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両性巫女の高校生活  作者: 小林歌子
7/8

第7話「唯花」

こんにちは!「両性巫女の高校生活」作者の小林歌子です!

1週間以上開けてようやく7話が完成しました!

なかなか、思いつかなくて時間がかかってしまいました、、、、

待っていた方々にはとても申し訳ない気持ちでいっぱいです、、、

第7話「唯花」


俺は、昼休みに四葉と昨日の話しの続きをして四葉は一葉と改めて話す事を決めた。

これでまた四葉は一つ強くなれるはずだ。

俺は生徒会室を出て。自分の教室へ戻るところだった。

「あれ?四宮?妹ちゃんと一緒じゃないのか?」

廊下を歩いているとクラスメイトの男子が俺に話しかけてきた。

昨日俺にゲームを貸してくれたクラスメイトだ。

「どうよ?昨日のゲーム?」

「悪いな、昨日は時間がなくてプレイができなかった。」

「それは仕方ねえよな。しばらくの間は持っていて良いからゆっくり堪能してくれや!」

クラスメイトは俺の肩を叩きながら言った。

「おう、実際かなり楽しみにしてるから早くプレイしたいんだがな。」

「そりゃ良かったよ!感謝聞かせろよな?」

「勿論だ。」

俺とクラスメイトは「またな。」と交わしてその場で別れた。

俺は教室に向かった。

教室に着くとまだ五葉と唯花は戻っていなかった。

五葉は昨日のことを唯花に話しただろうか?

そういえば、今日は朝から夢弥と河合さんの姿を見ていなかった。

おそらくは大川家の仕事で来ていないのだろう。

「おや?これはこれは!四宮裕也くんではないですか!」

俺が教室に入ると昨日会った女子生徒が話しかけてきた。

たしか、(ひいらぎ) とか言う苗字だった気がする。

昨日の今日で再会したな。

「昨日ぶりだな、柊さん。」

「おっと!これは私の名前覚えて頂けたんですね?」

「名刺まで渡してきてただろう。」

俺は昨日、柊さんから受け取った名刺を財布から出して柊さんに見せながら言った。

「いえ、そうなんですけど。四宮くんは名前を覚えるのが苦手だとお聞きしていたので!」

「なんで柊さんがそんな事を知っているんだ?」

俺が名前を覚えるのが苦手な事なんてごく一部の人間しか知らないはずだ。

「それは、コネクションというものですね!」

怖いコネもあったもんだな。

「にしても、柊さんはなんで俺のクラスに居るんだ?」

柊さんはクラスメイトではないはずだと思ったので俺はそう聞いた。

「それは私は常に新聞のネタを探しているからなのですよ!」

「なんで俺のクラスにネタを探しに来たんだ?」

「それはたまたま、各教室を廻っていたからなのですよ!」

本当にたまたまなのか口癖から胡散臭い女の子だな。

「なにか四宮くんはこのクラスで気になることとかはありませんか?」

俺からネタを掘り出そうと質問をしてくる柊さん。

「悪いな、ニュースになりそうな事はなさそうだ。」

「そうですか、、それは残念です」

一気にテンションが下がった柊さん。そういえば俺も柊さんに聞きたい事があったんだった。

「俺も柊さんに質問をしても良いか?」

「はい!私に答えられる事であれば!なんでも答えますよ!」

いきなりテンションが戻る柊さん、

気分の上下が激しすぎるな。。。

「昨日雨の中でそのカメラを使っていただろう?」

俺は柊さんが首から下げている、いかにも金額が高そうなカメラを指差して言った。

「そのカメラって雨に濡れても大丈夫なのか?

