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両性巫女の高校生活  作者: 小林歌子
1/8

第1話「両性巫女の入学日」

俺の名前は四宮裕也(しのみやゆうや)

産まれながらに魔法を使える種族である「巫女(みこ)

その家系に男の性を持って産まれてしまった。


巫女の家では男が産まれることは罪と言われ今まで実家では散々な扱いを受けてきた。


そして今は巫女の家ではあるが幼い頃からも縁がある「四宮家」に養子として引き取られている。元の名前は大川裕也(おおかわゆうや)その「大川」の姓を変え四宮家にそんな俺を受け入れてもらっている。


「裕也くん?起きてる?」


部屋の扉の向こうからドアのノックの音と声が聞こえた。

俺は何も答えずにドアを開けた。


「おはよう。四葉(よつば)さん」

「おはよう。裕也くん、もう四葉さんって他人行儀な呼び方そろそろやめてよ。」

「いやいや、こんな俺を助けてくれた四宮家の人なんだから敬称を付けないと落ち着けないよ。」


この人は四宮四葉(しのみやよつば)四宮家の4女であり巫女だ。

長い銀髪をポニーテールでまとめている。そして巫女として産まれた人間は誰しも皆、銀色の毛を持って生まれる。無論、両性巫女(りょうせいみこ)であるこの俺も銀髪だ。


「もう、そんなこと気にしないでよ。苗字も四宮になって私たち本当の家族になったんだよ?それとも裕也くんは私たちと家族なのは嫌?」

「そんなわけないよ。うん、わかった四葉姉さん。」

「うん!弟くん!あっでも裕也くんの方が年上なんだよね?弟くんはおかしいかな?」


そう、今日高校の入学をする俺の実年齢は20歳だ。中学卒業直後に実家である大川家に4年間監禁された俺は15歳のまま身体だけ20歳になってしまった。


「俺の気持ち的には15歳のままだから弟でいいよ四葉姉さん」

「そう?なら遠慮なく。弟くんこれからもよろしくね!」

「うん、よろしく姉さん。」


そうして姉さんと朝の挨拶を交わして俺は洗面所に向かい顔を洗い天然でサラサラな銀髪をワックスでセットし和室のリビングに向かった。


「おはよう。裕也さん」

「おはよう五葉(いつは)さん」


この人は四葉姉さんの妹であり四宮家の5女である四宮五葉(しのみやいつは)今日俺と一緒に小川学園(おがわがくえん)高等部に入学する15歳の高校一年生だ。

この子も四葉姉さん同様に巫女で長い銀髪をツインテールでまとめている。


「裕也さん、いい加減さん付けやめなよ。こんな年下の女の子に敬称付けるなんてなんか変じゃない?」

「ああ、それ今朝四葉さんにも言われたよ。だから」

「だから?」

「五葉、おはよう。」

「うん!兄さんおはよう!」


そうして2人で和室の扉を開けた。この家は昔ながらの古風な和式の家で和室がいくつもありその中の一つをリビングとして使っている。

2人で学校の事をを話していると四葉姉さんが朝ごはんを運んできた。


「姉さん。手伝うよ」

「うん、それなら台所にもう一つお鍋があるから。そっちの方お願いしても良い?」

「わかったよ。持ってくる」


俺は台所に向かった。そしてそこにはこの家の(あるじ)がいた


清花(きよか)さん、手伝うことありますか?」

「あら裕也。おはよう、そこにある鍋運んでもらえる?」


この人が俺の恩人である四宮清花(しのみやきよか)さん四宮家の頭首であり母親だ。


「清花さん。いつもありがとうございます。」

