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研究所長とニューラル・チップセット『ブレミア』

 文部科学省が管轄する戦略的研究機関JSRA(ジェイスラ)は、筑波学研都市にあった。東京ドーム三個分の広さがあるという敷地の南端に、全面ガラス張りの四号館があり、その一階ホールに、野崎芽衣は初めて入った。


 JSRAの最新の取り組みが記者発表されるということで、ホールにはパイプ椅子が並べられていた。

 普段は、材料メーカーや装置メーカーとの商談スペースになっている場所らしい。壁沿いに、JSRAの年表が掲げられ、その下に、各年代の代表的な成果物が展示されている。


 ナチュラルウッドを多く使って洗練されたデザインの空間は、研究所というよりは、オフィスという表現の方が近いのかもしれない。


 芽衣は、想像していたよりもカジュアルで、おしゃれな雰囲気に拍子抜けしていた。


「なんか、イマドキのショールームみたいだな。ここに、こんなに金をかけるんなら、一般開放してくれればいいのにな」

 隣に座った田宮は、芽衣の抱いた印象をそのまま言った。


「そうすれば、芽衣ちゃんの件も、不法侵入にならなかったのにな」

「ちょっ、ちょっと、やめてくださいよ。あれは、冤罪……いや、勘違いだったんですから」

 芽衣は、声を殺しながら、田宮の腕を引っ張った。


「ははは、ゴメンゴメン。編集長だったな、不法侵入の犯人は。よかったな、アリバイ工作が、上手くいって」


「ちょっとっ!」


 芽衣は、田宮の口を塞いだ。顔を避けようとする田宮の頬をしっかりと掴み、押し付けるようにして、鼻まで塞ぐ。


「うっ……うぐっ……ぐっ……」

 苦しそうにする田宮を見ていると、このまま殺したくなる。


 尊敬する先輩の日南をたぶらかして、愛人にしているのが許せない。

 しかも、DVの疑いまである。


「……うっ……うっ……。コラッ!」

 田宮が、芽衣の手を引きはがした。


「はぁ、はぁ、はあ……苦しいって、もう……。芽衣ちゃん、力入れすぎ」

 田宮は、眉を垂らして笑ってはいたが、口元は引きつっているようにも見えた。




 最後に会場に入ってきた総白髪の老紳士は、JSRA(ジェイスラ)の研究所長だと、自己紹介した。作業着を着ているが、話しぶりに知性が染み出している。


 その所長による記者発表が始まると、会場がどよめいた。

 痴呆症(ちほうしょう)、知的障害、脳梗塞や、脳出血の後遺症に対する画期的な治療方法を開発したというのである。

 臓器に対してその機能を補助したり、代行したりするものに人工臓器があるが、今回の発明は、脳を補助する人工脳(じんこうのう)であるという。


 人工脳施術(じんこうのうせじゅつ)――AI技術を応用して開発されたニューラル・チップセット『ブレミア』を頭蓋骨の内側に埋め込み、神経回路と繋いで、脳機能を補助する。

