第8話「夢弥」
第8話「夢弥」
私は大川 夢弥 小川学園に通う1年生で巫女の家である大川家の次女
高校生になって私は母親である 大川沙弥から二つの任務を受けた。
「四宮裕也の監視とデータ採り」そして、、、
「四宮裕也を大川家に連れ戻す」
この二つ任務を受けた。
2年前まで四宮裕也は大川家の地下にて両性巫女の研究として軟禁状態にされていた。
四宮裕也本人はあの4年間を監禁されたと言っているが
実際は地下室での軟禁
ある程度の自由は許されていた。
私は小川学園から帰宅して今日の夕ご飯を準備していた。
プルルルル♫
私のスマートフォンが着信音を鳴らしていた。
画面を確認するとそこには姉である「大川姫弥」の名前が表示されていた。
私は電話に出た
「はい?」
「夢弥ね?」
「そうよ、そっちからかけてきたんでしょ?」
「念のための確認よ。重要事項だからね、今そこに誰もいない?」
私は部屋を見渡す。もちろん誰も家には連れていないので人はいない
でもそれは、あちらの家でも確認できるようなことだ。
私の部屋には監視カメラと監視用マイクがいくつか仕込んである。
家に監視されながらの一人暮らしは果たして一人暮らしって言うのかな?
「いないわよ、そっちでも見てるんでしょ?」
「個室には監視カメラ入れてないからそこにいる可能性もあるでしょ?」
「あ、そう。どっちにしても今は居ないわよ」
「なら、いいわ。」
「さっさと本題を言ってくれない?」
「急かさないでよ、可愛げのない妹ね。」
「別にあんたに可愛いなんて思われたくもないわ。バカなこと言ってないで早くして。」
「もう、せっかちね。」
姫弥はそう言ってから間を空けて本題に入った。
「明日なのだけど、横須賀港の倉庫が狙われているっていう情報が入ったの」
「どこに狙われているの?」
「一宮家よ。」
「それはまた、奇遇なところから来たものね。」
一宮家は四宮家直結の巫女家系。四宮裕也の事で知りたい事があるのか
疑問に思っても一宮がそこを狙うって事は目的は大体決まっている
「そうね、おそらくは裕也の資料が狙いよ。」
「横須賀にそんなもの保管してたの?」
「あそこは研究所の一つなのよ。何人か巫女は配置してるけど、戦闘のできる巫女が少人数なの。」
「そこで私が行って護衛でもしておけっていうの?」
「話が早いじゃない。」
「どうせ命令なんでしょ?断ることできないんだから。」
「まあ、そうね。」
「河合乙女はどうしたら良い?」
「河合乙女にも伝えておいてもらえる?」
「わかったわ、」
「時間は追って知らせるから。どちらにしても明日は学校休みになるのは先に言っておくわね。」
「了解。」
にしても、お兄ちゃんの資料か。。。
私でもさすがに内容は見たことがない
まあ、それはさておいて河合の方にも連絡しておかないと
私は河合に連絡して明日は学校が休みになることを伝えた。
翌日早朝
私は、家のマンションを出ると家の前には一台の車と河合乙女が待っていた。
「おはようございます。夢弥さま」
河合は私に深く頭を下げて朝の挨拶をする
「おはよう、」
私は挨拶を返して用意された車に河合と一緒に乗り込んだ。
ここから横須賀っていうと早くて2時間。3時間かかってもおかしくはない
車は走り出すと横須賀の方向ではなく。大川家の本家の方角に向かって走っていた。
「あれ?本家に寄るの?」
私は運転をしている黒服に聞いた。
「はい、今回は沙弥さまも姫弥さまも横須賀に赴くようでして。」
四宮裕也の資料という事もあり。それだけ大川家にとっては重要な資料なのだろう
だったら人数をもっと使えばいいのに
車が大川家の本家に着いた。
夢弥と河合は車を降りて大川家の門を開ける。
先頭を河合が歩きその後ろに夢弥そして夢弥を挟むように後ろを黒服が歩く
3人は大川家の中に入る
奥の部屋の戸を開けるとそこには夢弥の姉である姫弥と母親であり大川家頭首である大川沙弥がいた。
「おはようございます。」
夢弥、河合そして黒服は2人に挨拶をした。
「おはよう。夢弥」
「お久しぶりです。お母様」
「最近の裕也はどうかしら?」
「報告の通り特に変わりはありません。」
「そう、、まあいいわ。行きましょうか」
沙弥は答えると早速と言ったように横須賀に向かうため家を出る準備をした
準備を終え大川家の巫女の4人と黒服は車に乗り込み横須賀へと足を向けた。