「ああ!このカメラの事ですか!」

柊さんは首に下げたカメラを見てテンションの高い声で言った。

「このカメラは雨に濡れても大丈夫なんですけど、今つけているレンズは雨に濡れてはいけないんです。昨日付けていたのは防水レンズなので濡れても平気だったんですよ!」

「防水レンズなんて言うのがあるのか?」

「はい!今のカメラの技術は凄いですからね!四宮くんはカメラに興味があるのですか?」

「ああ、少し興味があるんだ」

「ちなみにどんな物を撮りたいのかお聞きしても?」

「車だよ。」

「四宮くんは車が好きなのですか?」

「ああ、知らなかったのか?」

「それは新情報ですね!メモメモ、、、」

名前覚えるのが苦手な事は知ってるのになんで趣味は知らないんだ。。謎の女だな。

にしても年齢まではバレていないだろうか?そこが少し心配だな、、、

「今日は四宮くんの新情報を手に入れたので気分が良いですね!」

「それは良かったよ。」

「それではまた!何か進展がありましたらE組まで来てください!」

柊さんはそう言って教室を出て行ってしまった。

E組なのか。今度、様子でも見に行ってみようかな。

「あれ?兄さん戻ってたんだ?」

すると五葉が唯花と一緒に教室に戻ってきた。

「ああ、唯花には話したか?五葉?」

「うん、話したよ。」

「うん、巫女の家も大変だねぇ。」

唯花は他人事のように言っていた。まあ実際他人事なのでこういう言い方しかできなさそうだが、、、

「そうだ、唯花。」

「なに?」

「今日早速、唯花の家にお邪魔しても良いか?」

「え?どういう事?兄さん?」

「昨日、唯花に傘を貸したんだ。それで唯花の親御さんが俺にお礼をしたいらしくてな。家にお呼ばれしたんだ。」

「なるほどね。」

「五葉ちゃんも来る?」

唯花は五葉の事も誘っていた。が、、

「ダメだ、五葉は今日は先に家に帰ってくれ」

俺は四葉が心配だ。

「今日、四葉が一葉に話をする事になったから、五葉は四葉のそばに居てやってくれないか?」

俺は五葉にお願いした。

「うん、わかった。そういう事なら私は先に帰るよ」

そういえば唯花に今日は大丈夫なのかを確認していなかったな

「唯花、今日は大丈夫そうか?」

「あ、うん。一応お母さんにメール入れて確認してみるね」

「すまないな。」

「私が誘ったんだし裕也くんは何も悪くないよ。」

唯花はスマートフォンでメールを打ちながら答えていた。

「よし、送信っと。多分すぐに返事来ると思うから。」

「わかった。」

そうして昼休みの時間も終わる間近になり俺たちはそれぞれ自分の席に着いた。

「はいはい、みんな席に着いて!」

数学の授業なので平沢先生もとい宥先生が教室に入ってきた。

今は眼鏡をかけている、どうやら授業の時だけは眼鏡をかけるようだ。

宥先生の授業は進んでいった。俺は、黒板を見てはノートに写すを繰り返していた。

「はい、四宮くんここの問題は解ける?」

俺が当てられた。

うむ、どうしたものか、、、ここは素直に言った方がいいな。

「すみません、全くわかりません」

その瞬間クラスメイトの数名から笑いが溢れた。お前らのツボは浅すぎる

そもそも、今のやり取りのどこが面白かったんだ?

