さあ、来い(恋)!
「あれから2年か...」
ノートに書き込む手が止まる。
「随分新しいページが増えたな...」
浩子ちゃんと会って次は中学校って言ったのが2年前、小学校4年生の時だ。
その日以来浩子ちゃんに会ってない、後は運命に委ねると決めたからだ。
「勿論僕が受からない事には始まらないんだけどね」
塾に行ったり、久子ちゃんのお姉さん達からも勉強を教わった。
お陰で合格圏内に入る事が出来たんだ、でも目標は特進コースだから油断はダメだよね。
久子ちゃんも一緒に勉強会をして頑張ったけど、残念ながら仁政を受けるには少し無理みたいで1つレベルを下げる事にした。
久子ちゃんは残念そうだったけど僕はそれほど心配していない。
だって伊藤律君も久子ちゃんと同じ学校を受ける事になったから。
去年のバレンタインデー、久子ちゃんは律君に
告白して律君の返事はOK。
2人は晴れて交際を始めた。
「前世を知る僕には複雑なんだけど...」
確か前世では久子ちゃんは男の子で、律君は女の子、高校1年の時に子供作っちゃって大騒動だった。
今回は性別が入れ替わってるから心配ないよね。
「祐子、そろそろ行きなさい」
「はーい」
お母さんの呼ぶ声に部屋を出る。
今日は僕の中学受験日、いよいよ本番!
僕の通っている小学校は制服が無いけど今日は黒いスカートに白いカッターシャツといった制服っぽい格好で纏めた。
鏡の前で最終チェック、髪を急いでとかしてニッコリ笑顔。
「うん可愛いぞ祐子」
いつものお約束を済ませて玄関に。
「忘れ物無いわね、受験票と筆記用具は持った?」
「うん、最終確認したよ、バッチリ!
それじゃ行ってきます」
心配するお母さんに笑顔で答えて家を出た。
「よし行くか!」
気合いを入れて電車を乗り継ぎ仁政第一中学校に向かった。
受験票を確認して特進コースのテストが行われる教室に入る。
「いないや...」
そこには浩子ちゃんや由一君の姿は無かった。
やっぱり僕の囁きくらいじゃ運命は変わらないのか、でも折角受ける学校だ。
僕は全力で試験に挑んだ。
数日後、合格発表の日を迎えた。
覚悟を決めて合格者の番号が書かれた掲示板を見つめる。
「あ、あった!」
自分の番号を見つけて飛び跳ねた。
前回はここに運命の人浩二君や由香ちゃんがいたんだ...少し悲しい気持ちゃった。
「祐子ちゃん!」
その時だ、僕を呼ぶ声が。
「浩子ちゃん...」
そこには浩子ちゃんと由一君が立っていた。
「おめでとう!私達も受かったわよ!」
「やったな祐子!春から一緒の学校だな!」
2人は笑顔で僕の方に近づいて来る。
「え?どうしてここに?」
事態が飲み込めない。
「僕達も仁政第一を受験したからに決まってるだろ」
由一君は呆れた様に言うが、やっぱり理解出来ない。
だって受験の時に2人はいなかったでしょ?
「祐ちゃん私達は一般コースを受験したのよ」
浩子ちゃんの言葉にハッとする。
そうだ前回2人は一般コース入試で結果が成績優秀だったから特進コースに入ったんだ。
「そうだったんだ、でも何で僕が受かったって分かったの?」
「そりゃ飛び跳ねて喜んでれば分かりますよ」
「そうだよ」
浩子ちゃんと由一君は優しい笑顔で僕を見た。
その言葉に涙が止まらない。
「それじゃ僕と同じ特進コースだね!」
僕の言葉に浩子ちゃんと由一君の顔が曇る。
「ごめんなさい、私達は一般コースなの」
「浩子は特進コースに入れるだろ?僕に気を使わず行けば良いじゃないか」
2人のやり取りを見て前世の記憶を思い出す。
前世の僕は一般コースで浩二君と由香ちゃんは特進コースだった。
今回、浩子ちゃんは特進コースの成績で由一君は一般コースに受かったけど特進コースに入れる点数は取れなかったんだ、よし、まかせて!
「浩子ちゃん、大丈夫だよ。一般コースから特進コースに編入は出来るから」
「祐ちゃん、それ本当?」
「うん、僕調べたんだ。1年間の定期テストで優秀な成績を修めた生徒は特進コースに編入する権利を貰えて特別試験をクリヤーしたらコース変更出来るんだよ」
「知らなかった...」
僕の言葉に2人共驚いている。
だって前世そうだったからね。
「浩子、だったら祐子ちゃんと一緒に特進コースを選べよ、僕も必ず編入してみせるから」
「でも...」
由一君の言葉に浩子ちゃんは未だ戸惑っている、分かるよ2人は付き合っているんだね。
優しく浩子ちゃんの手を僕は握った。
「大丈夫だよ、由一君なら必ず編入出来る。
それに仁政のクラスは10組あるんだ。
だから浩子ちゃんと由一君が一緒のクラスになれる確率は10分の1だよ。
だから私と同じ特進で由一君が入って来るのを待とう」
「祐子ちゃん...」
浩子ちゃんは僕を見てから由一君を見た。
由一君は優しい笑顔で頷く。
「分かった、私特進コースに行くわ」
浩子ちゃんはしっかり僕の手を握って微笑んだ。
(よし!これで僕の中学校生活が始まる)
これからの中学校生活に夢を膨らませた。