車が走り出すと沙弥の方から話し始めた。
「一応、ある程度の足は洗ってあるけれど。一宮家の巫女が10名程度で隠密行動をしてるみたい。」
このようにバレてる時点で隠密とは言えないが。
それはあっち側も想定内ではあるだろう。
「時間まではさすがに読めないけれど。早いのに越したことはないから。」
どうやら沙弥のこの口振りからすると今日が襲撃の日である事まではわかっているらしい。
しかし、それを逆手に取って日を改める事もあちら側ではできるはず。
今回の夢弥、河合の仕事は少し長くなりそうな気配を漂わせていた。
車を横須賀に向けて走らせていると沙弥の仕事用の電話が鳴った。
「はい、私よ。」
「おはようございます。沙弥さま」
「おはよう」
「こちらは3名が現地に到着致しました。」
「やっぱり、そのくらいしか集められなかった?」
「そうですね、、、今はどこも手薄でして厳選した3名しか投入する事ができませんでした。」
「仕方ないわよね。とりあえずは了解したわ」
「はい。」
「なにか新着があったら連絡頂戴。」
「かしこまりました。」
沙弥は連絡が終わると電話を切る。
そして後ろの席に座る夢弥、姫弥、河合に視線を向けた。
「結局、今回は貴方達含めて6名までしか集められなかったわ。」
一宮の巫女が何人がかりで襲撃をするのかはわかっていないが。
この様子だとそれなりに数を揃えて来ているようだ。
沙弥達、大川家の車は走り刻々と時間が過ぎていく。
すると、外の景色は海の近い場所にある独特な雰囲気のある国道に入った。
どうやらそろそろ横須賀の倉庫に着くようだ。
大川家にとっては大事な情報の入った倉庫。
夢弥、河合の2人はその裕也の資料の内容を知らない。
沙弥達の車は横須賀の倉庫の付近まで来ていた。
すると、前方には数台の車が止まっていた。
1人の黒いスーツの男が手を上げて合図をしていた。
どうやらここが今回の作戦ポイントのようだ
車を止め沙弥達は降りる。
「待たせたわね。」
「いえ、ご無事に着いて何よりです。沙弥さま」
「一宮家の動きは?」
「今先ほどロストしてしまいました。アンテナは張り巡らせて居るんですが、、」
「以前とは変わりないようね。」
「はい、ですが今日になって急に人数が増えたようです。」
「そう、警戒は常時しておきなさい」
「はい。」
黒服の男がそう返事をして沙弥から離れる。
沙弥が夢弥達の元に来る
「今日はこの6人でここの警備をしてもらうわよ」
沙弥がそういうと3人の見覚えのある銀髪の少女達が後ろの方から現れた。
「中川家の双子2人と川上の次女よ。」
沙弥は連れた3人を姫弥たち3人に紹介した。
「それで、こっちが私の娘2人とそのお付きの河合乙女よ。」
続けて彼女達3人に姫弥達を紹介した。
一応、なんとなくの顔見知りではあるが挨拶をする
「紹介に預かりました。わたしは、川上ユリア中川のお付きとして日々精進しています。」
「わたしとこの子は中川ミツキと双子の妹の」
「ヨツキです。」
中川家の双子とそのお付きが自己紹介をしていた。
「私は大川家の長女 大川姫弥。」
「妹の夢弥です。」
「普段は夢弥さまの側に仕えています。河合乙女といいます。」
続けて姫弥たち3人も自己紹介をした。
夢弥たち3人が自己紹介をすると川上ユリアが口を開いた。
「まさか、こうして大川家の長女と次女と一緒に任務に当たる事ができてこちらとしても光栄です。よろしくお願いしますね。」
大川家の次期頭首候補の第1と第2の2人がいるというのは大川家に関わっている人間たちから見るとこのように、まるで有名人を見るあような扱いを受ける。
ある意味、上下がハッキリしていて当人達はやりやすいのだろう
「では、6人の配置を確認してもらえる?」
沙弥がそういうと黒服がこの横須賀倉庫周辺の地図を持ち出す。
「おそらくではありますが既に一宮家は周辺を囲むように配置についていると予測されます。」
「という事はあちらも私たちがいる事には気づいている?」
「そのはずです。」
今日という事であればこちらの戦力も分かっている。
f普段から倉庫には厳重な警備がついているが。
こういう時に限ってこの6人以外の警備はいない。
いくら大川家と言えども人数の絶対数には限りがある。
「一応、念を押して他の任務についている巫女にも増援の指令は出しております。」
四宮裕也の資料、、、そこまでして一宮家に渡したくない情報なの?