実は、俺は数学が大の苦手だ。全くもって何を言っているのか授業中もさっぱりだった。

「そんなに難しくないわよ?」

「とは言われても、、わかりませんね。。」

「うーん、仕方ないから後ろの鈴木さん?答えられる?」

宥先生は俺の後ろの席の唯花を指名した。

「あ、はい。」

唯花は席を立って黒板に答えをスラスラと書いていった。唯花って勉強もできるんだな。

俺にはこの数字の羅列が何かの暗号としか思えないのだが。

「はい、正解。四宮くん?今のうちに叩き込んでおかないと期末試験で赤点になるわよ?」

「はい、なんとかします。」

とは言ってもわからないものはわからないな。。

唯花は自分の席に着いて俺にこう放った。

「裕也くんって以外と勉強苦手なタイプ?」

「以外も何も勉強自体が苦手だ。」

「えぇ?すごい博学人みたいな振る舞いしてるのに?」

俺がいつそんな振る舞いをしたというのか

「と、言われてもな苦手なものは苦手だ。」

「なんで勉強苦手なのに高校入ったのよ。。。」

「高校生までは大体の人間が言ってるだろ?」

「それはそうだけど。」

唯花はそう答えると少し上斜めに視線をやってからもう一度俺の方を見た。

「私が勉強教えてあげようか?」

「良いのか?」

「あんな問題も解けないんじゃ本当に裕也くん赤点取りそうなんだもん」

中々、心に刺さるセリフを平気で言ってくる唯花。

「まあ、教えてくれるなら非常に助かるから。お願いしても良いか?」

「良いよ?私教えるのは好きだから。」

「恩にきる」

その後も俺は全く理解のできない数字の羅列をノートに書き写すことだけに専念して数学の授業は終わった。


今日最後の6時間目の授業も終わり。今日の学園は放課後となった。

「五葉、四葉のとこに行ってやれ。」

「うん、ありがとね。兄さん」

いきなり、脈絡もなく五葉は俺に礼を言っていた。

「急にどうしたんだ?」

「お姉ちゃんのこと、私じゃお姉ちゃんを一葉お姉様と話をさせるお膳立てなんてできないから。」

できるかできないかは決めつけることでは無いと思うが、まあいいか。

「気にする事じゃない、俺たちは家族なんだ。そんなのは当たり前だ。」

「ううん、それでも言わせてよ。」

五葉は首を振って微笑みながらそう言った。

「そう思ってくれてるなら五葉も何か悩みがあったら俺に言えよ?アドバイスぐらいならできるはずだ。」

「ありがと、そうするね」

五葉はそう言って教室を出て四葉のところに向かった。

「裕也くんは本当に優しいね。」

唯花は五葉が教室から立ち去ると俺にそう言ってきた。

「前は、冷たいんだね。とか言ってなかったか?」

「それは優しさの中にあった冷たさじゃない?優しいと冷たさって私は真逆だとは思わないかな?」

「その通りだ。わかっているじゃないか」

「さ、一緒に帰ろうよ。裕也くん」

「そういえば今日は自転車か?」

「うん、そうだけど裕也くんが来るっていうなら私も電車で帰るよ。」

「大丈夫なのか?」

「明日の朝は電車で来れば大丈夫だよ。早く行こ?」

唯花はどうやら早く家に俺を連れて行きたいようだ。

楽しみにしているのだろう。「なにを」と言われるとわからないが

俺たちは並んで学園の最寄り駅まで歩くことにした。

「そういえば、昨日俺たちの写真を撮っていた女子生徒に会ったぞ?」

俺は思い出したように唯花に言った。

「ああ、柊さんのこと?」

「知っていたのか?」

「有名だよ?柊さん」

「そうなのか?」

「だって、可愛いじゃない?」

そこに何の関係があるかがさっぱりだった

「可愛い事で有名なのか?」

「さっきのは半分冗談だけど。柊さんのお父さんは有名なテレビ局の編集長だよ?たまにだけどテレビにも顔出してるくらいの」

「ほう、柊、、柊、、、、思い出せないな。」

俺は頭の中でテレビを思い浮かべたが顔が出てこなかった。

確かに、珍しい名前なのでなんとなくテレビでも聞き覚えがあるような気がした。

「裕也くんってテレビ結構見る方?」

「いや?最近はほとんど見ていないな。昔は暇だった時が多かったからよく見ていたが。」

とは言うものの今が忙しいのかというとそうでもないような気がするが。

「世間の流れは知っておいた方が良いよ?裕也くん」

「そういう唯花はよく見るのか?」

「お母さんがずっとテレビ付けてるからね。ドラマもニュースもよく見てるよ。」

「そういえば、母親の事しか話に出していないけど父親はどうしてるんだ?」

「お父さんは今、仙台に単身赴任してるの。」

「兄弟姉妹はいないのか?」

「いないよ。私は一人っ子」

「という事は今は二人暮らしか」

「そういうこと。だから、裕也くんが来てくれたらお母さんもすごく喜ぶよ!」

「それは良かったよ。邪魔にはならなそうで安心した」

実際、あまり家に友人を連れ込むなという親もいるのでそこに若干の不安を感じていた。が、唯花の話を聞いて安心した

「裕也くんは、監禁される前はどんな生活だったの?」

唯花は俺にそう聞いてきた。そういえば、監禁される前の話に関してはしてなかったな。

「普通に学校には行っていた。が、ほぼ両親も姉も不在でな。夢弥と二人暮らしみたいな感じだったな。」

「えぇ?その頃ってまだ小学生とかだよね?」

「ああ、親はたまに帰ってきては食料だけ足されて。あとは勝手にやってくれって感じの状態だったな。」

「うわぁ、、私だったら耐えられないわ」

「おかげで夢弥と俺は料理だけは一人前にできるようになったがな」

「夢弥ちゃんって今は一人暮らしなんだよね?」

「そうだな。夢弥の事だしそういう面での心配は要らないだろうな」

「そういえば今日、夢弥ちゃんと河合さん休みだったね?」

「おそらくだが大川家の仕事でも入ったんだろう。2人揃って休みっていう事はな」

「巫女の家ってそんな売れっ子芸能人みたいに仕事入ってくるの?」

「それは、大川家が特別なんだ。巫女の中ではかなりの規模の家だからな大川家は」

「四宮家はどうなのよ?」

「四宮はようやく台に乗ったぐらいだ。大川家にはまだまだ及ばないだろう。まあ、日に日に仕事は増えてるみたいだがな。ついに三宮家よりも規模も大きくなったからな」

「三宮って四宮家と関係あるの?」

「ああ、関係あるぞ?あとは一宮と二宮っていう家が系列なんだ。四宮はその中でも最下級だったんだがな」

「えっと?もしかして大川家系列には中川とか小川ってあったりするの?」

「鋭いな唯花。その通りだ中川も小川も大川家の直属だ。」

「それじゃ、河合さんはなんで大川家に居るの?」

「河合っていう苗字だとおそらくは大川家の親戚からの出なんだろうな。河合以外にも川の付く名前で巫女だったら大体が大川家の下部の巫女だ。」

「大川家って大きいんだね、、、」

「大きいぞ、なにせ日本で1本2本の指に入る巫女家だからな。」

「そういえば五葉ちゃんから聞いたんだけど。代々長女が後継ぎにされるのはどこでも一緒なの?」

「おそらく、大体のところが代々長女だとは思うが俺の産みの親である大川沙弥は違うんだ。奴は3女だったからな。」

「どんな理由でそうなったの?」

「そこまでは調べが付かなかったな。」

「聞かされてはいないんだ?」

「ああ、実の親とは言え大川沙弥と話したことなんてほとんどないからな」

「なんかゴメン嫌なこと聞いちゃったかな?」

「気にするなよ、もう過ぎた事だし。今はこうして唯花や五葉たちと一緒に居られるんだ。」

唯花と話しながら駅まで歩いていた。すると何気なく通りすがりになんとなく見覚えのある女性が俺たちの前から歩いてきた。

するとその女性は俺の目の前で歩いていた足を止めた。

「もしかして、、、裕也?」

俺は声を聞いてその女性の名前を思い出した。

「百合、、、なのか?」

保育園時代から中学卒業まで一緒にいた。幼馴染である 桜衣 百合 (さくらい ゆり) だ。中学卒業の頃とはまるで別人のように雰囲気が変わっていて最初は気づきにくかった。

