そうなの?
祐実ちゃん(佑樹君)と和夫君(和歌子ちゃん)を思い出した僕は浩子ちゃんと由一君にお願いして会う日をセッティングして貰った。
「楽しみだな~、佑樹君や和歌ちゃんにまた会えるなんて!」
約束の日曜日、お気に入りのスカートをはいて気分よく家の中をくるくる回りながら壁やら弟の頭たらタッチして周った。
「痛いよ姉ちゃん!」
弟の祐一は頭を抑えて怒るが僕より小柄な祐一は可愛いもんだね。
しかし祐一って前世では僕の名前だったんだぞ。
僕の両親は名付けのセンスが無いらしい。
僕の名前の祐子だって前世では妹の名前だったし。
そんな事より出発の時間だ。
今日の待ち合わせは浩子ちゃん達の地元の喫茶店。
何でも浩子ちゃんや由一君の行きつけだって。
まだ中1なのにさすがだ。
「ここだね....」
浩子ちゃんから貰ったメモを頼りに喫茶店にたどり着いた。
緊張する、僕の事は覚えてはいないだろうけど良い友達になりたいもん。
「失礼します....」
「いらっしゃいませ」
喫茶店の扉を開けると中にいた優しそうなママさんが僕を迎えてくれた。
「清水と言いますが、山添さんの紹介で...」
「ああ、浩子ちゃんのお友達の?
さあどうぞこちらに皆様お揃いですよ」
僕はママさんの案内で店内1番奥のテーブルに向かった。
「祐ちゃん、こっち、こっち!」
僕の姿を確認した浩子ちゃんが立ち上がって手招きをしてくれる。
学校と違い私服の浩子ちゃんも可愛いな。
「迷わず来れたかい?」
由一君は今日もビシッと決めている。背も170㎝近いし体も引き締まって、何より格好良いんだよね、スタイルも顔も。
美少女が性別逆転で美少年って恵まれ過ぎでしょ?
「とうした祐?」
由一君が不思議な様子で僕を見ていた。
「別に」
思わずぶっきらぼうになってしまう僕だった。
僕って小さい奴だね、心も体も。
「もう少ししたら2人共来るわよ」
自己嫌悪に陥っている僕に優しく浩子ちゃんは教えてくれる。
浩子ちゃんは前世でも優しくって今回も優しい。
「お待たせ!」
「ごめんね待った?」
大きな声に振り返ると大きく筋肉質な男の人と同じく外国人みたいな綺麗な女の人がいた。
すぐに分かった。
『佑樹君と和歌子ちゃんだ!』
心の中で叫んだ。
「初めまして、清水祐子です。お会いできて嬉しいです。浩子ちゃんと由一君には学校でいつも仲良くさせて貰っています」
祐実ちゃん達に頭を下げて挨拶をした。
「君が清水さんか、由一や山添さんからいつも聞いてるよ。花谷和夫だ、宜しく」
「こちらこそ」
にこやかな笑顔で和夫君(和歌子ちゃん)は右手を差し出したので僕も右手を差し出して握手をする。大きくて肉厚な手だ。
「...祐子?...」
「どうした佑実?」
僕の名前を言った祐実ちゃん(佑樹君)は少し驚いた様子で固まっていた。和夫君が佑実ちゃんを不思議そうに見ている。
「ううん、何でも。初めまして、川口佑実です。
今日は宜しくね」
佑実ちゃんも僕に右手を差し出し握手をした。
佑実ちゃんの手はしなやかで大きく、体はバランス良く筋肉が付いていて、日に焼けていた。
それにしても綺麗だ。
前世の佑樹君は4分の1イギリス人が入っていて俳優みたいに格好良かったけど、今回の佑実ちゃんもきっとそうなのだろう。
日本人離れした抜群のプロポーションに加えて髪は少し茶色く、顔の彫りも深くてハリウッド女優みたいに美しかった。
「どうしたの?」
美しさに見とれていると佑実ちゃんは首を傾げた。
「いえ、あの綺麗だなって...」
「ふふ、ありがとう」
しどろもどろな僕を見て祐実ちゃんは優しく笑う。
その美しさにまた見とれてしまう僕だった。
その後和夫君と佑実ちゃんの事を浩子ちゃんや由一君から沢山聞いた。
仁政に行きたかった祐実ちゃんだったが学力では仁政は難しく、クラブ推薦を取りたかったが佑実ちゃんのしていたのはソフトボール部。
仁政中学校はソフトボール部の推薦枠は無くて仁政高校から推薦枠があるから高校は仁政に行くつもりの事。
和夫君は剣道をしていて仁政中学校より剣道が強い秀星中学校の剣道部で腕を磨いて、高校からは佑実ちゃんや浩子ちゃん、由一君と同じ仁政高校を受けるつもり等を聞いた。
「2人とも凄いね!」
スポーツ万能な2人のクラブの活躍を聞かされて大興奮していた。
「佑実もすっかり言葉が綺麗になったわね」
浩子ちゃんが佑実ちゃんに言った。
「そうだな昔は男の子みたいな言葉使いだったな」
「そうだよ、僕より強烈だったぜ」
「そうだったかしら?忘れちゃった」
由一君や和夫君の言葉にいたずらぽく笑う佑実ちゃんから男言葉は想像出来ない。
その後も楽しい話が続いたが僕はジュースを飲みすぎてトイレに行きたくなった。
「ごめんね...」
立ち上がると佑実ちゃんが浩子ちゃんの代わりに立ち上がってくれた。
「私が案内するわね、浩子は一番奥の椅子だから。さあ祐ちゃん」
佑実ちゃんに手を引かれ無事トイレに着いた。
用を済ませ手を洗おうとした時、鏡の前で待っていた佑実ちゃんが腕を組んでいた。
その仕種になぜか既視感を覚える。
「久し振りだな祐一...」
「え?」
佑実ちゃんの言葉に頭が真っ白になる。
「俺だよ佑樹だよ、お前も記憶があるんだろ?」
まさか、僕以外に前世の記憶がある人がいたなんて...