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Prerender

232連隊はVRFPS「ThirdOrder」内でも最強クラスと名高いグループだった。

しかし、彼らは歪みを抱えていた。

  視界が光に包まれた後、体の感覚がなくなり、ThirdOderの世界へダイブする。

白い視界が溶け始めると、視界には巨大なビル街が映る。

そこら中を迷彩服の男性キャラクターが闊歩し、ちらほらと女性キャラクターも見える。ここが私のThirdOderでのホームタウンだ。私の目の前に30人ほどの軍団が私を迎える。


「中隊長、今日もよろしくお願いします。」


私は景気付ける。

「よし、今回戦う解放機構のグループはエイジャックス。解放機構のSOSCに名を連ねる強力な部隊だ、心してかかるぞ」

私たちの今回の対戦は6人VS6人のフラッグキャプチャ戦。


敵の陣地奥にあるフラッグを先に先取した方の勝利だ。

今回の出撃メンバーは6人。多種多様な人員であり、多国籍な男性のアバターの集まりである。そしてイギリス系白人男性のアバターを使う私が隊長である。


今回の戦闘の舞台は中東でよくある古き低層建築群の間での市街地戦闘だ。市街地のような狭い領域での銃撃戦こそ、プレイヤーとしての能力が測られる。


 戦闘は初弾、敵側が優勢で見方が一人キルされたものの、斬り込もうとしたタイミングをなし崩し、圧倒的エイム力と長年の経験から来る戦術から勝利した。

今回の自軍側のメンバーは全員45レベル以上、つまり二年半以上プレイしている猛者たちなのだ。


 試合が終わり、見送ってくれたメンバーたちが一斉にわぁっと称えてくれる。

一通り歓喜合うのだが、後ろにいた白髪の男性、バンキッシュはいつもは喜んでくれるのに、今日は暗い顔をしている。メンバーたちが散り散りになった頃、バンキッシュが私の肩をポンと叩く。


「なあメイヒス、最近うちの隊おかしいと思わないか。」


私は少し首を傾げた。試合勝利後と言うのに、深刻な話のようだ。

彼は「あれだよ」と少し離れた位置で会話をしている幼女と男性数人のかたまりを指差した。


「あれ、あいつアバター変えたんだね。細マッチョ系の男性アバターを使ってたのに、いきなり9歳の幼女アバターになったんだね」


「なんでも「可愛いアバターを着て女の子に成り切る」のが楽しいんだそうだ。最近は鏡で自分をニヤニヤとずっと見てるよ」


「あれ、お前もか。急にアバターイメチェンするって聞いたがまさか褐色黒髪金眼の女性とは」

「いやぁ・・・結構前から密かに気になってたんですけど、彼氏に求められちゃって」


バンキッシュは少し頭を抱えているようだった。

「最近232連隊のメンバーがおかしくないか。30人のメンバーのうち18人ほどが男性アバターから女性アバターに変更してる。しかもずっと容姿とか声とかアクセサリーの話をしてんだ。」


私は軽く首を横にふり、「それは気にしても仕様がない」とバンキッシュ連隊長を諭した。

「それだけじゃ無い。女性アバターに乗り換えた奴と「パートナー」と言ってまるで男女の恋愛の如く付き合ってる奴らが増えてる。みんな鼻の下伸ばしてる・・・それだけじゃ無い、女性アバター同士で互いを「彼氏」「彼女」と呼称して体を弄り合ってるところを私は見た」



バンキッシュは私の肩から手をはなし、腕につけているウォッチデバイスで隊員の名簿を確認している様子だ。


とたん、隊員の一人が息を切らしてバンキッシュ連隊長の名を呼びながら走ってくる。彼は私たちの前に来るとスマホデバイスでネットニュース記事を見せた。


「昨日未明、大崎恭二容疑者が幼児誘拐・殺人の疑いで逮捕されました。彼は日頃VRFPSゲームThirdOrder内にて232連隊と呼ばれるグループに属しており、大崎容疑者曰く、「232連隊で起きた人間関係にムシャクシャしてやった」と述べており、被害者の本居瀬名ちゃん9歳への暴行の様子をネットで生中継していたと・・・・・・」


それから数時間と立たずネットは炎上し、あらゆるSNSで罵倒される。

232連隊が空中分解するまで数日と必要無かった。メンバーたちはどんどんとメンバー表から名前を消していき、最後には私メイヒスとリーダーのバンキッシュの名が消えた。



 私はそれから半年近くThirdOrderの地にログインしなかった。



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