「良いのよ、そんなこと気にしなくても。どこの母親も同じことしてるんだから」

「でも、俺はここのっ、、」


清花さんの人差し指で口を止められてしまった。


「そんな事ないわ裕也私たちはもう家族も同然なの。これからは何があってもあなたを守るし助けるわ安心しなさい。」

「でも、俺だって1人の男だし自力でできることは自分でやるさ。」

「そんなの当たり前よ。立派な一人前の男になりなさい」

「ああ、もちろんさ」

「はい、じゃあこれ運んでね」


清花さんは鍋を指差して言った。


「了解、じゃ魔法で」


ビシっ!清花さんに頭を叩かれた


「痛いですよ。清花さん」

「あんたねえ四葉だって魔法使わずに持っていったでしょ」

「それはそうですけど」

「本当に女々しいわね。両性だけど女側の方が強いのかしら?学校も女性で入学させれば良かった?」

「それはさすがに嫌ですよ」

「ああでも安心して学校にはあなたが両性巫女なのは伝えてあるから女性化しても大丈夫だから」

「それは助かります。たまに解けないですからねあれ。」

「ただ、気をつけなさいよ裕也。大川の手のかかった巫女があなたを狙わないとは限らないから」

「もちろんです。俺の希望を叶えてくれたんです、大川家に捕まるヘマは犯しません」

「まあ、でもその為の四葉と五葉だから2人には頼りなさい」

「はい、そうさせてもらいます」


そして俺と清花さんは朝ごはんの入った鍋を持ってリビングに向かった。


「2人ともおまたせ頂きましょ。」


この家の主である清花さんは四葉姉さん、五葉を含めた5人の巫女を産んだ母親でありとても46歳とは思えない美貌も持ち合わせている。


「四葉、五葉。今日から改めて裕也をよろしく頼むわね」


清花さんは改まって実の娘2人に言う。


「もちろんです。お母様その為の私と五葉です」


四葉姉さんが答えた。


そこまでして俺を大川家から匿う理由はいまいち俺には理解できていない

実の母親である大川沙弥(おおかわさや)も俺を監禁していた4年間何か引っかかる点がいくつかある行動をしていた。でもあの4年間はとても永く苦しい時間だったのは確かだ。二度と実の母親をを許す事はできないかもしれない


「3人とも、気をつけてね」

「はい、では行ってまいりますお母様」

「お母様、行ってきます」

「清花さん、行ってきます」


四葉姉さん、五葉、俺の順で清花さんに行く挨拶をして家を出た。


「行ってくるよ。相棒」


俺は自分の愛車にも挨拶をした。去年1年間清花さんの仕事を手伝って貯めたお金で買った人生初めての自分の車だ。赤のHマークエンブレムの似合うスポーツカーだ。


「裕也くん、本当に車好きだよね。昔から」


四葉姉さんが少し微笑みながら言ってきた。


「うん、まあね何かを操るって言うのが単純に楽しいんだよ」

「裕也さん車で通学したいとか思わないの?」

「そりゃ思うけどさ。俺がしたいのは普通の高校生活だから。でも、たまには車で学校に行くって言うのも悪くないかもな」

「その時はお姉ちゃんと私も乗せてよね」

「ああ、もちろんさ」


2人と歩いて数分で家の最寄りの駅に着いた。

俺たちが住む場所は東京ではあるものの都会っぽくもなく東京の田舎というのがふさわしい辺鄙な地域だ。そこから電車で乗り換えなしで2駅俺たちが通う小川学園の最寄の駅に着くそこからは徒歩で20分ほど歩いて学校に着く。通学路でも同じ制服を着た生徒が何人か歩いていた。


