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ここは....

「あれ?」


気がつくと家の布団で寝ていた。


「なんで僕は家にいるの?」


(...いやそれ以前に何かあったよな?)


何があったのか思い出せないまま自分の体をチェックするが別に異常は無い。

しかし何か違和感が...


「祐一早く起きなさい!高校に遅れるわよ」


お母さんの言葉にも違和感を覚える。

(祐一?あれ僕は祐子?いや祐一だよね)


「どうしたの祐一?」


「はーい!今行くよ!」


素早く布団を畳み着替えを済ませ高校の制服に着替える。


「ズボン?スカートじゃなくて?」


やはり何か違う気もする。

でも何故か慣れた手つきでズボンを履いた。


「おはよう母さん」


「おはよう祐一」


「おはよう兄ちゃん」


朝のダイニング、そこに居たのは母さんと妹の祐子。


「祐子?」


「何?」


「いや何でもないよ」


食パンをかじりながら祐子は不思議な顔で僕を見ている。


「ねえ?」


「何?」


「祐子は妹だよね」


「へ?」


祐子はあんぐり口を開けたまま固まってしまった。


「ごめん忘れて!」


急に恥ずかしくなり慌てて祐子に言った。


「変な兄ちゃん」


「本当」


母さんと祐子の怪訝な視線を受けながら簡単なお弁当を作り朝御飯を食べる。

急いで家を出た。

駅に向かう道の途中、誰もいない広場で誰かを待っていた。


「何で僕はここにいるんだろ?」


1人で学校に通っていたはずだ。


「おかしいな?」


次々と起きる違和感、原因は分からない。

だから答えも出来ない。

そうこうしているうちに高校に着いた。


「おはよう!」


校舎に入り友達に挨拶をする。


「おはよう祐一」


「おはよう祐ちゃん」


青木孝君と川井瑠璃子ちゃんがにこやかな笑顔で迎えてくれるが何かが違う。


「どうしたんだ?」


僕の様子に孝君が聞いてくるが相変わらず説明出来ない。


「何か違和感が...」


「違和感ってどんな?」


「大丈夫祐ちゃん?」


2人は心配してくれるが僕は何も言えない。


「おはよう祐一」


「おはよう祐ちゃん」


後ろから呼ぶ懐かしい声がする。

絶対に忘れる事の無い懐かしい声が...


「...浩二君?」


胸が激しく高鳴る。また会えたんだ...


「どうしたんだ?」


浩二君と由香ちゃんが僕を見ながら不思議そうな顔をしていた。


「浩二君!!」


浩二君に向かって駆け出した。


「わ!」


飛び付かれた浩二君は驚いた顔で抱き止めてくれる。


「どうしたんだ一体?」


「何でもないよ!何でもないんだ!」


涙を止める事が出来ない。


「浩二君...浩二君...」


何度も、何度も名前を呼び続ける僕に浩二君は少し困った顔で固まっている。


「浩二君、祐ちゃんどうしちゃったの?」


「僕にも分からないよ」


由香ちゃんは浩二君に聞いている。

そうだ、説明出来ないよね。


「祐一、いくら浩二が好きでもやり過ぎだよ」


「孝、誤解を招く事を言わないように。祐一もそろそろ離れなさい」


(ちがうよ誤解じゃない、僕は浩二君が好きなんだ!)


「浩二君!!」


「な、なんだ祐一?」


「僕は浩二君が好きだ!大好きなんだ!」


「は?」


「いや祐一お前は男で...」


「待って浩二君、祐ちゃんの体が...」


「え?」


由香ちゃんの言葉に慌てて自分の胸に手をやる。


「嘘?」


ペタンコの胸に脂肪が?

これはおっぱい?


「やった!浩二君に告白出来た!女の子で告白出来たよ!」


大声で叫ぶ僕に4人は唖然としているが構わない。

言えないまま過ごしたのが人生の後悔だったんだから。


(ん?人生の後悔?いや待てよ僕はまだ高校生でしょ?

何で人生を振り返ってるの?)


次の瞬間目の前が白く光り僕の意識は無くなった。




「あれ?」


気がつくと今度はベッドで寝ていた。


「さっきのは夢?」


僕は自分の胸に手を当てる。

そこには慎ましいおっぱいが2つ鎮座していた。


「良かった」


何が良いのか分からないが何となく呟き返りをうった。

すると目の前に浩二君も寝ていた。


「わ!」


目の前で見る浩二君の顔。

さっき見た顔より大人びていた。

慌てて飛び起きる。


「ここは?」


部屋の中は薄暗いがよく見ればベッドの脇にある小さなテーブルの上にはお酒の瓶や缶が置かれていた。


「この部屋何か見覚えが...」


そうだ、ここは僕が大学時代に住んでいた下宿のマンションだよ!