中学の頃はもっと子供っぽかったが、今の百合は髪も巻いていて服装もスーツで決まっており大人の女性というようになっていて。中学までの印象とは全く違っていた。

「うん、百合だよ。久しぶり裕也」

「5年ぶりだな。」

「もう、そんなに経つんだね。裕也があまり変わってないからそんな感じしないな。」

「そういう百合はかなり印象が変わったな。大分大人の女性っぽくなってて、さまになってるぞ?」

「ありがとう。本当に裕也は変わらないね。」

百合はそういうと隣にいる唯花に目を向けていた。

「ああ、すまんな。唯花、保育園から中学までの腐れ縁だった桜衣百合だ。」

俺は唯花に百合を紹介した。

「あ、うん。」

唯花はキョトンとしてそれだけ言った。まあ、いいか

「それで百合、こっちは鈴木唯花。クラスメイトだ。」

俺は百合にも唯花を紹介する。

「裕也って今、小川学園に通ってるの?」

「ああ、そうだ。」

「なんで?家から出られる許可でも貰ったの?」

百合は俺が中学卒業後、大川沙弥に監禁されている事を知っていた。

4年前、同じ高校に入学が決まっていたのに俺は高校の入学式には行かなかった。

なので心配して大川の家に何度か来ていたらしい。

「今は、四宮家の養子になった。」

俺は今の状況を百合に話した。

百合は俺の話を聞くと安心したようで最初に顔を合わせた時よりも柔らかい表情になっていた。

「それならなんで連絡くれなかったの?」

「すまんな、中学まで使っていた携帯も解約されてどうにもできなかったんだ。」

「ふーん、」

百合はもう一度唯花に目を向ける。

「そっちの子は今の彼女?」

百合は聞いてきた。

「クラスメイトだ。さっきもそう紹介しただろ?」

「菊月さんはどうしたの?」

百合は中学時代の時の俺の彼女である。菊月 七瀬 (きくづき ななせ) のことを聞いてきた。

「監禁されてからは連絡を取ってない。」

連絡が取れるなら今でも取りたいが。百合はあまり七瀬と関わっては居なかったからな。連絡先は知らないだろう。

「菊月さん、心配してたんだよ?」

「なんで、心配してたかわかるんだ?」

百合はあまり七瀬と話はしていなかったはずだ。

「同じ高校だったから。裕也が来ないことを幼馴染の私に聞いてきてたの。」

なるほどな。

「そうだったのか、、、」

いま、会おうとしてもどうする事も出来ないから

俺はそう答える事しか出来なかった。

「いま、四宮の家にいるって事は三葉ちゃんはどうしてるか知ってるの?」

「ああ、三葉は今、葉月さんと四国で仕事をしているぞ?詳しいことまでは知らないがな。」

「四国ってまた遠いわね。」

「今は四宮家も全国に又を掛けてるからな。つい先日、一葉もドイツから帰ってきたばかりだ。」

「さすが一葉さんだね。海外まで行ってるなんて」

「一葉の方は仕事というよりも勉強の要素の方が大きいらしいけどな」

「海外進出の前準備なんだ?」

「そうだろうな。」

百合は保育園の頃から一緒にいたので大川家の事情はもちろん四宮家の事も大体の事は把握していた。

百合自身は巫女ではなく普通の人間だが。

「そういえば、四葉ちゃんと五葉ちゃんは元気?」

「ああ、元気だよ。四葉は一つ上の学年だが五葉は同じクラスなんだ。」

「五葉ちゃんも四葉ちゃんも小川学園に進学してたんだ。」

「四宮家は皆あの学園だからな。」

おっと、唯花の家にお邪魔させてもらうことを忘れていた。長話しもなんだろうし。この辺で会話を中断しておくか

俺は百合の連絡先だけ聞いて自分の新しい携帯の連絡先を教えた。

「うん、じゃあ何かあったら連絡してね」

「ああ、そうさせて貰う」

「うん、唯花ちゃんもなんか足止めしちゃってゴメンね?」

百合は唯花に謝って言っていた。

「いえいえ、全然大丈夫です!機会があればまたお会いしましょう!百合さん!」

唯花はそれに対して元気よく返事をしていた。

百合と唯花は普通に馬の合いそうな2人な気がするな。

そうして俺は百合との再会に別れを告げ唯花と駅の方まで歩いていった。

「百合さんって綺麗な人だね。」

唯花は百合と別れた途端に俺にそんな事を言ってくる。

大分、百合は大人びたのですっかり昔の可愛らしい百合ではなくなっていたな。

「昔はあんな美人系の女の子じゃなかったんだがな。」

「そうなの?」

「ああ、どちらかと言うと可愛い女の子だったな。」

「へぇ〜」

唯花は何か含んだような返事をしながら俺の腕に抱きついてきた。

胸が当たっているのがわかならいのか?この女は

「いきなりなんだ?唯花」

「だってさっき私、蚊帳の外にされてて寂しかったんだもん」

「それは悪かった。いかんせん久しぶりに会ったからな」

「にしても裕也くんの周りには女の子が多いね?」

「たしかにそうだな。巫女の家の人間だから自然とそうなるのは仕方がない」

たとえ、望んで巫女の家に生まれたわけではなくてもだ。

巫女の家ではほとんどの確率で女しか生まれてこない男が生まれてくるのは本当に稀なのだ。

「私が言ってる意味ちゃんと理解してないでしょ?」

俺がそう思っていると唯花はそう言ってきた。

一体どういう意味だったんだろうか?

「そういうなら。教えてくれ」

「いーや、」

「なんでだ?」

「自分で気づかなきゃ意味ないでしょ?」

わからないな。

俺たちは歩いて駅まで着いた。

「あれ?四宮に鈴木さんじゃないか」

駅のホームに着くとクラスメイトの男子が俺たちに話しかけてきた。

「おう、お前もこの駅だったのか」

小川学園の最寄り駅は3つありその中でも俺や五葉が降りるこの駅は小川学園の中でもあまり人気のない駅なのでこうして知り合いに会うのは珍しかった。

「ああ、にしても」

クラスメイトは唯花を見て言った。

「2人は付き合ってるのか?」

なぜ思春期の連中は異性と2人きりだとこういう勘違いをするのだろうか

「違う、今日は唯花の家にお呼ばれしたんだ。だからこうして一緒に帰ってるだけだ。」

ん?待て。このセリフは勘違いを加速させるんじゃないか?