「入学説明会以来だな。」

「それじゃあ私は生徒会の挨拶があるから先に行くね。弟くん、五葉ちゃん。」


四葉姉さんは2年から生徒会長で入学式でも壇上での挨拶があると先週から張り切っていた。


「ああ、頑張って四葉姉さん。」

「頑張ってねお姉ちゃん!」

「うん、五葉ちゃん裕也くんに学校案内してあげて」


そう言って四葉姉さんは先に行った。


「そっか、五葉は中等部から進級してるんだったな」

「うんだから校内のことは大体わかるから何でも聞いてね」

「助かるよ五葉」

「まずはクラス分け見ないとね」


俺たちは校内に入ってクラス発表の表を見た。

A組、四宮五葉、四宮裕也と並んで俺たちの名前が書いてあった。


「同じクラスだね、裕也さん」

「ああ、願ったり叶ったりだな。」

「一緒が良かったの?」

「そりゃもちろんさ。まだ不安なことがたくさんある」

「そうだよね。大丈夫だよ裕也さんは私たちが守るから」

「それは、そうと五葉」

「どうしたの?」

「俺の事は兄さんって呼んだ方が良いかもしれない」

「何で?」

「クラス表を見てみろ」


クラス表を見て気づいた五葉の様子がわかった


「四宮の苗字で並んでるから他の連中から見たら兄弟にしか見えないだろう」

「そうだね。それも双子にしか思えないよね誕生日も一緒だし」

「え?ああ、そういえば誕生日も一緒だったな本当に偶然だが。なら都合が良い今日から俺たちは双子だ。良いな?五葉?」

「うん、兄さん」


俺は下を向いて照れ顔を隠す五葉の手を取り見つめた。


「おいおい、あそこ入学早々からカップル誕生か?」

「女の子の方普通に可愛いじゃねえか!羨ましい」

「てか2人とも銀髪じゃん女の子の方は巫女じゃねえの?」


周りからの視線が増えてしまった。初日から注目を浴びるのはあまり良くないなこの辺で立ち去るか。


「五葉、教室に向かおう」


俺は五葉の手を離そうとしたが五葉が手を離さなかった。


「五葉?」

「このまま教室に行っちゃダメ?」


五葉は顔を赤くしながら照れくさそうに言った。あまり注目を浴びたくないが仕方がない


「良いよ、行こうか」

「ありがと兄さん」


教室の前まで着いた。教室の扉の前には戸締まり徹底と張り紙があった。そして教室の前には大きな下駄箱があるどうやらここで上履きに履き替えるようだ


「五葉、履き替えるから手を離すぞ?」

「あ、うん、ごめんね?兄さん」

「別に良いさ。手なんかいつでも繋いでやる」

「本当に?いいの?」

「ん?ああ双子なんだから当たり前さ」


あまり注目は集めたくないがな


「そっか、じゃあまたお願いしちゃおうかな」


五葉は両手の人差し指同士ををツンツンしながら言う。

容姿も可愛いが他のところも可愛いんだな

上履きに履き替えて2人で教室に入り席順を確認した。

俺は窓側二列目後ろから二番目の席そして出席番号が一つ若い五葉は俺の前の席だ。

特に会話もなく俺は前の席の五葉の後ろ姿を見ていた。

すると女子が俺の後ろの席についた


「君が私の前の席?」


その女子が俺に話しかけてきた


「ああ、そうだ。えっと鈴木さんで良かったか?」

「あれ?何で名前わかったの?」

「席順表の自分の周りの席の名前は一通り覚えたんだ」

「へー、記憶力良いんだね。」

「このくらいは褒められるほどじゃない。四宮裕也だ。よろしく」

「改めまして、鈴木唯花(すずきゆいか)です。よろしくね四宮くん」

「ああ、よろしく。それともう1人双子の妹を紹介したい」


前の席の五葉の肩をつついてこっちを向かせた。


「双子の妹の四宮五葉だ。五葉あいさつ。」


五葉は少し頰を膨らませていたがすぐにいつも通りに戻った。


「四宮五葉です。よろしくお願いします。」

「よろしくね。五葉ちゃん、それと裕也くん」

「いきなり下の名前か。構わないが」

「だって苗字だと2人居るからややこしいじゃない?」

「まあ、それもそうか。ではよろしくな唯花さん」

「別に「さん」はいらないわ唯花でいいわよ」

「なら唯花」

「うん!よしよし」

「じゃ、じゃあ私も唯花ちゃんで良いかな?」