内容を知っているのは沙弥はもちろん姫弥と黒服のほんの数名。
夢弥はこの任務の中での個人的目的があった
沙弥と黒服の男たちが入念に打ち合わせをする。
それが終わると夢弥と河合は同じ場所の警備に配置された。
「乙女はどう思う?」
夢弥は普段、仕事上であれば河合乙女の事を「河合」と呼んでいる。
こうして、「乙女」と下の名前で呼ぶときはプライベート上での話の時だ。
「というと?」
「お兄ちゃんの資料よ。」
「これだけ、厳重な警備をするという事は大川家側に何かしらの事情があるのではないでしょうか?むしろ、夢弥さまは何も聞かされていないのですか?」
「ええ、聞いてもいなければ聞かされてもいないわ。」
夢弥はどうしても沙弥に聞くという事に抵抗があるようだった。
「どっちにしても、大川家の妨げになるものなのであれば私は命令に従うだけです。」
仕事一筋の河合にとってはそれだけが重要なのだろう。
そして時間は過ぎていく。
既に周りを囲まれているという事なのであれば油断は一瞬たりともできない
張り詰めた空気が続く
夕方4時ー
すると、少し離れた場所から突然大きな爆発音が響いた。あまりの衝撃からか夢弥、河合の立っている場所にも地響きが伝わった。
「きた、」
「行きます!」
河合が爆発のあった方向に走り出す。
「待ちなさい!」
夢弥はそれを止めた。
「しかし!」
河合は脚を止めて夢弥の方を振り返る
「その前に先客が居るわよ?」
夢弥はそう言いながら河合の立つ後ろの方を見ていた。
「あら、見つかってしまったわ。」
河合は声の方向を振り返った
振り返った先には、巫女服姿の銀髪の女性が刀を手に持って立っていた。
「くっ」
「一宮カレンね。」
夢弥が巫女の正体を言う
「あら、まさか大川の次女に名前を覚えてもらっているとは光栄ね。」
「にしても、一宮の長女自らこんな辺鄙な倉庫街を襲撃なんてそれだけ価値のある物を手に入れたいみたいね。」
「あなたは知っているんでしょう?大川夢弥」
「生憎様、内容までは知らないわ。」
「あら、それは以外。大川家側にも色々事情があるみたいね。」
夢弥、河合の2人は話している間に戦闘モードに入り。巫女の本来の姿へと変身をする。
夢弥は片手にハルバード型の武器
河合は両手にハンドガン
2人は戦闘態勢に入った。
河合が先手を取り牽制弾を放つ。
パンっパンっ!
「そんな、チャチな弾丸では私は撃ち落せないわよ!」
一宮カレンはそれを軽く交わし河合に襲いかかる
「くっ!」
パキン!
河合はハンドガンでカレンの刀を受け止めようとするがなんなくそれは跳ね除けられてしまう。
「死になさい!河合家の三女!」
カレンの刀は河合に振り下ろされる。
「させない!」
すると、刀が振り下ろされる前に夢弥がハルバートを河合とカレンの間に投げ込む
そして、ハルバードがカレンの刀に直撃し河合は助かった。
「危うく、河合家の三女に当たるところだったわよ?」
刀を飛ばされたカレンは余裕の表情で夢弥に言った。
「まさか?そんな初歩的なミス私がするわけないじゃない?」
夢弥はカレンにそう言い放つともう一つハルバードを手元に実体化させた。
「そんなに何本もそれを出してあなたの魔力は持つのかしら?」
夢弥の髪の毛は既に毛先から3分の1程ピンク色に変色していた。
どうやら先ほどのたった一度の攻撃で3分の1の魔力を消費したようだ。
「夢弥さま、お手を患わせてすみません。」
「気にしないで?あなたを失う方が辛いわ?」
「次は、私が夢弥さまのお力になります。」
河合がそういうと夢弥と同じハルバードを手元に実体化させた。
「なかなか良い部下を持ってるじゃない?大川夢弥。」
「そういう貴女は1人で大丈夫かしら?私たちのタッグはなかなか強いわよ?」
「望むところよ?2人まとめて息の根を止めてあげるわ?」
カレンはそう言いながら両手に日本刀を実体化させる。
3人の死闘が始まった。
その一方で大川姫弥の方でも戦闘が始まっていた。
姫弥は既に巫女化して一宮家の巫女に応戦していた。
姫弥がいま手に持つ武器は中距離用のライフルだ。
「当たらない、、」
先程から姫弥は倉庫街で銃撃戦を展開していた。
そしてその相手は
「まさか、元軍人の両性巫女を出してくるなんて」
一宮家の元軍人の両性巫女。
相手は男性状態のまま姫弥に応戦していた。
銃撃戦で相手が軍人仕込みの両性巫女ともなるといくら女性巫女でも劣勢は覆せないでいた。
「ふっ、大川家の長女はこの程度か?」
一宮の両性巫女は姫弥の撃った弾を全て魔法で軌道を逸らしていた。
「いつまでも隠れてないで出てこい。大川姫弥」
姫弥を煽る声が響いていた。
姫弥は敵の後ろを取った。
パンっ!
