こらー!
律君に返事をしないまま2ヶ月が過ぎようとしている。
仕方がない僕の心には男の子がまだ残ってるんだ。
でも前世の浩二君がもし男の子で生まれて今回出会えていたら間違いなく僕の方から告白しただろう。
だから心が男の子とかは僕の場合関係ないはずなんだけど。
「いってきます」
寝ぼけ眼を擦りながら自宅を出る。
3年間1人で学校に通っていた。
でも2ヶ月前から...
「おはよう祐子」
「律君おはよう」
自宅の角を曲がると律君は当たり前の顔をして待っててくれた。
あの告白以来律君は朝の通学を一緒にするようになった。
「なんで入学の時から一緒に行こうって言わなかったの?」
律君に聞いたら、
「勇気が無かったんだ、ごめんね」
そう伏し目がちに言われて告白の返事をしていない僕の方が申し訳無い気分になった。
「暑いな」
電車の中で律君が独り言を呟いた。
季節は7月、梅雨明け間近の蒸し暑い朝の通勤電車。
「そうだね今日は珍しく混んでるし」
僕もハンカチで汗を拭きながら答えた。
僕達の住む町ははっきり言って田舎だ。
ど田舎ってほどじゃないけど駅だって木造駅舎だし、電車の車両だって2両編成のワンマンカーだし(時間によっては全ての扉が開かない)
「今日は車両トラブルで本数を減らしているんだって」
立っている僕達の前で座ってたOL風のお姉さんが僕達に教えてくれた。
もちろん初めて見る人。
「そうだったんですね、ありがとうございます」
「は、はい、どういたしまして...」
律君がそう言って姉さんの方に律君スマイルを向けるとお姉さん顔を真っ赤かにしてうつ向いちゃった。
やがて電車は少し大きな駅に着く。
僕達の降りる駅ではないから車内は少し空くかな?
「わっ!」
思ったよりたくさんの人達が一斉に電車を降りる。
持っていた吊革を離してしまい人波に流されてしまう。
「祐子!」
律君が素早く僕の腕を掴み電車の椅子と扉脇のスペースに僕を誘導した。
「大丈夫か?」
「うん...」
電車の中は人が入れ替わったけどさっきより混み具合が増した。
元々が2両しかない電車だから少し人が増えると酷い事になる。
今僕は扉脇の壁に背中を預け、目の前に律君が向かい合わせで満員の人達に背中を向け守ってくれている。
(律君ってこんなに背が高かったんだ...)
僕は見上げて律君を見た。
僕が身長151cmだから(これでもクラスでは2番目だよ、小さい順の)
多分175cmはあるんじゃないかな?
こんなに間近で律君を見上げるって不思議な感覚だな。
よく見たら体も引き締まってる。
そう言えば律君は小学4年から中学3年まで6年間陸上やってたね。
仁政の特進はクラブに入れないから勿体ないな。
(しかし、格好良いな...)
思わず見とれてしまう。
律君ってこんなに格好良かったっけ?
きっと先日の律君の告白以来僕が律君を余り見て無かったせいだ。
「祐子?」
見つめていると視線に気付いた律君が聞いてきた。
『うわ、近いよ律君!!』
心の中で絶叫していた。
「な、なんでもないよ」
「そうか、苦しかったら言ってね」
震える声で何とか返事をすると律君は更に被せるような爽やか笑顔で言った。
いつだったか浩子ちゃんと行った孝子ちゃんの家で見た少女マンガの様なシチュエーション。
『憧れるわ~』ってマンガを胸に押し当てて悶える孝子ちゃんに少し引いたけど、孝子ちゃんごめんね。
これはときめくよ、憧れるのも分かります。
「だ、大丈夫」
顔が真っ赤なのを隠す為少しうつ向いて律君から視線を外した。
「大丈夫だよ、祐子は僕が守るから」
うつ向く僕の耳元で律君は囁いた。
その瞬間、
僕の最後の男の子としての矜持は消えた。
「律君、ううん、律、私も好き」
思わず呟いた。
「え?何?」
「律、まさか聞こえなかったの?」
「うん、ちょうど電車が揺れちゃって。ごめんね祐子もう1度言って」
そんな一世一代の告白だったのに!
「ダメしばらくは言わない」
頬を膨らまして律君の脇腹を指先で突っついた。