 三年後の施術許認可取得を目指し、近々、治験を開始するとのことで、この施術を応用すれば、将来的には、脳死に対しても、蘇生できる可能性があるという。


 会場がざわついたまま、記者発表は、あっという間に終わった。


JSRA(ジェイスラ)が、倫理的にヤバい研究をしているっていう噂になったのは、このことだったのか? めっちゃ、待ち望まれている医療技術じゃんか」


 放心している田宮の横で、芽衣はそんなはずはないと考えていた。

 それでは、JSRAの厳重な警備や、不法侵入に対する執拗な捜査の理由が説明できない。


「じゃあ、芽衣ちゃん、帰ろうか。……芽衣ちゃん?」

 見上げると、田宮は立ち上がっていた。

 芽衣は、メモ帳をバッグにしまうと、返事もせずに、田宮を追い抜いて会場の出口へと向かう。



「芽衣ちゃん? 芽衣ちゃん、どうしたの? 機嫌悪いじゃん」

 駅に向かう坂道で、芽衣は、田宮に振り返った。

 優しそうに見える田宮の顔だけど、騙されないようにと、自分で自分に言い聞かせる。


「田宮さん、なんか、コソコソと、やましいことしていませんか? 私、許せないんですけど」

「はぁ? なに、急に? オレのこと? オレにやましいとこがあるかって?」


 芽衣がこっくりと頷くと、「ないないない。無いにきまってるじゃん。そんなことあるように見える?」と、田宮がおどけて見せた。


「不倫とか、してるでしょ?」


「は? なにそれ。そんなの、してるわけないじゃん。オレ、愛妻家だよ。知ってるでしょ、芽衣ちゃんも」

「だって、私、見たの……」

「見た? 何を? オレが、誰かと不倫しているところを? いつ? 誰と?」

「先週、鶯谷のラブホテル街で……」


 芽衣は、スマートフォンをタップし、現場を撮った写真を表示し、田宮に向ける。


「言い訳は無駄ですよ。写真も撮ったんだから。日南さんと並んで歩いているところを」


 田宮は、芽衣の差し出したスマートフォンを覗き込み、目をむいた。ただ、動揺しているようには見えない。ただただ、驚いているだけのようだった。


 田宮は、画像に指を置いて拡大してから、何かを思いついたらしく、顔を上げた。


「ははは。これか。あん時のことを見られたんだな。それで、芽衣ちゃん、オレを疑ったんだ?」


 芽衣は、じっと田宮を観察した。開き直るのか、ウソを突き通そうとするのか、見極めるつもりだった。


「あれは、取材だったんだよ。ミス・ハナにインタビューが出来るっていうんで、日南についていったんだ」


「ミス・ハナの取材?」


「ああ。一度、インタビューに成功したって聞いててさ、再度、アポがとれたっていうから、期待してついて行ったんだ。でも結局、アレンジしてくれたはずの情報屋のチョンボで、ミス・ハナには会えなかったんだけどね」


 芽衣は、飯島から聞いたミス・ハナの異様な初取材のことを思い出した。確か、インタビューの場所に指定されたのは、ラブホテルの暗い部屋だったと言っていた。


「ミス・ハナが、JSRA(ジェイスラ)の職員だって、知ってるかい? だから、オレたちの追ってる倫理違反の疑惑についても、なんか、役立つ情報が得られるんじゃないかなと、期待してね」


 田宮の話に矛盾は無く、芽衣の心の中にあるモヤモヤが晴れていく。


 田宮と日南は、不倫関係では無かった。


 芽衣の心の中は、おおよそスッキリとした。

 けれど、日南に対する心配が、まだ、ほんのちょっぴりとだけ、残ってしまっている。


(日南さんは、別に彼氏がいて、その男に、拘束されているんだ……。やっぱり、かわいそうよね……)




 大阪、西心斎橋、通称『アメリカ村』の一角で、古着を売る露店の裸電球が割れて、悲鳴が上がった。夜でも若者でごった返す街に、さらに乾いた銃声が響く。

 現場で撮られた動画には、三度の銃声のあと、人波をかき分けるようにして、三人組の男が走り去っていく様子が写っていた。


 ニュースキャスターは、アメリカ村で亡くなったのは、指定暴力団二真会(にしんかい)系田辺組の幹部だと伝えた。その場に居合わせた一般男性も、銃弾を受けて重傷したという。


 東急東横線のドアに寄りかかっている野崎芽衣は、関西で起きた殺人事件のニュースを閉じ、メッセージアプリを開いた。


『アリバイ工作が上手くいったかどうか、教えていただけませんか。いつでもいいので、事務所に来てください』


 フラグからそんなメールが届いた時、芽衣の気持ちは沈んだ。

 デリカシーの欠片も無く、人間として欠陥のある性格だし、キツネ目の顔立ちも好みではない。独特な言い回しをする話し方も聞いていて疲れるし、何よりも、間違いなく、フラグには闇がある。