「音で位置はわかるんだよ!舐めてんじゃねえ!」
敵は言い放ちながら、姫弥の撃った弾を魔法を使って軌道を逸らした。
そして、反撃の1発を放つ。
「見えた。」
パンっ!
カキンっ!
「うっ!」
敵の撃った弾は姫弥のライフルに命中。
その反動で姫弥はライフルを落とした。
「ここまでだ。大川姫弥」
敵の両性巫女は姫弥に近づき目の前で銃を突きつけて言った。
「姫弥さま!」
すると、大川家の黒服3人が姫弥の救援に駆けつけた
黒服は姫弥の間近にいる両性巫女を体当たりで押しのける
「姫弥さま!お怪我は!?」
姫弥は銃を持っていた右手を抑えていた
「大丈夫、銃を飛ばされて痺れてるだけ」
苦しまぎれな声で答える姫弥。
残り2人の黒服は一宮の両性巫女に無駄弾で牽制していた。
「どうやら、先に死にたいようだな?」
応戦する黒服に言い放つ両性巫女
そして、全身に光を帯びる。
敵の両性巫女は女性化の先、巫女化を果たした。
巫女化した敵はそのまま両手に日本刀を実体化させる。
「死になさい!大川家の哀れな仕い共!」
一宮の両性巫女は勢いそのままに黒服の2人の腹に日本刀を突き刺した。
「ぐはあっ!」
黒服2人の腹は日本刀に突き刺され生き絶えた。
「くっ、許さない。」
それを見た姫弥は立ち上がる。
そして、全身に光を帯び姫弥も巫女化を果たす。
両手には敵と同じ日本刀を持っていた。
「大川姫弥?あなた、接近戦は苦手なんじゃなかったかしら?」
憎らしい微笑みをしながら姫弥を煽る両性巫女
そう言われた姫弥は瞬間移動のような速さで敵の背後に回る。
ザクッ
姫弥は背後から敵の右肩に日本刀を指した。
敵の右肩から大量の血液が溢れる
「な、なに?」
敵は今何が起きたのかを理解できなかった。
「あなたは、ここで消す。」
「そんな、こと!」
背後の姫弥に日本刀を振り下ろす両性巫女。
しかし、それは空振りに終わる
一瞬にして姫弥がその場から消えた。
「そんな!」
深い傷を付けられた両性巫女の髪の毛は見る見ると全体がピンク色に変色していく。
傷によって魔力が吸い上げられていく。
そしてついに敵の両性巫女の髪の毛は全てピンク色に染まり。宿していた巫女化が解け元の男の姿に戻った。
男は倒れこむ。その目の前に姫弥は立った。
「いくら元軍人の両性巫女と言っても両性巫女は所詮、両性巫女なのね。」
「くっ、う、、、舐め、やがって、、」
倒れながら右肩を抑える男。
「まあ、いいわ。死になさい」
姫弥は倒れ込んでいる男の首に日本刀を指した。
ザクッ
姫弥は男の首を串刺しのまま日本刀から手を離す。
男は抵抗もなくそのまま息を引き取った。
「姫弥さま、」
生き残っていた黒服の1人が姫弥に声をかけた。
「はぁ、いつになったらこんな時代が終わるのかしら?小平?」
黒服の名前を呼び姫弥は聞いていた。
「姫弥さま、、、」
黒服の小平はなにも答えられなかった。
その頃夢弥、河合の2人は一宮カレンとの戦闘がまだ続いていた。
「ふっ!」
「はっ!」
まさに鍔迫り合い、巫女と巫女の戦いは互角の戦いを繰り広げていた。
むしろ2人を相手にしているカレンにはまだ余裕が見えているかに思えた
「いい加減に!」
夢弥がカレンの片側の日本刀に気合いの一打をぶつけた。
パキン!
