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初めて失恋した陰キャな俺だけど、人生本気出すことにした  作者: こりんさん


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36話「約束」

「お前は勇者なんかじゃない、魔王だ!」

「ま、魔王!?」


 昼休みがそろそろ終わる頃、前の席に座る木村くんに俺は魔王呼ばわりされた。

 勇者から魔王って、180度評価が変わってしまったな。


「あぁ、山田さんのみならず、やっぱり田中さんまでもお前は一人占めじゃねーか! クラス、いや学年でもツートップの2人を同時に相手するなんて、そりゃもう魔王以外の何者でもねーよ! 正直悔しい、だがありがとう!」

「よく分からないけど、何がありがとうなんだ?」

「俺の椅子に山田さんが座ってただろ? おそらく自分の席以外で他の椅子に腰かけたのは俺の席だけだ! つまり俺は、このクラスのナンバー2だ!」


 謎の理由で胸を張る木村くんだった。

 まだ少し温もりが残ってる気がするぜと喜んでいる木村くんへ、かけるべき言葉も見当たらなかったためそっとしておく事にした。



 しかし、木村くんの言う通りだった。

 俺はこの短期間で山田さんと仲を深め、そして今日は田中さんからグイグイ来られるという事態にまでなっている。


 俺自身、たしかに魔王にでもなったような気分だった。

 自分を変えたくて生まれ変わった俺だけど、だからってこれは少々上手く行き過ぎではないかと我ながら思う。


 田中さんと言えば、樋山くんとの事はどうやら俺の早とちりで本当に誤解だったようだ。

 なら俺は、あの時勝手に失恋したと思い込んでいただけで、そんな必要は無かったという事になる。


 今にして思えば、田中さんにちゃんと確認したら良かっただけの話だった。

 結局、自分が傷付くのが嫌だから核心には触れず、俺は現実から逃げていただけだった。

 結果それで、事実とは異なる事で勝手に自己完結して傷付いていたんだから笑えなかった。


 でも、それはそれだと考える。

 今となっては、そんな勘違いはしようがしてまいが関係なかった。

 何故なら、あの時の事が誤解だろうが何だろうが、俺は失恋をして、そして今は山田さんの事が好きになった。それが今の全てだから。

 過去をいつまでも振り返るんじゃなくて、そうした今ある形を大事にすべきだと思う。


 だから、樋山くんが彼氏じゃないと知ったからといって、だったら田中さんに告白しようとかそういう気持ちが湧いてくるなんて事は無かった。

 そんな事したら、田中さんに対しても不誠実だと思うし、そもそも今俺が好きなのは山田さんなのだ。


 それこそ、そんないい加減な態度をしていたら、俺は本当に魔王になってしまう。



 勿論、田中さんの事は今でも好きだ。

 でもその好きは、きっと人としての好きというか、憧れなんだと思う。


 なんて、この間まで無個性陰キャだった俺が、LOVEとLIKEの違いみたいな事を真面目に考えてるんだから、お前は何様だよって自分で自分にツッコミを入れておいた。



 ◇



 下校時間になった。


 今日も俺は、山田さんと一緒に下校する。

 正直俺の中ではもう、この下校時間が一日のうちで一番の楽しみになっていた。


 自分が想いを寄せてる相手と二人で過ごせるこの時間が、楽しみじゃないわけがなかった。


「ちぇ、私も一緒に帰りたいけどこれから部活だぁ。部活辞めちゃおうかなぁ」


 帰ろうとする俺と山田さん二人に向かって、いじけた様子の田中さんが声をかけてきた。


「それは不味いと思うけど……」

「冗談だよ。でも、部活休みの日ぐらいは私も混ぜてよね! 華ちゃんとももっと沢山お話したいしねっ?」


 そう言うと田中さんは「じゃね!」と手を降りながら、同じ書道部に所属するクラスの友達と教室から出て行った。


 俺は以前、部活中の田中さんの姿を一度だけ見たことがある。

 普段は明るくて活発な印象の田中さんが、真剣な顔付きで書道をしているその姿に、思わず俺は目を奪われてしまった事を思い出す。


 所謂ギャップ萌えというやつだろうか、周りの雰囲気含めその姿はとても美しかった。



「じゃ、帰ろうか」


 俺は山田さんに声をかけると、それから一緒に教室を出た。



 ◇



「美咲ちゃん、いい子だね」


 校門に向かって歩きながら、山田さんは楽しそうにそう呟いた。

 俺はその言葉に「そうだね」と返す。

 山田さんが、田中さんのことを美咲ちゃんと呼ぶぐらい、二人の距離が縮まっている事が俺は嬉しかった。


「でも、やっと太郎くんと二人になれた」


 俺の顔を覗き込みながら、嬉しそうな笑みを浮かべる山田さん。

 俺はその言葉に「そうだね」と同じ言葉を返す。

 でも、同じ言葉でも先程とは異なり、俺は嬉しさとドキドキできっと顔が赤くなっているだろう。


 山田さんは「太郎くん、さっきからそうだねばっかり」と楽しそうにコロコロ笑っていた。


 そんな楽しそうな山田さんを見る度、俺はいつも幸せな気持ちになる。

 こうして一緒にいられること、それから一緒にいる事でこんな風に楽しんで貰えることが純粋に嬉しかった。


「ねぇ太郎くん、ちゃんと覚えてるよね?」

「うん、勿論」


 覚えてるとは、日曜日に山田さんからチャットでお願いされたあの事だろう。



『迷惑じゃなければ、また明日ご飯食べに来て欲しいな』



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