 あまり関わりたく無いというのが、本音だった。


 ただ、芽衣のアリバイ工作を完璧に仕上げてくれたので、御礼を言いに行かなければならないというのも事実で、その葛藤は、今も続いている。


 気を紛らわそうと、再びネットニュースを開いて、興味の無い記事を読んだ。



 井出フラグの事務所は、廃墟のようなビルの二階にあった。看板はおろか、表札すら掲げられていない。ここが、裏社会では有名なアリバイ屋の事務所だとは、誰も思わないだろう。


 芽衣が事務所に入ると、すぐにソファを勧められた。


「ところで、日南さんは、会社の同僚ですよね? あなたがたは、マスコミ関係のお仕事をしていらっしゃるらしいじゃないですか」


 フラグは、窓際でポットのお湯をマグに注ぎながら訊いてきた。


「え……、いや……はい。よく、ご存知ですね」

「まあ、ボクも、グレーゾーンの仕事をしてるんでね。お客様とはいえ、一応、素性を調べさせてもらってるんです」


 フラグは、インスタントコーヒーの入ったマグカップを二つ、ローテーブルの上に置く。


「日南さんは、なぜ、ボクのことを調べているんですか? 理由を知っていたら、教えてもらえないですかね」

 フラグは、ソファに座り微笑んだ。インプラントのような真っ白な歯が輝く。


「え? そうなの? ホントに、知らないけど……。あなたの、勘違いじゃないの?」


「勘違いなんかじゃない。そうじゃないと、ボクのところに、彼女が来る理由がわからない」


「え? それは、彼氏へのアリバイ作りの依頼でしょ? タカアシガニのオスのように、拘束したがる彼氏への対策をしてほしいっていう……」


「いや、違う。日南さんには、恋人はいなかったんだ」

「えっ? ウソっ? ホント?」


 フラグは、冷めたような目を芽衣に向けてくる。

「ボクは、お客様の素性は調べるって、さっき、言ったでしょ? 日南さんのこともちゃんと調べた結果、彼氏がいるというのは狂言だとわかったんだ」


 芽衣は、混乱した。日南がDVを受けていないとわかって安心する一方、なぜ、そんな嘘をついてまで、フラグにアリバイ工作の依頼をしたのかがわからない。


「たぶん、なんだけど……」

 フラグは、マグのコーヒーを一口飲んだあと、続けた。

「ボクの親父が、JSRAの研究者であることが関係してるんじゃないかって、踏んでるんだけど」


「えっ!? そうなのっ!?」


 芽衣は図らずも、気になる情報を得て、顔が熱くなる。


「だったら、私の方が、調べたいわ。お父さんは、何を研究してる人なの? あなたのお父さんに、取材させてもらえないかしら?」


「え? な、なになに? キミも、ボクの親父に興味があるの? ま、聞いてみてもいいけど。キミも、JSRAのミス・ハナを調べてるのかい?」


「あ、それは違う。それは、日南さんの班で……あれ? だから、日南さんは、ここに来たのかしら? やっぱり、そうなのかな?」


「まあ、いいや。実は、ボクもミス・ハナのことが気になってるし、親父に電話してみるよ。今から、時間はあるかい?」

「えっ? だ、大丈夫だけど……。いいの? 今から?」