カレンの片側の日本刀が折れる
「くっ、仕方ない。」
カレンの髪は毛先から既に半分以上がピンク色に変色していた。
魔力がそろそろ尽きると悟った。
「そろそろ、あんたの魔力も限界よ?」
夢弥がカレンを挑発する
「言われなくてもわかってるわ。」
そういってカレンは2人から離れる。
「待てっ!まだ」
「追わなくていいわ、乙女。」
「しかし!」
追いかけようとした河合を夢弥が止める。
「あなただって、そろそろ間を置いた方が良いわ」
夢弥の視線は河合の髪の毛に向いていた。
河合の髪は、ほぼ全体がピンク色に変色していた。
魔力がほぼ空の状態になっていた
夢弥はというと、まだ半分の魔力が残っていた。
「河合は一度車のところまで撤退しなさい。」
「夢弥さまはどうされるのですか?」
「私は、一つ気になることがあるの」
「お供します。」
「あなたね、それ以上魔力を消費したら命に関わるわよ?」
「もとより、この命は夢弥さまに捧げております。」
「さっき私が助けた時に言った言葉覚えてないのかしら?」
「それは、、、」
河合は夢弥が先に言った言葉を思い出し口を瞑る。
「今、死なれたら。私がさっき助けた意味がないじゃない。勿論、理由がそれだけじゃないのはわかってくれるわよね?」
「はい、、、」
「なら、戻りなさい。幸い私はまだ魔力が残ってるわ」
「すみません、」
「良いのよ。」
夢弥は河合にそう告げてある場所へと足を向けた。
夢弥は武器をハルバードから拳銃に切り変えて周りを警戒しながら足を運ぶ
「一宮家があそこまでして知りたいことっていうのは一体、、」
やっぱり、、間違いなく四宮裕也の情報
それはわかってる。
でも、私でも知らない情報
それが故に私自身も無視はできない
夢弥は周りを確認して一つの倉庫の前で足を止める。
「ココね、、、」
夢弥はゆっくりと倉庫の扉を開けた。
倉庫に入り足音を立てないように奥へと進む。
倉庫の奥側には部屋のように隔離されている場所があった。
そこから明かりが灯っているのが見える。
夢弥はそっと近づき部屋を覗き見る。
「え?」
夢弥は中を覗くと驚くように呟く。
「誰もいない。。。ここじゃなかったのかしら?」
夢弥は部屋の中に入り、机の上に置いてある紙の束を見る。
「間違ってない、、、この資料がお兄ちゃんの、、、」
夢弥は自分の目を疑うかのように資料に見入った。
「大川沙弥の遺伝子を使った。巫女生産計画。。。」
夢弥は資料を読み上げていた
「計画責任者 大川沙弥。」
「第1号体、生産コードGM-000P 氏名登録 大川姫弥。大川沙弥の遺伝子並びに大川椋の遺伝子を使いプロトタイプとして生産した。最初の実験体。左上腕にマジックストレージマテリアル 通称 MSM を内蔵した。左腕の稼働に難があり。14歳になった時埋め込み位置を移設する手術を行った。」
夢弥は資料を読み上げながら、冷や汗を頬に垂らす。
「第2号体、生産コードGM-001 氏名登録 なし MSM内蔵加工の失敗により破棄。
第3号体、生産コードGM-002 氏名登録 ユーラン エッセンバッフェ MSMを指に内蔵する加工を成功させた実験体。
大川沙弥とイギリス人巫女の遺伝子融合実験も並行して行った。2歳の時に魔力が暴走 死亡した為 破棄。」
「そして同時期に並んで計画した両性巫女生産計画。」
「生産コードBM-004 氏名登録 大川裕也 MSMを右側の肺に内蔵させ大川沙弥の魔力をインストール 肺活量に若干の難があるものの日常には支障をきたさないレベルで安定。」
「BM-004からスイッチ式MSMを導入。必要に応じて使う魔力を制御、解放する事ができる。このスイッチ式MSMは大川姫弥のMSM移設の時にも同じものが使われた。」
「BM-004は巫女生産計画の一番の成功作であり。理想の巫女に1番近しい実験体。大川裕也をベースに今後の巫女生産計画を進める。」
「しかし、裕也ベースの女性巫女を生産するのは極めて困難」
「GM-003、GM-005〜GM-010は実験失敗により破棄。」
「GM-011SS スイッチ式MSMの改良を3回行い内蔵にも成功した実験体。」