「なん、、、だと?」

クラスメイトの男子は俺の言葉を聞いて驚愕の表情でそう言った。

唯花の方を見ると顔を赤くして黙っていた。

「おい、今のはちょっとばかし誤解している。俺は唯花に呼ばれたのは確かだがさらに言うと唯花の母親に呼ばれたんだ。」

この言い方であれば誤解は解けるだろう

「親公認だと。。。?」

そうきたか。。この返しがないわけではないと思っていたが、、

「それに、、」

クラスメイトの男子はまだ話しを続けていた。

「鈴木さんのお母さんなんて絶対美人に決まっているんだ!そんな人にお呼ばれするなんて!。。。」

これはどうしたものか。。。

俺はふと唯花の方を見た。

「裕也くんと、、あはは」

唯花は不気味な笑みをこぼしながら上の空になっていた。

どうやら唯花に助けは求められないらしい。五葉が居ればな。。。。

「まあ、それはさておき」

クラスメイトの男子はさっきまでの話をそらし始めた。

自分で始めて自分で終わらせるとはな。俺はありがいが

「妹さんと一緒じゃないなんて珍しくないか?」

クラスメイトは五葉を話題にふってきた。

「ああ、ちょっとな。姉妹での間のやりとりがあるから姉さんのところに行かせたんだ。」

「四宮は一緒じゃなくて良いのか?」

「あくまでも姉妹間でのやりとりだ。俺は口出しなんてしないさ」

そんなことを言っても散々間に入った俺がこういう言い方をするなんてな。

「そういえば今日の昼休みは妹さんと一緒じゃなかったみたいだけど。どうしてたんだ?」

「姉さんと一緒に昼にしていた。姉妹間での話で多少の助言をしていたんだ」

「まるで2人の兄貴みたいだな四宮は」

年齢順で言うなら俺は実際あの2人の兄にあたる。がそれを今クラスメイトに言ったところで理解はされないだろう。

他人をある意味信頼できない。俺も四葉にそう言ったが、言う資格はないのかもしれないな。

俺たち3人は電車に乗り一駅で俺と唯花は電車を降り、そこでクラスメイトとは別れた。

駅の改札を降りて唯花の家の方角へ歩いた。

「そういえば駅からは近いって言ってたな。」

「うん、」

俺は唯花の歩く方向に歩いて10分ほどは経過していた。

「唯花?あまり近いとは言えなくないか?」

「え?そうかな?」

「やっぱり傘を貸しておいて正解だったな。」

これだけ歩いて雨の中で帰っていたら。さぞ全身がびしょ濡れになるだろうに

住宅街に入り鈴木の表札のある家の前に着いた。ここが唯花の家なのだろう。

唯花は自宅の鍵を出して扉を開けた。

「どうぞ、裕也くん」

「ああ、お邪魔します」

俺は唯花の家に入る。極一般的な一軒家だ。

「お母さん、ただいま〜!裕也くん連れてきたよ〜。」

唯花がそう家の奥に向かって言うと奥から唯花の母親らしき人が出てきた。

「お帰りなさい唯花」

唯花にとても似ている女性だ。母親というよりは姉なんじゃないかと思ってしまう。

「はじめまして、四宮裕也です。この度はお招きいただいてありがとうございます。」

失礼のないように俺は唯花の母親に挨拶をする。

「あら、そんなにかしこまらなくて良いのよ?いつも唯花から色々話しは聞いてるわ裕也くん」

「いえいえ、ファーストコンタクトっていうのはなんでも大事なんですよ唯花のお母さん。」

「あら、そういえば私の方は自己紹介してなかったわね。唯花の母親の愛佳です。よろしくね裕也くん。」

「こちらこそ、えっと、、、愛佳さんとお呼びした方が良いですか?」

「そうね、唯花のお母さんなんて呼ばれ方長いし愛佳さんで良いわよ」

「では、愛佳さんで。にしても、唯花によく似てお綺麗ですね愛佳さん」

俺は素直にそう思ったので愛佳さんにそう言った。

「あら、ありがとう裕也くん。裕也くんも可愛い顔をしてるわね」

愛佳さんはそう答えると俺に顔を近づけてきた。

目付きが悪いと評判の俺を可愛いという人は珍しいな。

「あまり言われたことはありませんが。ありがとうございます」

そうして唯花の母親と挨拶を交わした俺は唯花の家にお邪魔させてもらった。

「裕也くん、この間は唯花に傘貸してくれてありがとね。」

俺がリビングにお邪魔すると愛佳さんはこの前のお礼を俺に言っていた。

「いえいえ、俺の方は駅から家も近いですし。当然の事ですよ。」

「最近の子はあまりそういう気づかいできないじゃない?だから、ありがとう。」

俺からしたら当然のことなのであまり実感は湧かなかった。

「あ、お母さん私ちょっと着替えてくるね。」

唯花はそう言って自分の部屋に着替えに行った。

「ちなみに、裕也くん?」

唯花がこの場から居なくなると愛佳さんは俺に話しかけてきた。

「唯花のことはどう思ってるの?」

「唯花のことですか?」

俺はつい質問に質問で返してしまった

どう思ってると言われてもな。

「えっと、、友達ですかね?」

以前、唯花が言っていたセリフを思い出して俺は愛佳さんにそう答えた。

唯花は初めて会った時に俺に友達になりたいと言って俺の過去の話を聞いた。

それを思い出したのだ。そこからの流れで言えば唯花は俺の友達なのだろう

周りからは彼女なのか?付き合って居るのか?と聞かれることも多いが。今のところは友達までの関係のはずだ。

「唯花を女の子としてはどう思ってる?」

愛佳さんは似た質問をもう一度俺に投げかけた。

「異性としてって言うことですか?」

「そう。」

「うーん、可愛いと思いますよ?誰にでも気軽に接しているしクラスの男子からの人気もありますしね。」

「裕也くん個人の意見を聞いてるんだけどなぁ」

なんだろう、なんとなく唯花に似ているな。母親だから当然なんだが

「個人的な意見でも、唯花は可愛い女の子です。若干あざとい部分はありますがそれは別に欠点だとも思っていませんし。」

「唯花ってあざといの?」

「あざといですね。よく俺の腕に抱きついてくるし。そういう行動はあまり軽率にする事じゃないとおもいますし。男を勘違いさせる行為ですよ」

「裕也くんは勘違いしてるの?」

「いいえ?からかってやってるってことは理解しているので大丈夫ですよ」

愛佳さんと話していると唯花は着替えが終わったらしくリビングに降りて来た。

「おまたせ、裕也くん」

こうして私服の唯花を見るのは初めてだった。

「そういえば、制服以外の唯花を見るのは初めてだな。」

「本当だ、初めてだね。」

「なかなか、似合ってるじゃないか」

「ありがとう、裕也くん」

少し沈黙が続いた。何を話題に振ればいいんだ?

