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赤い空は悪魔の根城  作者: ヌメリ
プロローグ
1/8

第零-壱話

始めまして。作者のヌメリと申します。



今回は『赤い空は悪魔の根城』を閲覧いただき、ありがとうございます。

これは自分の処女作になります。なので、文章が幼稚だったり、もっと工夫できたりといろいろなことがあると思います。読みに辛いところがあるかと思いますが、精進して頑張っていきたいと思います。


 そこは地下だった。

 逃げ場を無くした湿り気のある淀んだ空気が、この一帯に取り巻いている。

 歩けば靴の音が木魂する。コツリ、コツリと音を鳴らし、その暗くて長い長い一本道を歩いていく。

 灯りが全く無い、というわけではない。微量ではあるものの、照明の類は存在しいている。

 しかし、それが自らの存在意義を主張しているかといえばそうでもなかった。正確には、この空間に含有された闇の強さに負けている。

 どれだけ強力な火を焚いても、千の蝋燭を灯しても、この闇は駆逐できない。

 陰ではないのだ。空間そのものが(くら)い。そのような属性を、どのようにしてか獲得するに至った場。


 進めば進むほど地下深くへと潜っていくその道の先には、極一部の人間しか入ることの出来ない部屋がある。いや、そこは部屋と表現するよりも、空間と言った方が正しいだろう。

 すり鉢状の、コロッセオを思わせる広大な空間。無骨であるがどこかその造りは壮麗で、巨大な城の大ホールに見えなくもない。


 そんな空間から音が聞こえる。音は一つ。ただ、いくつかの音が混じりに混じって、一つの音として耳に届く。空間の中央には円卓。さらにその中心には大きなホログラム装置が設置されている。そこから映し出される九つの影。音はそこから発っせられていた。



『――現在の状況を報告せよ』



 ノイズ混じりの音声。声音からして老成した男のものだ。

 呟いたその問いに答えたのは、唯一生身の体でこの場に佇むスーツの男だ。円卓の中央、ホログラム装置の横に立ち、手元の機械を操作する。この場にいない九人にデータを送り、それを用いて説明をしている。



「畏まりました。

 昨日の一〇四〇時。湾岸防衛ラインがテロリスト達による爆破攻撃により一部突破されました。敵の戦力は我が軍の一個中隊と同等、もしくはそれ以上の規模を持っていたと推測され、防衛ラインに常駐していた国防軍の約二十一%が壊滅しました。同日一四〇〇時に国防軍からの要請を受け、かねてから調整を行っていた兵器――認識番号ZX―〇〇二を試験運用も兼ねて一六五〇時に投入。敵陣へと強行突破をかけ、二時間後の一九○○時に敵の殲滅を完了致しました。

 この侵略により、防衛ラインの守衛装置の稼働率が六十%以下に低下。現在も復旧作業が続いております。

 作戦後、ZX―〇〇二は我々の制御下から外れ、独自の判断で行動していたため、回収を行った作業員二名が死亡。パーツの一部に欠損が生じ、動けなくなったところを回収致しました。これより長時間の使用は情報処理能力に影響を与えるという欠点が発覚しました。まだまだ調整の必要があるようです。以上のことから、スケジュールの大幅変更があり、予定よりも約二%の遅れが生じるものと思われます」

『ふむ、未完成の独立思考プログラムを搭載させたのは早計だったか。致し方あるまい。スケジュールに変更はない。試作機など所詮は人形。○○三以降の開発を早急に進めよ』

「データの不足により他部署に影響が出る恐れがありますが、如何なさいますか」

『かまわん。シリーズの開発を優先させよ』

「御意」



 生身の男がスッとフェードアウトしていく。これでこの場からは人間がいなくなった。残ったホログラムはそれに構わず話し合いを続けている。



『……まあ待て、焦っても仕方なかろう。スケジュールの変更などある程度予測していた通りではないか。ここは計画を多少先伸ばしにしてでも確実に駒を進めて行きたい』

『いやいや、そうも言っていられないさ。"約束の時"まで刻一刻と近づいている。時は金なりって言うでしょ。多少の無理は承知の上さ』

『それでも二%は大きいですよ。ここは慎重になるべき時ではないでしょうか。落とし穴に片足を突っ込んでからでは遅いんです。』

『確かにそうだ。しかし、時間がないというのも事実。今こうしている時間ですら惜しく感じる』



 五月蝿くなる会議室。

 それを断ち切るかのように、一人の男が口を開いた。



『鎮まりたまえ。今し方、良い知らせと悪い知らせがそれぞれ入った。そろそろ皆の手元にも届く頃かと思う。読んでもらえれば分かる通り、これで世の連中共は我々を無視出来なくなった。私たちはステージの舞台の上に立つ役者で、彼らはそれを補佐する黒子と成り果てた。この成果を喜ぼうじゃないか。謡い、舞い、そして叫ぶのだ。我らの大義を――』



 耳に入った言葉の反応は十人十色だが、共通するのは手に持ったグラス。赤黒い酒の入ったグラス皆、最後には薄気味悪い笑みを浮かべ、赤黒い酒の入ったグラスを目線と同じ高さへと持ち上げる。



『我等、青く秀麗な地球の返還を望む者』



 手に持ったグラスを手から零す。グラスは重力に引かれそのまま落下し、地面へと叩き付けられる。



『諸君、賽は投げられた。退路は既に断たれている。進むしかない諸君等の健闘を祈る。』

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