「氏名登録 大川夢弥 。MSMに大川沙弥の魔力をインストールするが。裕也程の魔力が貯められない。原因を探ると問題点は男性体と女性体の単純な総合的体力差。」
「しかし、GMシリーズ試作生産巫女は母遺伝子とMSMの総合魔力で一般的女性巫女よりもはるかに多くの魔力を持つ事には成功した。」
カチャ。
夢弥がそこまでを読み上げると音と共に真後ろに人の気配を感じた。
咄嗟に夢弥は拳銃を手放し両手を上に上げる。
「くっ」
歯ぎしりをする夢弥
「どこまで読んでくれたのかしら?夢弥?」
大川沙弥の声が倉庫内に反響する。
「聞いていたんでしょう?」
「確認の為よ。」
夢弥は両手を上げたまま沙弥の方に振り返る。
「とりあえず、私やお兄ちゃんが貴女の産みの子ではない事は理解したわ。」
「私の遺伝子を使ってるのよ?実の親のようなものだわ。」
「結局、私たちを作り出して一体何が目的なの?」
「その前に同意してもらう事があるわ。」
沙弥はそう言って手に持った拳銃を夢弥に突き出す。
「それを聞いた以上。以降は私の指示に従ってもらうわよ?」
「同意しない場合は?」
「言われなきゃわからないの?、、、ここで頭を撃ち抜くわ。」
「なら、大人しく従うわ。」
「懸命ね。」
沙弥は夢弥から銃を下ろした。
俺は唯花の家で夕飯をご馳走になり自宅である四宮家に帰った。
「ただいま。」
俺は家の扉を開けて中に入った。
すると、一葉が俺の元に来た。
「あんた、、、こんな時にどこに行ってたの?」
四葉と話しはしていないのか?
「四葉か五葉に聞いてないのか?」
「聞いたわよ、、、」
「なら、なんでそんな事を聞く?」
少しばかり一葉の様子がおかしいように感じた。
なにかあったか?
「来なさい。」
「お、おい」
一葉は俺の手を引っ張ってリビングの方に向かう。
リビングに入ると四葉、五葉、そして清花さんがテレビを深刻そうな顔で見ていた。
俺もテレビに視線をやると一瞬でことの重大性が伝わった。
横須賀 火災 巫女同士の戦闘か!?
死者3名 重軽傷者23名
「これは、、、」
俺は言葉が見つからなかった。
「片方が大川家なのは既に割れているわ。もう片方が、、、」
「一宮家よ。」
俺は自分の耳を疑った。
四宮の系列である一宮家が、なぜ大川家と戦闘になっているのか。
原因があるとしたら。それは、自分が原因そのものである事が直感で理解した。
そしてその戦闘で死者3名。。。
夢弥は、、夢弥は大丈夫なのか?
今日、学校を休んでいたのは。これなのか?
自分の呼吸が荒くなるのがわかった
「落ち着きなさい。裕也」
清花さんが俺の肩に手を載せて言った。
「今さっき、何人かを偵察に行かせたわ。とりあえず落ち着きなさい」
そんな事を聞かせれても俺は落ち着くことはできなかった。
俺は左胸に痛みを感じ始めた。
「裕也?大丈夫?」
一葉の心配する声が聞こえた。
すると、左胸の痛みは何もなかったかのように治った。
なんなんだ一体
「裕也?」
「兄さん?」
4人が心配している
「だ、大丈夫だ。」
すると五葉が俺の腕を触ってきた。
「鳥肌立ってるよ?本当に大丈夫?」
「ああ、もう大丈夫だ。心配するな」
胸の痛みはもうない。
しかしさっきの現象になぜか鳥肌が立った。
プルルルル♫
スマートフォンの着信音がなっていた。
俺のではない
「どうだった?」
すると清花さんがその電話に出ていた。
おそらく黒服からの報告連絡だろう。
「うん、」
「了解、とりあえず気をつけて戻って来なさい。」
そういって清花さんは通話切って俺の方を見る。
「とりあえず、夢弥も姫弥も生きているわ。安心しなさい裕也」
俺はその言葉を聞いて安堵する。
「そうですか、」
しかし、俺が安堵している片隅で清花さんは焦りを感じているように見える。
「清花さん?なにか心配な事でもあるんですか?」
俺は聞いた
「一宮の両性巫女が死亡者の中に入ってるみたいなの。」
清花さんは俺の質問に迷わず答えた。
「一宮の両性巫女が?」
「ええ、元軍人のね。」
一宮には確か3人ほど両性巫女が居たはずだ。
にしても元とはいえ軍人を駆り出す程の任務だったのか?
