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1話「女神様と転校生」

 大好きな田中さんは、同じクラスの樋山くんと付き合っていた――。


 その事を知った俺は、次また誰かに恋愛感情を抱いた時、同じ悲しみを二度と味合わないようにする為にも生まれ変わる事を決意した。


 もう、こんな無個性陰キャな自分とはおさらばするのだ。

 とは言っても、具体的に何からしたら良いのか分からず、気持ちだけが空回りしていた。


「おはよー山田くん! ねぇ朝から悪いんだけど、ここってなんでこういう答えになるのかな? 昨日の夜悩みに悩んだけど全然しっくり来なくて……」


 朝のホームルーム前。

 これからの自分について悩んでいる俺の机の前で、今日も田中さんが屈みながらノートに書いた数学の問題を見せながら質問してきた。


 茶色がかった髪でショートボブが良く似合う、活発で可愛らしい女の子。


 俺はこの田中さんに恋をし、そしてついこの間失恋したのだ。

 正直、こうして面と向かって話しかけられるだけでも辛い……。


 でも、だからといって田中さんに対して冷たく接するなんて薄情な真似は出来なかった。

 例え彼氏が居ようと、田中さんはろくに友達も居ないガリ勉無個性陰キャの俺に声をかけてくれる、女神のような存在だという事に変わりはないのだから。


「あー、こ、ここはこの公式を使ってこの値をまず求めるんだよ」

「あーなるほど……だからこの値が求められるのか、うんうん……よし! なんか解った! ありがとね!!」


 そう言うと、田中さんは満足した様子でニコッと笑って去って行った。


 ――あぁ、その笑顔がまた、俺の失恋した心を締め付けるんだよ田中さん……。


「おはよー美咲! えーあんたまたあの陰キャと話してたのー?」

「もう、人を見た目で判断したらダメだよ。山田くんは良い人だよ?」

「マジで美咲って優しいよね。あたしは無理だわー」


 田中さんが俺と喋っている事を笑うクラスメイト達の話し声が聞こえてくる。

 でも、俺はいつもそこまで落ち込まずに済んでいる。

 何故なら、優しい田中さんがいつだってその事を咎めてくれるからだ。

 そういう誰とでも分け隔てなく接してくれるところも、俺が好きになってしまった大きな要因の一つでもあった。


「そうだぞ、山田くんが可哀想だろ?」


 そして、そんな田中さんに同意したのはイケメンの樋山くんだった。


 田中さんの彼氏の樋山くんだ。


 思わず振り返ると、ニコッと笑いかける樋山くんに、下を向いてはにかんでいるように見えた田中さんの姿を見ていたら、なんだか居たたまれなくなってきた俺は再び前を向いて、これから生まれ変わるためのプランをさっきより強い思いで1人考え始めた。



 ◇



「よーし、ホームルーム始めるぞー。と、その前に今日からこのクラスに転校生だ。入っていいぞー」


 え? 今は5月だけど、こんなタイミングで転校生?

 と思い、クラス全員急な転校生に、一体どんな人が来るのかと扉の方へと視線が釘付けになる。



 ガラガラガラ。



 ――そして扉を開けて入ってきたのは、これまでの人生で見たこともないような、とんでもない美人だった。




 長く真っ直ぐサラリと伸びた金髪に、スッと通った鼻筋。

 長いまつ毛にくっきりとした二重瞼。

 それはまるで彫刻のように整っているが、どこかぷっくりして愛嬌もある顔立ち。

 身長は165センチ前後はあるだろうか、色白でスレンダーなスタイルはまるでモデルのようで、すらっと伸びた細く長い足はとても美しかった。


 これはハーフ? それとも外国人だろうか?

 とても同じ日本人には思えないような整った容姿をしていた。


 そんな完璧超人の美少女が、突如として教室に現れた事で、「おぉ」と教室内がどよめいた。


 そんな転校生はというと、平然とした様子でささっと黒板に自分の名前を書くと、前を向いてクラスの皆に挨拶をした。


「初めまして、山田華子です。宜しくお願いします」


 ……ん? 今なんて?


 山田華子?


 なにそれ、めちゃくちゃシンパシー感じる名前だなぁ。


 ってか、その容姿でその名前!?


「はい、じゃあ山田は一番後ろの角の空いてる机使ってくれ。おっと、山田って言うと、これから山田は2人になるな。そうだな、これからは下の名前で呼ばないとだな。良いか? 太郎?」

「は、はい。構いませんけど」


 すれ違い様、そう先生に呼ばれた俺の方を見て、転校生は小さく「え?」と呟いたのが聞こえてきたのであった――。



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