 フラグは、クイッと、片方の口角を上げて立ち上がり、窓の方に歩き出した。

 スマートフォンをタップして、どこかに電話すると、相手の返事に頷きながら、メモ用紙にペンを走らせる。

 きっと、父親と会話しているのだろうけど、口調は事務的だった。


 フラグの声を聞きながら、芽衣は、ソファに上体を預けて天井を見上げる。

 思いがけない展開に、胸がドキドキしていた。上手くいけば、サイエンス班で、初めてJSRAの研究者に直接取材できる。

 そうなれば、大手柄である。


「なに、一人で、ニヤニヤしてるの? まるで、ロットネスト島のクオッカみたいにさ」


 窓際のフラグが電話を終えて、芽衣の方を見ていた。

 自然と頬が緩み、ニヤけてしまっていたらしい。

 ”ロットネスト島のクオッカ”が何なのかはわからないけど、その問題はいったん放置し、口元を引き締めて、姿勢を正す。


「どうだった?」

「今から取材を受けてもいいってさ」

 フラグは白い歯を見せ、親指を立てた。


 二人で事務所を出ると、事務所の外に、くたびれたスーツを着た中年男が立っていた。男は、壁際に身を寄せ、フラグの顔を上目遣いで見ている。


「また、()()()()()()んですか?」


 フラグの質問に、中年男は、もじもじしながら、小さく頭を下げた。頭頂部は薄くて、波打つ髪が脂ぎっている。


「今日は無理です。明日、また、来てください」



 JRと東京メトロを乗り継いで、秋葉原に出た。

 芽衣は、フラグに先導され、待ち合わせ場所だという、喫茶店に入った。


「さっきの、人は、よかったの? お客さんじゃなかったの?」

「ああ、事務所の外にいた、あの人? あの人は、お得意さんだよ。何度もアリバイ工作をしてあげている」

「じゃあ……」

「いいんだよ。ちょっとぐらい待たせても。しょうもないことばっか、してるんだから」


 その時、喫茶店の入り口が開く鈴が鳴り、総白髪の老紳士が入ってきた。


「おう、フラグ、久しぶりだな」


 右手を挙げて、こちらの席に向かってくるがフラグの父なのだろう。芽衣は立ち上がって、頭を下げる。


「初めまして。この度は、わざわざ、東京まで出てきていただいて、ありがとうございます」

 バッグから名刺を出して渡すと、フラグの父も、内ポケットから名刺入れを取り出して、中から一枚をくれた。


「いや、大丈夫ですよ。息子の依頼は、断れませんから」


『戦略的研究機関JSRA(ジェイスラ) 所長  井出 雄二』


 渡された名刺に、そう書かれていて、芽衣は、言葉を失う。

 フラグの父を見直すと、確かに、先週JSRAで記者発表していた研究所長で間違いない。

(ちょ、超大物……っていうか、(トップ)じゃない!? ヤバイヤバイヤバイ)


「親父、コーヒーでいいよな?」

 フラグが、店員に注文を伝える間、芽衣は、どうインタビューしていくのか、頭をひねった。

 一研究者ならば、いつかポロリと漏らすまで、あること無いこと質問し続けて、揺さぶるつもりだったけど、全てを把握しているトップということなら、直球勝負で、反応を見る方がいいかもしれない。