「懐かしいな」


僕は部屋の中をうろつきながら家具を触る。


「で、何で浩二君と僕は一緒に寝てたの?」


浩二君が僕の部屋に来る事は滅多に無かった。僕の方が浩二君と由香ちゃんが同棲しているマンションに入り浸っていたからね。


「ん?」


足元に置かれていた会社のパンフレットを見つけた。

それは僕が前世勤めていた会社で...


「思い出した」


僕は採用試験に受かって浩二君にお祝いして貰ったんだよ。

『ご褒美に御祝いしてよ』って浩二君に迫って、それで浩二君は僕の下宿に来てくれて、


「2人共飲みすぎちゃったんだよね」


ベッドで眠る浩二君の脇に膝立ちになり頬を寄せる。


懐かしい匂いだ。


「浩二君...」


「ん?...由香?」


「わ!」


浩二君の言葉に飛び退く。


「お、起きてるの?」


恐る恐る浩二君に尋ねるが静かな寝息が聞こえるだけだ。


そうだ由香ちゃんはこの時浩二君の子供を連れて実家に里帰り中だったんだよ。

思い出したぞ、この時の浩二君の言葉に尻込みしてチャンスを逸したんだ。


『男の子同士はダメだよね』って無理矢理自分を納得させてさ。


(納得なんか出来なかった、結局僕の心には後悔が残ったんだ!)


「今は僕、女の子だから良いよね...」


僕は目を瞑り浩二君の唇を...


「ありがとう浩二君」


そっと唇を離して微笑んだ。

次の瞬間また目の前が真っ白になり意識を失った。


「ん?」


目覚めると1人の男の子と差し向かいに座っていた。


「君は?」


「清水祐一、前世の僕だよ祐子ちゃん」


「は?」


「君は階段に突き落とされたんだ、それで意識が飛んで前世の記憶の中に迷い混んだのさ」


「じゃあさっきまでのは?」


「前世の記憶、つまり夢だよ」


「なんだ夢か」


ちぇ!せっかく勇気を出して頑張ったのに夢じゃ覚めたら終わりじゃないか。


「夢でも嬉しかったでしょ?」


「うん、まあ」


言われてみれば悪くは無かったよね。


「ありがとう、僕の記憶を改竄(改ざん)してくれて」


「え?」


「僕は前世の記憶を管理している。

でも後悔が凄くてさ、たまに君の頭の中に前世の記憶が漏れていたのさ」


「後悔?」


「ああ後悔だよ、スッキリしたでしょ?」


「そうだね」


「本当は今回の人生で前世の記憶が甦る予定は無かったんだ」


祐一君は少し不本意な顔で僕に笑いかけた。


「だって浩二君は女の子でしょ?君も女の子、どうやら今回の人生は全ての人の性別が入れ換わってるみたいだね」


「成る程」


「君の前世最期の希望は女の子に生まれ変わって浩二君と結ばれる事、浩二君が男の子、祐一は女の子人生でね」


「うん」


「でも今回、君は何故か前世の記憶が一部持ったまま現世に生まれた。だから今回の人生な訳だ」


「そっか」


「でもありがとう」


「なんで?」


「後悔の記憶を変えてくれて」


「そんな、感謝されても困るよ」


「いいや僕はずっと後悔の記憶を見続けていたからね、だけど新しい記憶を見る事が出来た」


「良かったね」


「うん、でもお別れだ」


「どうして?」


「だって君は死んでない。だから元の世界に帰らなくては駄目なんだ」


「元の世界に?」


「うん、元の世界で君を待っている人がいるよ。

今君を心配している人達の所にね」


「それって...」


「そう伊藤律君だよ」


「律君...」


僕の頭に律君や浩子ちゃんとの記憶が甦る。


「思い出したみたいだね」


「...うん」


「さあ帰りなよ愛する律君の元に」


「帰るって?」


「言ったろ君は記憶の世界の人間じゃない、今を生きる人間、清水祐子なんだ」


そう話す祐一君の目に涙が溢れていた。

僕の目にも。


「分かった」


「ありがとう、元気で」


「こちらこそ祐子ちゃん」


「戻ったら前世の記憶は?」


「消えちゃうよ、ここでの事も今までの前世の記憶も全てね」


何となく分かっていた僕は祐一君の言葉にしっかり頷いた。


「また生まれ変われるかな?」


「大丈夫だよ、きっと生まれ変われるよ。

今度は希望通りに行けば良いね」


「そうだね、でも今回の人生も素晴らしいよ」


「僕もそう思うよ」


立ち上がり祐一君に右手を差し出す。


「さよなら」


「うん、さよなら」


祐一君も立ち上がり僕達は握手した。

次の瞬間僕の意識は消失した。


『ありがとう祐一君、さようなら記憶の中の浩二君...』


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