すると愛佳さんが口を開いた。

「唯花、裕也くんはなかなか手強いわよ?」

一体何が手強いと言うんだ?さっぱりだな。

「裕也くんに何か言ってないでしょうね?お母さん」

「言ってないわよ?ねえ裕也くん?」

俺に振られてもな、、、さっきした話っていうと、、

「ああ、唯花の事をどう思ってるかとか聞かれたな。」

「えぇ!?」

唯花と愛佳さんは口を揃えて驚いた声を出した。

「言っちゃダメじゃない裕也くん」

愛佳さんがそういう。が、俺にはよくわかっていない

「えっと、それになんて答えたの?裕也くん」

唯花が俺にそう聞いてきた。

「いつも、唯花に言ってる通りの事だ。」

唯花はそれを聞いて胸を撫で下ろした。どうやら安心したようだった。

「裕也くんって七瀬さんと付き合う時ってどっちから告白したの?」

唯花からなかなか小恥ずかしい質問が飛んできた。

んー、どっちだっただろうか。

俺は中学時代の記憶を探った。

「七瀬からだな。」

そうだ、思い出した。告白自体は七瀬からだった。

その時は既に俺も七瀬が好きで俺はこれをどう伝えたら良いのかわからなかった。

そう思っていた時に七瀬の方から告白されたんだ。

「お母さん、なんとなくわかったよ。」

「でしょ?」

今の会話のどの部分で何がわかったのか

親子で意味不明の会話が成立していた。

「裕也くん今日は夕ご飯も食べていってね?」

愛佳さんが俺にそう言った。

元々からそのつもりではいたが、

今になってなんとなく悪い気もしてきた。

「お母さん、そのつもりで呼んだんじゃない。」

唯花は微笑をしながら母親に言っていた。

間を取って付けたような会話だな。

実際間が持たないと思ってるのも事実ではあるが

「そうなんだけどね。」

「いえいえ、こっちも家の事情で今日はあまり家に居ない方が良いと思っていたのでむしろ好都合だったんですよ。急な話になってすみません」

「良いのよ、少し驚いたけどね。」

さすがに昨日誘われてそれの今日だからな。

急かしてしまったようで少し悪い気がする。

「にしても旦那さんが単身赴任で愛佳さんは少し寂しいんじゃないですか?」

「まあね、でも、こうして唯花との二人暮らしももう慣れたわ。」

「お父さんがいたらむしろ、こうやって裕也くんを家に入れることできないよ。」

厳しい父親なのだろうか?唯花はそう言ってきた

「なんでだ?」

「え、とね。。」

唯花は言いにくそうな素振りを見せた。

代わりに愛佳さんが鈴木家父親像を語るようだ。

「えっとね、うちの旦那は娘大好きな親バカでね。」

「それだけ聞くとどの親もそうなのでは?」

「そうじゃなくってね?異常な溺愛ぶりでね、、、たまに私も困ることがあるのよ」

なるほど、今の愛佳さん言葉でなんとなく察しがついた。

まあ、この唯花の父親ともなると放っては置けないのもわかる気がする。

俺が仮に父親になって唯花ほどの可愛い娘だったらどうなるのか。検討はつかないな

自分の子供、、、か。

全くもって想像なんてできない、それはまだ俺が高校生だからなのだろう。

しかし、俺と同じ歳で子供持ちの既婚者も少数派ではあるがいるのは事実だ。

だからと言って歳をとったとは思ってない、いくらなんでも20歳そこそこでそれを言うのは歳上の人たちに失礼だろう。

「ちょっと早いけど夜ご飯にしましょうか。」

愛佳さんはそう言って前々に準備していた夜ご飯を温め始めた。

時間はまだ18:30を廻る頃だ。

結局、愛佳さんに聞かれた事と言えば唯花をどう思ってるかだけだったな。

逆に唯花は俺をどう思っているのだろうか?

特別悪い印象を与えているとは思わないが、男としても少しは気になってしまう。

つい、愛佳さんの手伝いをしている唯花に目が行ってしまった。

「あ、俺も手伝いますよ。愛佳さん」

俺は食器を出していた愛佳さんを手伝おうと思った。

「大丈夫よ、裕也くんはお客さんなんだし。ゆっくり待ってて。」

「いや、悪いですよ。」

俺はそう言って愛佳さんがやっていた食器出しを手伝った。

「裕也くんは本当に唯花の話に聞いた通りね。」

普段、唯花はどんな話を愛佳さんに吹き込んでいるのだろう

俺は出した食器をキッチンで料理を温めている唯花の元に行った。

俺はふと料理の入った鍋の中を見た。

「肉じゃがですか。」

「もしかしてダメだった?」

愛佳さんが心配そうに返してきた。

「いえ、全然そんなことはないです。むしろ大好きですよ肉じゃが。ただ、王道だなぁって思いまして」

料理対決というと何かと肉じゃががよく出てくるような気がした。

「お袋の味代表みたいな感じだよね?」

唯花はそう言ってきた。まあ、そうとも言う

「俺自身はお袋の味を知らないけどな。」

大川沙弥の手料理は食べたことがない。

俺にとってお袋の味っていうと清花さんの料理がそれに当たるんだろうな。

「あ、なんかゴメン。」

唯花はいきなり俺に謝ってきた。

少し勘違いをしたみたいだな。

「俺はそんなつもりで言ってないぞ?唯花。」

「え?でも、真顔で言ってたし。」

そうだったか、それは俺に非があるな。

「それは俺が悪かった。俺にとっては清花さんの料理がお袋の味に当たるなと思ってたから。」

「清花さん?」

そうだ、唯花はまだ清花さんを知らないんだったな。五葉も四葉もお母様としか呼ばないからなおさらだな。

「ああ、清花さんは五葉と四葉の実の母親だ。だから今は俺の母親でもある。そういう事だ。」

「五葉ちゃんのお母さんの事ね。裕也くんは清花さんって呼んでるんだね。五葉ちゃんはお母様って言ってたからてっきり裕也くんも母上だとか呼んでるんだと思ってたから。」

「唯花はそのうち会う機会はあるだろうな。」

「え?」

唯花は俺の言葉に対して赤面して答えていた。

今のセリフに恥ずかしくなるようなところはあっただろうか?

「どうした?唯花。」

「い、いや?なんでもないよ?」

唯花がそういうのでとりあえず夕飯の準備を済ませた。


食卓に肉じゃがとご飯そしてみそ汁が並んだ。

ごく一般的な日本式の並びだ。

3人で頂きますを言って食事を始めた。

「あ、そうそう。」

食事を始めると愛佳さんが思い出したように話し始めた。

「今日この後、佐々木さんの家に行くから唯花ちょっとお留守番お願いね?」

近所の人の家だろうか?こういうのも一般家庭にはよくあるのだろうか?

