楽しい昼食だ。
僕達は昼食を教室じゃなくて学食で食べるようになった。
最初は僕に気を使っていた様で学食で一緒に食べよって言うと次の日からみんな一緒になった。
「美味しい!」
浩子ちゃんの作った玉子焼きに舌鼓をうつ。
玉子焼きは砂糖は使わず出汁多めのだし巻き玉子でご飯にピッタリ。
「祐ちゃんの野菜炒めも美味しいわ」
「本当だ旨いな」
「どれどれ...旨いな!」
「祐ちゃん料理上手いのね」
僕の作った野菜炒めに浩子ちゃんや由一君、碧君、孝子ちゃんまで褒めてくれて僕は嬉しくなる。
でも孝子ちゃんの弁当クオリティには叶わない。
「孝子ちゃん、毎日これだけ作ってるの?」
「そうよ、碧君の分を一緒に詰めたらね」
「凄いわね」
孝子ちゃんは何でも無いように言うが弁当箱には可愛く握られたおにぎりが10個整然が並び、おかずも唐揚げやアスパラベーコン焼き魚に野菜の煮物。
別のタッパーにサラダまで入っていた。
しかも全て美味しい。
前世の孝子ちゃんが孝君だった時はカップラーメンにお湯を注ぐしか出来なかった事が嘘みたいだ。
「さすがは特進のお母さんだ...」
「あら、それって誉め言葉?」
思わぬ失言に孝子ちゃんはおおらかな笑顔で応える。
「もちろん!」
「ありがとう!」
孝子ちゃんの朗らかな笑顔に釣られて僕は返事をすると孝子ちゃんハグが来た。
特進クラスだけじゃない、まさしく日本のお母さんだ。
「孝子、特進で親友が出来て良かったな」
「浩子もな」
僕と浩子ちゃん、孝子ちゃんの様子を見ていた由一君と碧君は安心した顔で笑っていた。
笑顔の4人の顔を見ながら少し違和感を覚えた。
「どうしたの?」
「何か苦手な物があったの?」
浩子ちゃんや孝子ちゃんは心配そうに僕を見るが何か思い出せない気がしていた。
(何だっけ?食べ物、食いしん坊、肉食系...)
駄目だ、思い出せないや。
「何でも無いよ!」
笑顔で何も無い事をアピールする。
みんなも僕の笑顔を見て安心したようで昼食の続きを食べ始めた。
「本当、青木さんのご飯は旨いな」
「量といい、味といい、私負けちゃったわ」
由一君と浩子ちゃんは孝子ちゃんの料理に感心しきりだね。
僕と浩子ちゃんの料理なら良い勝負かな?
孝子ちゃんは照れて顔を赤くしている、可愛い。
碧君はそんな孝子ちゃんを愛おしく見ていた。
「和夫がいたら絶賛するな」
「ええ、佑実もね」
由一君と浩子ちゃんが初めて聞く名前を口にした。
「由一君、浩子ちゃん、和夫君と佑実ちゃんって?」
僕は導かれるように質問をした。
「ああ、祐ちゃんや孝子ちゃん達は知らないわよね。私達の小学校時代の親友で恋人同士よ」
「2人共食いしん坊でね、たくさん食べるし味にもうるさかったんだ」
浩子ちゃんと由一君の言葉に僕の記憶の蓋がまた少し開いた気がした。
「へえ、それなら孝子の料理を食べれば大満足だな」
「だったら嬉しいけど、その2人はここにはいないの?」
「うん、和夫は私立の秀星中学校に行ったし、佑実は僕達の地元の岸島中学だよ」
孝子ちゃん達の会話が続いている。
僕は浩子ちゃんに尋ねた。
「和夫君と佑実ちゃんって苗字は何?」
「え?」
「苗字だよ、名前と苗字の苗字」
「あ、うん、川口佑実ちゃんと花谷和夫君だけど...」
「ああ!」
(川口佑樹君と花谷和歌子ちゃんだ!あの2人まで性別逆転していたなんて!)
懐かしい前世の親友を思いだし絶叫していた。
「どうした?」
「さっきから少し変だぞ?」
みんなの心配する声が聞こえたが僕の頭の中は佑実ちゃん(佑樹君)と和夫君(和歌子ちゃん)に会わせて貰う事を考えていた。