 その反応自体が、真実を物語っていると言えるのだから。


 クローン人間を生成したという噂と、ミス・ハナの存在、それに、記者発表した『ブレミア』を使った人工脳技術が、それぞれどう絡み合っているのかを知りたい。


「ああ、ミス・ハナは、ただの研究所の所員だよ。まだケツの青い研究者だ」

 芽衣よりも先に、フラグが質問し、フラグの父は、それに答えていた。


「ただの? じゃあ、なんで世間が騒いでるんだ? マスコミが嗅ぎつけて、ボクのところにまで探りに来たんだけど」


 フラグの父が、芽衣の方を見てきた。

 フラグは、日南のことを言ったんだろうけど、フラグの父は、勘違いしているらしい。


「それは、ミス・ハナが、AIロボットじゃないかっていう、根も葉もない噂のことか? フラグは、あんなくだらないデマを信じているのか? オマエほどの男が」

「ボクは、信じちゃいない。ただ、こんなに騒がれてるし、その可能性はあると思っている」


 フラグの父は、ため息をついて、一口、コーヒーをすすった。

 アイスコーヒーに刺さったストローを回しながら、フラグは、父の様子を窺っている。


「なあ、フラグ。ミス・ハナが、何をしたのか、知ってて、言ってるのか?」


 芽衣は、テーブルの下で、スマートフォンをタップし、録音を開始した。

 許可を取っていないけど、それも含めて、いつものやり方だった。見つかって、怒られたら消去すればいいという、田宮からの直伝の方法である。


「九十年間も立証できていなかった数学の未解決問題を解いた。世界で初めて証明することに成功した」

 フラグが面倒くさそうに答えた。


「その通りだ。前例のないロジックで、証明したんだ。AIの技術で、それは不可能だよ。オマエも知っているだろうけど、AIは、前例をデータベース化したものから推測して、判断することしかできないんだ」

 フラグの父曰く、AIは、想像は出来ても、創造はできないということらしい。

 それに納得したのか、フラグは、頷きながら、アイスコーヒーを吸った。


「ミス・ハナは、正真正銘の人間だよ。人前にでるのが苦手な若手研究者だ。がんばって追いかけても、大した記事にはならない。ただの恥ずかしがり屋を、表にさらすだけで、誰も得しないから、やめておいたほうがいい」


 フラグの父は、芽衣の方を見てきていた。



 フラグの父との面会は、30分ほどで終了した。そのほとんどの時間は、一方的にフラグの父が熱く語った『ブレミア』に費やされた。


 喫茶店から出て、フラグの父にお礼を言って別れる。

 涼しい風が吹き抜けて、風に髪が揺れた。この頃は夕方になると暑さも和らいできていたが、今日は特に涼しく感じる。


「なんだ、キミ、あんなことを追っていたのか。暇だな。全く」

 芽衣がフラグの父の背中を見送っていると、フラグは、呆れたように口を開いた。


 フラグは、芽衣がフラグの父にインタビューした内容のことを言っているようである。

 『ブレミア』の話が落ち着いた後、芽衣は、研究所内で、クローン人間を作ったことが無いか訊ねていた。そんな疑惑があり、事実なら、倫理的にも問題ではないかと。


「なんで? どういう意味? 疑惑を追うのが、私達の仕事なんだから、当然でしょ?」


 ただ、その質問は、フラグの父にはぐらかされたと思っている。そんなことをするわけがなく、もし、あったとしても、ここで、言うわけがないと言われたのである。しかも、笑いながら。


「クローンは技術的には可能なんだ。倫理的にNGなだけだよ」


 フラグは、遠い目をして、歩き去る父の背中を見ていた。


「その倫理的NGをやってるかもしれないのよ。それは、追及しないと、いけないじゃない」


「倫理的な違反は、人を不快にするだけだ。知って、誰が得をするんだ。広告収入の入る、キミたち、メディアだけだろ。敢えて暴かないという手だってある」


 芽衣は、フラグの意見にイラっとした。ちょっと当たっていそうなのが、悔しい。

「あなたのことを暴こうとしたら、どうかしら。アリバイ屋だって、倫理的にNGの仕事よね?」

「やりたかったら、やればいいさ。キミの会社の収入になるんだろ? それは、自然の摂理だよ。ほとんどの動物は、自分さえよければ良いというモラルの中で生きているんだ」


 フラグは、駅に向かって歩き出した。芽衣も、ついていく。

「ただ、それを超越できたのが、人間であり、人間は、自分以外の他者を気遣うから、食物連鎖のピラミッドの頂点に立てたんだけどね」


 フラグが立ち止まって、芽衣の方に振り返った。

「ただ、覚えておくがいい。人間も含めて、動物には、自分の邪魔をするものを排除しようとする本能が備わっている。キミの動き次第で、ボクは、望んでいない行動をしてしまうかもしれない」


 フラグの顔は、切れ者の学者のようにも、冷血な凶悪犯のようにも見えた。


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