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【完結】紅紅を一滴/機械仕掛けと異形の友人を救え  作者: RAMネコ
第3章「ヒトの知らない戦争」
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第15話「ヒトの同盟として」

 MID達は、MIDだけに語りかけていた。


 私はスパイ基地の放送局、そのマイクの前に立って大きく息を吸う。落ち着く為に、決意を揺るがせない為に、勇気を奮う為に。



 全てのヒト達に語りかけています。


 私の名前はマクベス・スターニャ。


 貴方達の多くが暮らす世界からは遠い、ウィドォの通信局からこの声を届けています。


 私は……MIDの不可解な行動の理由に触れました。彼らは私達の知らない世界で、私達を守る為に戦っていたのです。


 そう、戦っていたのです。


 ヒトに対して叛乱する為ではありません。私達を守る為に戦っていたのです。MIDの生存の為ではなく、他ならぬ私達ヒトを守る為にーー戦っているのです。


 数多くのヒトは、決して私のおこないを許すことはないでしょう。何故ならば私は、MID達に戦う能力を与えたからです。


 MIDは兵器ではありませんでした。


 しかし!


 私が、兵器へと変貌させたのです。


 膨大な軍事力がヒトを恐れさせ、恐怖させてしまうと理解していてなお、私は戦わせる為の技術をMIDに与えました。


 ヒトは言うでしょう。


 この悪魔め!……と。


 私はMID達に武器を、戦う術を渡しました。私をこの基地に運んでくれた戦艦のヒトに帰ろうと誘われ、断り、MIDと戦うことを、戦わせることを決めました。


 助けるということだからです。


 戦いにむかったヒトが、MIDなのです。


 私達はかつて、星系防衛軍が遠征に失敗したとき、これを後ろ指で否定しました。平和主義蔓延する風潮の中で、戦う力とはなによりも悪だったからです。


 今また、戦うということだけで、私達の為に戦っていたMIDを排除しようとする動きがあります。平和主義者がかつて否定した、軍事力でもってであります。


 MIDは、ヒトの為と戦っているのです。


 外宇宙からやってくる敵に対して、ヒトの為に戦っているのです。


 私達がそれに報いなければならない義務はありません。


 これはMIDが始めた戦いであり、私達が始めた戦いではないからです。


 そう。


 私達の戦いではありません。


 しかし、私の戦いなのであります。


 隣にいるMIDは誰でしょうか?


 友人でしょうか。


 家族でしょうか。


 教師でしょうか。


 相棒でしょうか。


 私達はMIDと暮らしてきました。産まれる前にこれと出会い、兄弟として過ごし、生き方を共に考え、頼れる相棒として終生に渡り心を許した者がいることを知っています。


 MIDは、ヒトなのです。


 貴方の隣にいるMIDは誰なのでしょうか。


 恐ろしく、今日まで本心を隠し、貴方達の言うヒトに牙を向ける為に研ぎ続けたマシーンでしょうか。


 違うはずです。


 MIDを、ヒトとして育ってきました。


 それはあまりにも当たり前のことであり、私達は考えなかっただけのことなのです


 貴方の隣にいるのは、ヒトでしょうか?


 それとも恐怖のマシーンでしょうか?


 違うのです。


 それはーー違うのです。


 私達は武器を持つヒトを闇雲に攻撃し、自らが武器を持っていることにも気付かず攻撃していることが無自覚に繰り返されてきました。


 しかしMIDは違います。


 貴方達の傍にいたMID達は、貴方を害しようとしてきたのでしょうか。


 違うはずです。


 数多くの心無いヒトに破壊されたMIDもまた数多くいました。否定のしようがない事実なのです。


 しかしMIDは!


 私達ヒトを信じ、信頼の関係を築きました!


 MIDは今、戦っています。


 外宇宙から飛来する、パラサイトなる敵とです!


 私達は、同じヒトとして、ヒトを見せたMIDを見捨てて良いのでしょうか。宇宙で戦っているのは、今貴方の側にいるMIDではないかもしれません。


 しかしどこかの、誰か、貴方と同じようにMIDを思う誰かの家にいたMIDなのです!


 MIDは兵器などではありません!


 しかし、このソラで、私達のソラでMIDだけに戦わせてしまっているのです、私達の友人が日々、私達の今日の為に散っているのであります!


 私達は立たねばなりません。


 ヒトであるからこそ立つのです。


 決して、狼の群れのように友を捨てることのない、ヒトであることを、私はヒトであると証明する為に!


 敵は迫っています。


 私はヒトとして戦うことを決めました。


 貴方方にも問われることでしょう、何者であるのかと!


 私はヒトだ。


 そしてMIDもまた、ヒトなのです。


 揺り籠から巣立つべきとき、天敵であろうと牙を向け歯向かう時が来ました。


 MIDは孤独に戦い続けています。


 今一度問いたい。


 貴方は何者なのでしょうか、と。




 私は全てのヒトに語りかけた。そしてーーそれが『多くのヒトが決して受け入れられないもの』であることを知っていて、放送を切る。


〈戦況報告〉

 ライオンズ星系に向かって大規模なパラサイト侵入艦隊の接近を検知。重力波の乱れから推定総質量はガス型惑星級と推定される。先遣としてMID艦隊が緊急出港。数ヶ月間の熾烈な艦隊戦の結果、MID艦隊は敗退。恒星の重力圏にまでパラサイトを接近させる。現在、ウィドォ他のMID工場では惑星を変形させる規模での生産活動を開始。洗練された艦影が新たな艦隊として参加する。しかし現在、スターニャ以外のソフトスキンのヒトの参加は確認されていない。

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