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第17話「武装商船団」

 民間船の……武装商船団?


 MID艦隊のどんなに小さな艦と比べても、そして星系防衛軍の正規艦とも比べものにならない小規模のシップが徒党を組んでいた。スペースパイレーツではない。だけど……。


 通信が送られてきたようだ。圧縮データの転送だ。単純な文字の羅列、しかしヒトがMIDと共闘の意思を示した一文は、


『友の為に』


 と、始まっていた。不器用で見るに絶えないような疎い文書は明らかに、慣れている連中ではないのだろう。だが、ただ、その一文にだけは、紛れようがないものを持っている。


 武装された民間船が八隻。


 無理矢理にマスドライバーを連結して、巨大な火力を持たせていた。対艦装備には過剰だが、パラサイト相手には最低火力に届いている。


 コマンダー級MIDはこれを、未確認航宙体として識別していたが、更新され『友軍』と変わった。


 だが私の耳は警戒に後ろへ下がる。尻尾も半分猜疑に膨らむ。


 コマンダー級AIと、この武装商船団の通信が繋がる。私は単なるオブサーバーだ。MIDのやり方を何よりも尊重する。何よりも、MIDが始めた戦いでもある。


 ヒトとヒトの会話に、私は耳を傾けた。


「MID艦隊代表コマンダー級より、そちらの所属と目的の明示を要求する」

「こちらビッグドック船長、並びに商船団団長を兼ねてるブルだ。所属はーーない! 義勇を同じくした野郎どもとささやかな兵隊をMIDと一緒に戦う為に連れてきた」


 モニターに現れたのはダブついた肉をもつ犬顔だ。船長は船長でも海賊船の船長感があるアイパッチで片目を封している。


「ブル、参戦に感謝を」

「何、ロートルだが艦隊戦の心得あっての義務だ。何よりうちのMIDがそっちに飛び出しているからな。勝手に家出した息子をぶん殴る為に来ただけのことよ!」


 がはは、とでも言いそうではあるが、ブルはそんな風に笑うことはなかった。


 ブル……もしかしてブル将軍のことか? いや、あの顔は見覚えがある。間違いない、ブル元将軍だ。ライオンズ星系第一基幹艦隊の前任だ。退役してから行方知れずだったがこんな所にいたとは予想外だ。


 猛将のブル、とにかく勇み足で相手を見て何かするのではなく、相手に何もさせず対応を強制するような、ゴリ押しだが、相対すれば否応無くゴリ押されてしまうそんな将軍だった。


ーー他にも。


 顔を寄せたヒトは様々だ。八隻の船に八人の船長だ。隼顔、熊顔、馬顔。巨大な体をしているヒトもいれば、私の掌に乗ってしまいそうなほど小さなヒトもいる。海のもの、山のもの、空のもの、ともあれヒトだ。


「うん?」


 聞き耳を立てていれば、見覚えのあるヒト顔が混じっているじゃない。魔猫カッパーが混じってる。あの魔女まだ生きているのか……スターニャさん驚愕だ。スペースパイレーツの花魁だ。


 カッパー色の鈍い毛並みに魔女の三角帽子から、緑の猫目がモニターを睨んでいる。同族の贔屓でも綺麗なヒトだ。


 他にもターキにベリアン……知り猫が多いのは、カッパー配下の『星を猫殴り団』が丸々参戦しているせいだ! 星を猫殴り団と言えば、『伝統のスペースパイレーツ』が転んで自警団とか都合のいい修飾で生き残ったしぶといヒト達だ。ウィドォで顔合わせした瞬間が今から怖いね。


 そんな時カッパーが、


「あー、コンダクター? そっちの艦隊にスターニャて男がいるだろ、ちょいとそいつと繋いでおくれ。オープンチャンネルは恥ずかしいからできればクローズで頼めないかな?」

「何故だ。しかし了承した。暫し待てーー繋いだぞ、星を猫殴り団のカッパー。秘匿済みだ」

「ありがたい。ヒトには聞かれたくはない内緒話だ」


 繋げるんじゃないよ。私は内心でコンダクター級を非難した。何故ならば、私とカッパー、そして星を猫殴り団の面々とは浅からぬ因縁顔見知り以上なのだ。


「スターニャ! こんの裏切り者やっと見つけたぞ!」

「誰が裏切り者だ! ヒトの団を分捕ったのはお前だろ!」

「だからって俺がどれだけ苦労して立て直したか! これもそれもスターニャ、お前が団の資産や資本を根こそぎ盗んだからだ。船団を維持するだけで赤字でどれほどの俺が苦労したことか……」

「自業自得だよ」


 カッパーは「やかましい!」と吠えた。吠えた拍子に三角帽子が落ちた。お付きの侍女がそれを拾い、カッパーの頭に被せ直す。


「はぁ……まあいい。なんだかMIDがおかしな連中と一戦派手に戦争やってるみたいだから参加しようと思っただけだ。スターニャはオマケだ」

「景品かと思ってた」

「八つ裂き決定だがーー」

「ねぇ、なんでそんなに後腐れまくりなのさ」

「ーー今日は見逃す。MIDに助けられた恩のぶんで手助けするのは仕方がないがな。MIDの為に戦うさ。スターニャは頃合い次第だが、覚悟しとけ」


 殺しの予告されちゃったんだけど。猫は蛇並みにしつこい。


〈戦況報告〉

「昔みたいに戦艦じゃないんだ! 無茶はするでないぞ」民間の武装商船および自衛艦隊の参加を始めて確認する。MID艦にはとても性能で及ばない弱小艦隊だが、元軍人や産まれながらの蛮族の指揮の下で、同艦隊は星を猫殴り団を中核とした艦隊斉射でパラサイト艦を一隻ずつ確実に屠っていく。イオン砲に対しては高度な耐性を獲得していたパラサイト艦隊は、量子弾頭爆雷の釣瓶打ちに轟沈艦を多数だし、撤退する。MID艦隊にライオンズ星系のヒトの艦隊が参加して、新しい局面に移る。

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