・・・」
「貸してごらん」
そう言って石を置いて、小枝を組む。
そして、石に手をかざした。
「点火」
その言葉に反応して、石が赤く光る、
すぐに小枝がぱちぱちと燃え出した。
「これは火の魔法が込められた石だよ
しかも調節ができる高級品だね、
どこで手に入れたんだい?」
「いや、貰い物で・・・」
「貰い物?」
余計に怪しまれたようだが、口をつぐんでやり過ごす、
火打石と言うのも、火を起こせる石と聞いて、
日本の知識で思い込んでいたものだ、
石をカンカンと打ち付けていた自分が恥ずかしい。
ちなみに、調理だけでなく、洗濯もお金を払えば、
家族の分と一緒に洗ってくれる人もいるらしい、
仕事をしているだけあって、この国の女性の地位は高ようだ、
聖女に代表されるよう、女性を大切にする風習が
根付いているのだろう。
帝国の男尊女卑、女は着飾って、男に従えと
教えられてきた身としては、国が違うだけで、
こんなにも違うのかと思う。
まあ、私が知っているのは、貴族の考え方で、
平民がどう考えていたのかまったく知らないけど。
ウルフの肉を焼いていると、一つウルフの肉を
女性にあげる代わり、野菜のおかずと交換する事になった。
とりあえず、夕飯を確保できてほっとする。
食べ物はモンスターを倒して持ってくれば、
多少はしのげる事が分かった。
「さて、宿だけど・・・」
「え、あんたまだ宿取ってなかったのかい!」
怒鳴られるように言われ、ついすみませんと言う。
「ちょっと待ってな」
そう言って、市場に向かって行ってしまった。
しばらく待っていると、おばさんが帰ってきた、
「とりあえず、女性専門の宿確保したよ、
ただ、安全面を重視したから4000リラと少し高いが、
どうだい」
「ありがとうございます」
何から何まで感謝しかない。
「この国には長く滞在するつもりかい」
「はい」
「なら、早めにアパートを借りるんだね、
アパートなら月3万リラぐらいだ、
宿で生活なんかしてたら、すぐにお金なくなるよ」
日本風に言えば、ホテル住まいをしたら、
住居費が大変な事になると言った所か。
ありがとうございます、とお礼を言って、
そのおばさんとは宿の前で別れた。