清花さんは仕事でよく出ている事はあるが近所の人との交流はあまり見ないな。

「うん、わかった」

唯花は特に不思議そうな様子もなく了承していた。

「裕也くんは、好きなだけここに居ていいからね?私のことを待って家にいる必要はないから好きなタイミングで帰っても大丈夫よ?」

「迷惑じゃないですか?」

俺は一応、確認をとる

「うん、大丈夫よ。唯花と2人きりなるけど。」

そうか、まあ唯花と2人なのは全くもって問題ないので俺も了承をする。

「わかりました、唯花の方は大丈夫か?」

これは、一応唯花にも確認した方が良いだろう。

「う、うん大丈夫。」

唯花は箸で掴んだ肉じゃがのジャガイモをポロンと落としながら了承していた。

その様子は本当に大丈夫なのか

すると愛佳さんの方から小さなクスクスと笑っている声が聞こえた。

俺は、その愛佳さんに目を向ける。

「愛佳さん?」

「いや、なんでもないわ。気にしないで、、、」

そんなことを言いながらクスクス笑いが止まっていない愛佳さん

俺はどう反応したら良いんだか。

なんやかんやで夕食が終わった。

俺は食べ終え食器を台所に片付けようとした時

「ああ、良いわよ?裕也くん私が片付けるから」

愛佳さんが俺をそう言って止めていた。

「いえいえ、このくらいはさせて下さい。美味しい夕食を頂いたんですから。」

俺はそう返して、台所の洗い場に食器を置いて水に浸けた。

「ちょっと良い子過ぎじゃない?裕也くん」

愛佳さんは若干不満そうな顔をしながら俺を褒めた。

顔とセリフが一致してない。

「どういう教育をしたらそんな良い子に育つのかしら?」

愛佳さんがそう続けて言っていた。

そうだな。物心のついた頃から日常生活全般を強制的に自分でやらされるような環境だったらこうなるのかもしれない。

だが、それは一般の家庭環境ではできない事だろう。俺と夢弥は特例過ぎる

「唯花だって良い子じゃないですか。」

愛佳さんが唯花に不満を持っているようには感じなかったが。答える言葉も見つからなかったので俺はそう言った。

「いや、そうなんだけどね。今の若者というか裕也くんの世代の子達って。なんて言うんだろうなぁ〜。自分の事しか考えていないというか。自分さえ良ければそれでいいみたいな思考じゃない?」

最近の若者は、、、という言葉はよく耳にするがそれはどの世代でも言われてる事だと俺は思う。

不満の内容は違うにせよどの世代でも若者とベテランは苦労するものなんだろう。

「自己中心的な人間ってどの世代にも居るとは思いますけど。今の若者は特に顕著なところが目立ちますね。」

「やっぱりそうよね?この間新入社員の子がね。。。」

愛佳さんの職場の愚痴が始まった。

というか愛佳さんは専業主婦って言うわけではないらしい

ここは俺のお得意である司会者に徹する事をして

相づちを打ったり時には自分の意見も少し交えながら愛佳さんの愚痴を聞いていた。


「あら、もうこんな時間。私、出ちゃうから裕也くんは好きなだけ寛いでいってね。」

愛佳さんは先程言っていた近所の人のところに行くようだった。

「はい、夜ご飯ご馳走さまでした。」

「また、いつでも来てくれて良いからね?」

「機会がありましたら。次は五葉も連れてきますよ。」

「わかったわ。五葉ちゃんにもよろしく伝えておいて、まだ会った事ないけど」

「はい、連れてきますよ。本当に今日はありがとうございました。」

俺は頭を下げて愛佳さんを見送った。

さて、ここからは唯花と2人きりか。

ちょうど良い機会だし早速今日の学園の授業のわからないところ唯花に教えてもらうとするか。他力本願な気もするが

「唯花。」

「うん?」

「さっそく勉強教えてくれないか?」

「ああ、うん。良いよ」

「リビングでやるか?」

「うーん、、、私の部屋でいいよ?」

「気安く女の子の方から男を部屋に呼ぶものじゃないぞ?」

「え?私そんなに気安く男の子連れこむように見える?」

「いや、そういう訳じゃないが。」

「裕也くんなら私、全然大丈夫だから。」

唯花はそれだけ俺を信用しているって事なのだろう

「そう言う事なら唯花の部屋でやるか。」

「ちょっとだけ待っててね。」

唯花はそう言って自分の部屋に行っていた。

俺は自分のカバンの中から筆記用具と2教科ほどの教科書とノートを準備して唯花を待った。


しばらく待つと唯花が俺の待つリビングに入ってきた。

「おまたせ裕也くん。」

「部屋の整理整頓でもしてたのか?」

「う、うん。まあね」

唯花は戸惑いながら答える。

仮にも俺は異性だからな。見られたくないものでも隠して来たのだろう。

敢えてそこに部分には触れないでおこう。

なにせ、俺の部屋にも異性に見られたくない物が詰まっているからな。。。

そうして、俺は唯花に案内されて唯花の部屋に入った。

「まさに女の子の部屋って感じだな。」

俺の目の前の光景はまさに女の子の部屋テンプレートのような明るい色をした壁紙に明るい色をしたカーテン。そして床には物一つ置かれていなく綺麗に整理整頓されていた。

中には部屋を片付けるのが苦手な女性も居るんだろうが、唯花はそうではないようだ。

ま、そうでなきゃ人を自分の部屋になんて案内しないか。

「裕也くんは一体どれだけの数の女の子の部屋を見たのかな?」

唯花は威圧感のある口振りで答えた。

ちょっと怖いぞ?

「ちょうどこの間五葉の部屋を見たんだ。あっちは和式の部屋だけどな」

着替えを見てしまったというのは付け足さない。

言う必要はないしな

「あ、そういう事ね。」

唯花は一体何を疑ったと言うのだろうか?

