第43話「ぶっ潰せ!」
MIDが稼働を続ける組み立てライン上で銃撃戦となる。要塞内での、至近距離での戦いは今まさにロールアウトした無塗装の兵器をいきなり傷物にしながら、僅かな弾薬と燃料を積み込み、まだ加工の熱が
残っている中でパラサイト部隊蹂躙に体当たりで走り始める。
「押されてるな」
素直な感想だった。要塞施設内部での戦いが頻発している。MIDの生産設備そのものが攻撃に晒されている。
嫌な流れに載っている。
だが、わかっていたことではある。
「押し返せー!」
「おぉー!」
生産されたばかりの、塗装もまだの金属剥き出しの歩兵戦闘車に乗り込んでパラサイト突撃部隊に対して逆突撃でもって撃破に成功した。
「戦況は?」
「よくない。東も押し込まれてる。地上を放棄して時間が経つほどに、他部隊との連絡が難しくなる。内部での襲撃は効果が高いが、犠牲は莫大な数だ」
「元より全滅するか全滅させるかの戦いだ。犠牲の数を気にすることは今じゃない」
クラーケンめ。
コンダクター級が新種として診断したパラサイトの大型獣だ。
地中侵攻を繰り返す、パラサイトの大型掘削生物には頭を悩まされる。果肉を内側から食い荒らす線虫のようだ。クラーケンの穴からパラサイト主力が侵入を繰り返している。あちこち寸断されて、目の前に敵がいるのかいないのかさえわからない始末だ。
「少なくともMIDが七匹は始末したのは確実なのだそうだけど」
ウィドォの土中にいるクラーケンがたったの七匹とはとても思えない。
「おい! 八九の組み立て工場はどっちだ?」
「あっちだ! どうした?」
「クラーケンの穴埋めだ。お前ら行くぞー!」
要塞内をウォーワゴンに乗った一団が走り去って行く。装甲の至る所に弾痕や爛れ、溶けた傷をそのままにだ。
「こいつが次に開くときは、パラサイトに爆破されたときだ」
溶接された隔壁を、工兵が叩く。冷たい金属が強い意志を音に返した。
「自動銃はここでいいか?」
「うおっ!? おい、象野郎!」
「どうした?」
「無造作に扱うんじゃない、センサーがこっちに向いてるぞ」
「うちの商品だぞ、ちゃんと知っている。それにまだ電源を入れていないし、安全装置も掛けたまま。銃口の前でセンサーのセッティングはしたくはないだろう?」
ずしん、ずしんと巨体が歩く。
エレファントさんが、オートキャノンに自律射撃装置とでも言うものを取り付けていた。オートキャノン自身がセンサーで敵を探して、自動的に発砲するというものだ。
「ラビさん、駄目だよ。ガンドラの武器を捨ててこっちで準備できる装備に換装したほうがいい」
「そうですか。では、お願いします」
「大丈夫。MIDは優秀だからすぐに終わる。すみません、MID達。ガンドラの装備を頼みます。至急でよろしくお願い」
私も新しくヘルムを貰った。古いヘルムをMIDに渡す。ヘルムにはパラサイトの牙が食い込んだ。歯の穴にはまだ、神経と肉が残っていた。