「清花さん、今回の一宮家の目的はなんだったんですか?」
「今のあなたにそれについては答えられないわ。そのうち、わかるわよ」
清花さんは俺の質問には答えてはくれなかった。
俺自身の事がこの事件に関係しているような気がしているだけに気になって仕方がない。
翌日
俺は、考え事でよく寝付けずに朝を迎えていた。
「さすがに、眠いな」
しかし学校は休むわけには行かない。
もし、夢弥が今日登校してくるのであれば昨日の一件の話しを聞けるかもしれない
そのチャンスをミスミス逃すわけにはいかないと思っていた。
俺は、重い体を起こして背伸びをしリビングに行って水を飲む
「裕也くん、おはよう」
すると四葉が制服姿で現れた。
「おはよう、四葉」
そういえば、昨日は四葉と重要な何かがあったはずだ。
「四葉、昨日は一葉と話せたのか?」
俺が聞くと四葉の表情が少し明るくなった。
「うん、話した。」
「一葉はなんだって?」
四葉は昨日の一葉との話の内容を話した。
どうやら、一葉はちゃんと四葉の事を元々から理解していたようだった。
俺はわかっていたが、姉妹同士でもこうして意見が食い違ってしまうこともある。
それを埋め合わせて2人が話をできたのであれば俺が四葉をこれ以上心配する必要はないだろう。
四葉の件はひとまず片が付いたかな
俺がいつものように朝の準備をすると五葉も制服姿になってリビングに来た。
「おはよう、兄さん。」
「おはよう。清花さんはどうしたんだ?」
清花さんの姿を朝方から見ていなかった。
俺が聞くと四葉が答える
「お母様は仕事で朝早くに出たわ。一葉お姉様と一緒に。」
一葉はまだ寝ているだけだと思っていたが、
四葉が言うには一葉は清花さんと出かけているようだ
四宮家の頭首と長女が出るという事は昨日の一件に関係しているのだろう
死亡者まで出た昨日の一件
四宮家自身に被害があるわけではないが系列である一宮家に被害が出ている。
それも軽微な被害ではなく
1人の巫女という大きな損失だ。
昨日確認した事だが
大川家側の死亡者に巫女は居なく黒服が2人死亡したと聞いた。
こっち側に関しては死亡者が出ているとはいえ軽い被害のはずだ
大川沙弥が黒服を2名程失ったところでなにか思うことはないだろう。
大川家の規模を考えたら痛くも痒くも無いだろう
「兄さん大丈夫?」
考え事をしていた俺に五葉が聞いて来た。
「何がだ?」
「昨日も様子がおかしかったし。学校休んだ方がいいんじゃない?」
昨日の胸辺りの痛みを思い出す。
胸に手を当てるが今は特になんの異常もない。
「大丈夫だよ、五葉。学校には行くさ」
それに今日は休むわけには行かない。
俺たち3人は学園行く準備を済ませて一緒に登校した。
俺と五葉が教室に入る。
俺は教室に入ると同時に夢弥の席を見る。
まだ来てないか、、、
「夢弥ちゃんの事気になる?」
俺の様子を見ていた五葉が言う。
「わかるか?」
「うん、、、わかるよ。私も心配だもん。」
どうやら五葉も俺と同じく夢弥の事を気にしているようだった。
「そうか、、、」
俺は五葉の頭に手を乗せる。
「大丈夫さ。あいつなら次くる日も何もなかったかのような顔して元気に学校に来るだろう。」
「うん、そうだといいね。」
さすがに苦しいか。
俺れ自身も何を言ってるのかと苦笑してしまう苦しいセリフだ
朝礼の時間になり結局、夢弥は投稿してこなかった。
担任の教師が教室に入ってくる
「えー、皆さんまず席に着いてください」
担任の教師は咳払いを一つして教室を静ませる
「大川夢弥さんですが、家の事情でしばらく投稿できなくなりました」
担任の教師の口から出た言葉を俺は疑った
昨日の横須賀での事件が関係していることは明白だったニュースにもなっていたからな
クラスメイトも何人かが昨日のニュースの話題で話していた。
少し教室が騒つく
「皆さん静かにしてください」
教師の言葉にクラスメイトが静まる
「昨日のニュースを見た人も居ると思いますが大川さんはそれに関しては関係ありません。」
ん?