「まあ、いいや。そこに座って?」

唯花は丸型のテーブルと座布団のセットを指差して言う。

「で、どれが一番わからないの?」

唯花と俺は座布団に座って俺は持ってきた筆記用具をテーブルに置いた。

「数学が一番難解だな。」

「ちなみに、一応確認なんだけど算数はできる?」

「ふっ、、」

俺は思わず笑ってしまった。

「まさか、」

「唯花、それは流石にバカにし過ぎだろ。いくらなんでも小学生レベルの事は出来る。」

「なら、良かった。」

「俺が数学でわからないのは主に公式だどの問題の時にどの公式を使うだとか。」

「なるほどね、なら記憶に新しい今日のおさらいから行こうか。」

唯花は俺の座る隣に近づいてテーブルに身を乗り出して俺に数学を教えていた。

「これを、公式で書くとこうなるの。このXのところは同じ数字で」

なんとなくの覚えがある事も教えられながら。俺は唯花の教える声と指先に集中していた。

「、、、、、、それでこうなるの。」

「なるほどな。ちょっと一つ問題を出してくれ」

「それなら、、、」

唯花は学校指定ではない教本を出してページをめくる。

「これなんか丁度いいかな。」

唯花は俺の目の前にその教本を置いて問題を指差した。

しばらく沈黙のなか俺は問題に集中していた。

さっきの唯花の言っていた事を思い出しながら、数学を解いていく

答えを書いた。

「これで合ってるか?」

自信はあるが何せ苦手科目なのでつい引き腰になってしまう。

「え、と」

唯花は俺にもたれ掛かるような体勢で俺の解いた問題を見る。

「うん、大丈夫だね。合ってるよ」

「唯花の教え方はわかりやすいな。」

「ありがと、」

「将来は学校の先生でもやりたいのか?」

こんなに教えるのが上手いなら将来に生かした方が良いだろう。

「あまりそれは考えた事ないなぁ」

「以外だな。」

「そんな裕也くんは将来どうしたいの?」

俺の話はわかりきったような答えなのだが

「俺は四宮の家を大きくする為に尽力するだけだ。」

「それは裕也くんの意思で?」

なんでそんな事聞いてくるのか

「まあ、そうだな。これはある意味親への復讐でもある。だから俺の意思だ。」

「そうなんだ。ならこれ以上なにも言わない。」

俺の事を察したのだろうか?

すんなりと俺の言ったことに納得した唯花。

「唯花は良い女になるな。」

俺はそう言って唯花の頭に手を乗せる。


、、、ちょっと待て、今俺は何をしてる?


俺はもう一度自分の今やっている事を頭を冷やして確認した。

まず、俺はさっきなんて言った?

「唯花は良い女になるな。」

なにを俺は上から目線で言っているのか。。。

そして、俺は自分の手が今どこに置かれているのかを確認する。


うむ、間違いない。唯花の頭の上だな。

そして当の頭に手を乗せられている本人の唯花は顔を赤くしながら疑問の表情で俺を見ていた。


俺は咄嗟に唯花の頭から手をどけた。


可愛いだとか、そういうのは平気で言える俺だが。良い女になるな。なんて言葉は流石に使った事はない。

これが初めてだった。


さすがの俺もこの動揺は隠しきれない。

なんで俺は唯花にそんな事を言ったのか。

なんなんだ、今までには体験した事のない感覚だ。


「悪い唯花。今のは」

「え?ううん、大丈夫だから。」

なんだ、なんなんだ。急に唯花と話しづらくなってきた。

できれば、ここから退出したい。

そうか、出るか。

俺は立ち上がる

「ちょっと、俺、、」

「待って、」

俺が立ち上がると唯花がそれを止めるように俺の背中に抱きついてきた。

待って欲しいのは俺の方なんだが。

今すぐにでも唯花から一旦距離を置きたい。

なんで俺はこんなにも怖じ気づいているんだ。

まるで俺は自分の事を見られたくないような、、そんな気がしていた。

なんなんだ本当に。

「唯花、、?」

沈黙に耐えられなかった俺はやむ終えず唯花の名前を呼んだ。

「私は、裕也くんと一緒に居たい。」

で部屋から出ようとした俺を止めた唯花はそう言った。

こういう時はどうすればいいんだ?

俺は今、唯花と一緒に居たくないって事なのか?

いや、違う。そう言うわけじゃない

この体験した事のない感覚にただ怯えているだけだ。

「悪い唯花、俺は今どうしたら良いのかがわからないんだ。」

俺はそんな事しか言えなかった。

唯花の求めている答えはこれではない事がわかっているからこそ、そんな事しか言えない自分が情けなかった。

俺はどう思ってるんだ?困惑なのか恐怖なのか。

それとも別の感情なのか。


すると、唯花は抱きしめていた俺の背中を離した。


「ごめん、私が変だったかも。」

俺に謝る唯花

「違う、悪いのは俺の方だ。すまない」

「なんで、裕也くんが謝るの?私がいきなりあんな事言ったから裕也くんは混乱しちゃったんだよね。」

さっきの俺の感情は混乱だったのか?

いや、違う。少なくとも混乱ではない。

でも、わからない


「明日は、私もいつも通りに戻るから。裕也くんもいつも通りにしてね?」

なんとも煮え切らない気持ちでいっぱいだが。

それは俺にとっても好都合な気がした

「ああ、そうだな。」


しばらく沈黙が続いた。


「そろそろ、俺は帰るよ。時間も時間だしな。」

時間は20時を回っていた。

「そうだね、今日はありがとうね裕也くん。」

「こっちこそな。」

「また来て?勉強会しよ?」

「ああ、そっちもありがとな。また教えてくれ」

「うん!」

いつも通りの唯花の笑顔を見て俺も少し落ち着いた気がした。

俺は唯花に別れを告げ四宮家へと帰ることにした。


それにしても、、、


どうしても心に染みつくような変な感覚が俺にはまだ残っていた。


第7話「唯花」ー完ー

最後まで読んで頂いてありがとうございます!小林歌子です♫

今回もあとがきはキャラクター紹介でございます!

今回は裕也の実の妹である 大川 夢弥 ちゃんでございます!

ロリロリしてて可愛い妹系の女の子です!

そんな夢弥ちゃんですが、普段学園では巫女にも関わらず髪の毛をピンク色に変色させています。

作中でも書いておりましたがこれは裕也と夢弥の容姿が似ている為敢えて実の妹だと周りに悟られないよう夢弥ちゃんから自発的にしている行為なのです。

そして、髪型はショートのツインテールです!

身長は147cmの小柄体系、小学生と間違われてもおかしくはないような身なりです!

実の兄である裕也の事が心の底から好きでよく裕也に甘えています。

次回は夢弥ちゃんがメインに登場する予定です!(今のところ)

引き続きよんで頂けるとありがたいです!

以上!小林歌子でした♫

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