やっと言えた...
いよいよプールに行く日がやって来た。
前日から緊張が続いて余り眠れなかった。
「おはよう祐子」
「おはよう律君」
朝9時過ぎに家を出るといつも学校に行く時の待ち合わせ場所に律君は立っていた。
律君疲れてるね、もしかして寝不足?
「律君眠れた?」
「うん、どうかな、祐子は?」
「私?まあ少し寝不足かな」
「そうか僕もだ」
律君ははにかんだ笑顔で答えた。
(うーん今日の律君もかっこいいな)
他愛もない話をしながら駅に着いた。
ここから孝子ちゃんの予約してくれたプールまで2時間程、浩子ちゃん達は電車の方向が違うから現地集合の予定なので律君と2人で向かう事になる。
律君と2人でお出掛け、平日だけど僕達は夏休みの真っ最中。電車の車内はいつも以上に空いてるので僕達は並んで座れた。
「そうだ律君、私達水着を買ったんだよ」
「...そうか楽しみだな」
緊張して余り話せないけど話題をと思って言ったのに律君は上の空だ。
「私だけじゃなくて浩子ちゃん達も新しい水着を買ってね」
「...そうか、楽しみだな」
(おい!楽しみとは何だ!)
「浩子ちゃんと佑実ちゃんったら凄いビキニ何だよ」
「...そうか、楽しみだな」
「律!!」
怒りの余り律君を呼び捨てた。
「え!あ!ごめん祐子の水着楽しみだな、祐子の水着だけ楽しみなんだ」
「もう遅いよ!」
律君は慌てて僕に謝るけどもう遅い、だって浩子ちゃんと佑実ちゃんのビキニ姿を見て鼻の下を伸ばす律君を想像しちゃって僕の怒りゲージはMAXだ。
「ごめん祐ちゃん」
「いいよもう!」
必死に謝る律に対して怒りが冷めないまま目的の駅に着いた。
「おーい祐ちゃん!律君!」
改札を出ると6人の男女が手を振って僕達を呼んだ。
「浩子ちゃん!佑実ちゃん!孝子ちゃん!」
律を置いたまま駆け出した。
「お待たせ!!」
「大丈夫よ、私達もさっきの電車で着いたところだから」
にこやかな笑顔の浩子ちゃんを見てたちまち機嫌が直る。我ながら単純だ。
「おい律、どうした?随分落ち込んでるな」
「大丈夫か腹でも痛いのか?」
「喧嘩でもしたのか?」
「うん、まあ...」
後ろで律は和夫君や碧君と由一君に聞かれてるけど知らない!
「どうしたの?律君と何かあった?」
孝子ちゃんが心配そうに聞く。
もう許してもいいんだけどタイミングが掴めないんだ。
「うん少しね」
「何か事情がありそうね、後で聞いてあげる」
佑実ちゃんが優しく微笑んで気持ちは更に楽になる。
そして僕達8人は送迎のバスに乗り込み目的の
リゾートホテルに着いた。
「わあっ!」
「凄い!」
パンフレットで見ていたより遥かに立派なホテルの陣容に僕達6人は唖然とするが孝子ちゃんと碧君は平然としている。
「さあ行こう」
「こっちだよ」
孝子ちゃんと碧君に連れられ僕達はホテルの受付のカウンターで手続きを済ませてから更衣室に入った。
「そんな事があったのね」
「祐ちゃん、律君を許してあげて。律君も緊張してるのよ」
「そうよ祐ちゃん、律君の気持ちも理解してあげて」
水着に着替えながらみんなから言われる。
「うん。分かってるけど許すタイミングがね」
言いながら萎んだままの浮き輪を口にくわえ少し空気を入れた。
「大丈夫よ、祐ちゃん。律君と向き合えば自然と仲直り出来るよ」
浩子ちゃんが自信ありげな言葉で椅子に座っている僕の前に来て励ます。
「そうよ祐ちゃんの事が大好きな律君だもん自信持ちなよ」
佑実ちゃんも僕の肩を優しく叩く。
「浩子ちゃん、佑実ちゃん」
元気になってきた僕は顔を上げて2人を見た。
「う...」
「「どうしたの?」」
僕の目の前に見事なスイカが4つ。
浩子ちゃんと佑実ちゃんのおっぱいが揺れていた。
「こんな凄いプロポーションを見たら律は...」
『律は僕だけを見てくれる』そんな自信はたちまち消えてなくなった。
「祐ちゃん」
「孝子ちゃん」
「大丈夫よ、浩子ちゃんと佑実ちゃんが特別なの。自信を持ちなさい」
孝子ちゃんは優しく僕を後ろから抱き締めてくれた。その優しさに安心感、安らぎを覚える。
「ありがとう孝子ちゃん!みんなありがとう。
さあ行こう!」
「親子ね」
「うん」
後ろで浩子ちゃんと佑実ちゃんの声がする。
僕は勢いよく立ち上がり更衣室を出た。
「遅かったな」
プールサイドで和夫君達が待っていた。
「女の子は時間がかかるのよ」
佑実ちゃんが笑いながら和夫君の腕を取りジュースのカウンターに消えていく、
(あれ一緒に泳がないの?)
佑実ちゃん達を見てそう思っていたら僕の周りに誰もいない。
「祐ちゃん」
声を掛けられ後ろを振り返ると、
「律君...」
ハニカミながら律君が立っていた。
水着の律君は想像していたより筋肉質で素敵な体つきをしていた。
「似合ってるよ」
見とれていたら律君に先言われちゃった。
「ありがとう...」
照れるよ。
「浮き輪」
「え?」
「浮き輪膨らましてあげる」
律君は僕の手から浮き輪を取って口にくわえ...
「いやあの...」
「何?」
律君は僕の浮き輪に口を着けて空気を...
「律君その浮き輪、祐ちゃんがさっき...」
いつの間にか後ろにいた孝子ちゃんが唖然とした顔で呟く。
手にはジュースを持っていた。
「え?まさか?」
律君が顔を真っ赤にして固まる。
「うん...」
僕は顔を上げる事が出来ない。
「ご、ごめん!」
律君は一際大きな声で謝る。
「いいよ律、私が何も言わなかったからだよ、こっちこそごめん。気持ち悪いよね」
「気持ち悪くなんかないよ...」
「律君...」
「祐ちゃんが気持ち悪いなんて思うもんか!」
律君の力強い言葉に僕は息が出来ない。
「あ、あの」
「祐子好きだ」
真剣な律君の告白、2回目だけど今回の告白は僕の心に幸せと喜びが広がる。
「私も」
「祐子ちゃん...」
「私も律が好き!」
勇気を振り絞って律君に言った。
「...ありがとう」
律君は真っ赤な顔で笑ってる。
「どういたしまして」
プールサイドで大声での告白、ロマンティックなシチュエーションを予定していたけど。
ま、いっか!
「おめでとう祐ちゃん!」
「やったな律!」
後ろから祝福の声がする。
いつの間にか浩子ちゃんや佑実ちゃん、孝子ちゃん達が嬉しそうな顔で僕達を見ていた。
いや6人だけじゃない、他のお客さんも僕達を見て微笑んでいる。
「聞かれちゃったね」
「うん」
僕と律は真っ赤な顔で俯いたまま手を差し出した。
「祐ちゃん宜しくね」
「うん」
こうして僕と律は恋人になった。
ありがとうみんな!