「あくまで、家の事情でと言うことを覚えておいて下さい」
なんだ、この胸騒ぎは
嫌な予感が俺の頭をよぎる
俺は席を立つ
「四宮くん?どうしましたか?」
俺はカバンを持って何も言わずに教室を出る
「ちょっと、四宮くん!」
教室の外で靴を履き変える
「待て四宮くん!どうしたんだ!」
俺を止める担任教師
「昨日のニュースの件で夢弥が関係ないって言いましたよね?」
「ああ、そうだが」
「なぜ嘘をつくんですか?」
「君の事情は知っているが、一教師である私にはこう言うしかないんだ。四宮くんまずは落ち着いてくれ」
「俺は落ち着いてますよ、だから今日は帰ります」
「明らかに、冷静ではないだろう!良いから教室に戻るんだ」
俺は教師に掴まれた腕を引き剥がし走ってその場を去る
「兄さん!」
五葉の声が聞こえるが立ち止まってはいられない俺はそのまま走った。
「すみません、先生!私も今日は帰ります!」
五葉はカバンを持ち靴を履き替えて裕也を追った
裕也が信号で止まっていると後から五葉が追いついた。
「はっーはー、ちょっと兄さん」
「嫌な予感がするんだ」
「え?」
青信号に変わり裕也は走り出す
「ちょっと!待って兄さん!」
五葉も後を追いかけるがさすがに疲れたのか
飛行魔法を使う
そして、裕也を抑える
「待って兄さん!」
「五葉、放せ」
「落ち着いて!」
裕也は一旦深呼吸をして頭を冷やす
「さて、五葉言いたいことがあるなら言え」
「まずはさ、家に帰るなら飛行魔法で帰ろう?そっちの方が早いよ」
「だが、それだと魔力が」
「私が兄さんを担いで行くから魔力の心配はしないで」
「五葉の魔力が減るだろ?」
「私は回復がすぐできるから大丈夫だよ。だからね?」
俺はいち早く四宮家に戻って状況を確認したかった
今回は五葉の厚意に甘えるか
「わかった、五葉がそれでいいならそうしてくれ」
「うん」
そして、俺は五葉の背中に回り両肩を掴む
「これで、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。じゃあ飛ぶよ?」
五葉は飛行の魔法を発動させ俺も同時に空を飛ぶ
そして、ひとっ走りで四宮家に着いた。
まずは、家の中に入る
どうやら、清花さんも一葉もまだ戻っては居ないようだ
こうなったらもう清花さんに電話でどこに居るのかを確認するしかない
俺は自分のスマートフォンを取り出して清花さんに電話をかける
プルルルル
「はい、清花よ」
ワンコールで電話に出る清花さん
「清花さん!」
「あれ?裕也だった?学校はどうしたのよ?」
どうやら、仕事の状況確認に電話を使っているようだ
おそらくそれで電話の相手を見ていなかったのだろう
「清花さん、今どこにいますか?」
「その前に私の質問に答えなさいよ、学校はどうしたの?」
「夢弥のことが気になって早退しました」
「はぁ〜」
ため息をつく清花さん
「あなたね、それじゃ学校に行かせてる意味がないじゃない勝手に戻ったりして」
「朝礼のとき、、、」
俺は担任教師が朝礼で言ったことを清花さんに伝えた
「ニュースの件と夢弥が関係ない?」
「はい」
「ちょっと、引っかかるわね」
「だから、俺もそちらの仕事に入れてください!」
「ちょっと待ちなさい、今そこに四葉か五葉はいる?」
「五葉がいます」
「変わってちょうだい」
清花さんにそう言われたので俺は隣にいる五葉にスマートフォンを渡した
五葉が受け取りスマホを耳に当てる
「はい、変わりました」
「はい」
「はい、本当にすみません」
「はい、そうです」
「わかりました」
「はい」
すると五葉が俺にスマホを渡す
「お母様が変わってって」
俺はスマホを受け取る
「変わりました」
「とりあえず、私は今相模原の三宮研究施設にいるわ。そこに来なさい」
「わかりました」
「あと、四葉も連れてきて」
「了解です」
俺は電話を切り車の鍵を出す
「五葉、まずは四葉を迎えに行くぞ」
「また、学園に戻るってこと?」
「そうなるな」
そう言って俺は車のエンジンをかけ五葉ともう一度学園に戻ることにした