雨、止んだな。
風はひしひしと音を立てて吹き荒れている。
そう言えば、あの時もこんな具合に空が荒れてたっけな。
俺も歳を取ったもんだ。
最近じゃデジタル機器の発展で世の中はガラリと姿を変えちまった。
今時の子供はゲームにスマホなんて洒落たもんをみんな持ち歩いてやがる。
いいや。俺は反対じゃ無いぜ?
外に出なくても友人達と顔を合わせる事ができるなんて面白いじゃねぇか。最近はLINEってゆーの?スカイプ?何でもいいや。
すげぇいい時代になったじゃねぇか。
今や世界の常識なんてものは、昔と比べ物にならないぐらい変わったんだからさ。
それにしても空の色は何も変っちゃいねぇや。
あの日のように汚ねぇ色をしてやがる。俺は台風が大嫌いなんだ。風も五月蝿いし外に出たら濡れるしで散々な目に遭う。
天気も変わってくれねぇかなぁ‥‥。
今の時代みてぇに空もいい加減泣き止んで欲しいもんさ。
昔の話だ。約70年程前さ、俺たちは経験しちまったんだ。あの日も雨が降っていたっけなぁ。俺達もまだ子供だった。
空は真っ暗で辺りは地獄のようだった。今日の空とは比べ物にならないくらい暗かった。
雨と言ってもただの雨じゃねぇ。これまた炭みてぇな液体が空から落ちてくるのさ。
きったねぇ、きったねぇ、なんて言っても。俺達は喉が渇いたらその水を飲むしか無いんだ。
まるで灯油みてぇに黒い液体を体に入れるなんて今じゃ考えられねぇだろ?まぁそんな時代もあったって話さ。
俺が小せぇ頃、外に出たら苦しむ人々でいっぱいだった。
何にそんなに怯えてるのか。何を求めてやがるのか。俺には全くわからねぇ連中がわんさか居た。
一つだけ分かるのは俺たちは生きてるって事だけだ。
当たり前の事に聞こえるかも知れねぇが、当時の俺達は違う。生きてる事が奇跡みてぇなもんだった。
俺のおっかあも妹も皆んな俺を残してどっか行きやがったんだからなぁ。可笑しな時代だ。
気が狂っちまうのは仕方ねぇんだ。どいつもこいつも優しい人達だったのにな?そうなっちまうのは本当に仕方ねぇんだ。
街は焼き焦げて至る場所から悲鳴やうめき声なんかが聞こえてきやがる。それは生きてる者の特権とも言える代物だった。
喉が潰れて声が出せない奴も居たなぁ。俺はあいにくその日は井戸に落ちちまって這い上がるのに苦労したんだ。
一瞬ピカッと光ったと思ったら大きな音と爆発に巻き込まれて大きな地響きが続いてた。
1週間は何も食えなくて体が言う事を効かなかったのはよく覚えてるなぁ。
皆んな着物と皮膚が一体化してて驚いたんさ。
そりゃあ子供の頃だし、そんなモン見ちまえば驚き恐怖するさ。
でもそん時ぁ自然と何も思わなかった。だって生きてる事が奇跡みてぇなもんだったからなぁ。
皆んなどんな姿になっても生きるのに必死だった。
俺達が頑張って頑張って生き延びた結果、今日も年寄り達の冗談に付き合って居られるのさ。ついでに子供達の笑顔も拝めて気分もいい。
俺も歳を取ったもんだ。
段々と雲が晴れて、空には太陽の光が差し込んでくるじゃねぇか。嵐が去った後の空はいつ見ても美しい。
今は夕暮れだって言うのに、お日様は1番の輝きを見せてやがる。いつ見ても感動しちまう。
だってほら見てみろよ。虹が出てるじゃねぇか。
そういやぁ、俺は昔もこんな景色見た事がある。そりゃあ綺麗で美してくて涙を流して見ていた気がする。
俺は昔言った言葉を同じように言い放った。
「雨、止んだな。」
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