「うん、もちろんよ!五葉ちゃん!」


入学早々良い友人ができたこれは良い幸先だな。


「唯花ちゃんって小川学園は高校からだよね?」

「うん、そうだよ。そういう2人は中学から?」

「私は中学からだけど兄さんは高校からなの」

「あれ、そうなんだ。裕也くんどこ中学だったの?」

「普通の公立中学だ。」

「まあ。普通はそうだよね。2人ともどこから来てるの?」


そして俺たち3人は話し込んでいると担任の先生が教室に入ってきた


「では皆さん入学式があるので講堂に移動して下さい。入学説明会を受けたところですから場所はわかりますね?」


そして俺と五葉、唯花は3人で講堂に移動した。

講堂はよくある市民ホールのような場所でクラスごとに横並びに並ぶようだった

もちろん出席番号順なので俺たち3人は並んで座った


「最初に在校生あいさつ。生徒会長の四宮四葉さんお願いします」


壇上に四葉姉さんが上がった


「1年生の皆さんご入学おめでとうございます。」

「もしかしなくても生徒会長はお姉さん?」

「ああ、そうだ」


俺にとっては年下のお姉さんだけどな


「もう名前と見た目ですぐわかっちゃうね」


流石に銀髪は目立つ。巫女の家の人間自体が決して多いわけではないしこの学校にも何人かは居るみたいだが、そういえば同じクラスにも五葉以外にもう1人居たな。苗字は確か「河合(かわい)」川の名が付く銀髪そして女。


五葉は気づいているだろうか?


要注意が必要だ。

そして入学式が終わり俺たちは講堂を出た。


「五葉、唯花と先に教室に戻ってて良いぞ。俺はちょっとコホン」

「あ、うん私も一緒に行くよ」


五葉は俺の様子に気づいたようだった


「え、じゃあ私もついていくよ」


ちょっと待てこれはまずい五葉は俺が二十歳である事を知っているからいいが


「いや、唯花ちゃんは先に戻っててお願い!」


五葉が強く言ってくれた。


「えー?何よ2人ともー!」

「いいからいいから」


何とか唯花を教室に戻して俺と五葉は人気(ひとけ)のない校舎裏に来た。


「兄さん、吸いたい気持ちはわかるけどさっさと済ませてよね」

「悪いな五葉。ライター忘れたみたいだ」

「はい。」


と言って五葉は指先からライターと同じくらいの火を点けた。俺はそこに咥えたタバコを近づけて吸い始めた。

五葉の髪の毛は火を点ける魔法を使った影響で毛先の少しの部分がピンク色に変色した。


「男のままだと火を点ける魔法使えないんだよな」

「タバコ吸うときだけ女性化すればいいんじゃない?」

「それはダメだ。戻れなくなったら面倒だろ?」

「良いじゃん戻れなくたって。可愛いよ?女性化した時の兄さん」

「学校ではあまり両性巫女である事を隠したいんだ」

「まあ、そうだよね。」

「というか悪いな毛先ピンクにさせちゃって」

「別に大丈夫だよ。このくらいすぐに戻るし」

「スー、ハー。よし戻るか」


俺は携帯灰皿に吸い殻を入れ五葉と教室に向かった。

廊下を歩いていると四葉姉さんの姿が見えた。

すると姉さんの方もこちらに気づいたようでこっちに近づいてきた


「あ!裕也くんに五葉ちゃん!」

「姉さん壇上あいさつ良かったよ」

「お姉ちゃんお疲れ様」

「うん、ありがとうね2人とも。ところで裕也くん?」

「ん?」


四葉姉さんが怖い笑みを浮かべながら言う


「タバコ吸ったでしょ?」

「ああ、ちょっとな」


ビシッ頭を叩かれた


「普通に痛いですよ?四葉さん?いえ、様?」

「あのね、ここ普通に高校なんだけど裕也くん以外のみんなが未成年なんだよ?」

「それはわかってるけどさニコチンがどうしても許してくれないって言うか」

「せめて吸うなとは言わないけど臭いのエチケットぐらいはしてよね?ブレスケアとかコンビニに売ってるでしょ?」

「わ、わかったけど。ゴメンいまは何も持ってない」

「それは知ってる。だから、、、はい。これ」


姉さんは制服のポケットからキャンディーの入れ物らしきものを俺に渡した。


「これはあげるけど次からは自分で買ってね?」

「わかったよ。ごめん姉さん」

「でも本当は学校でタバコ吸っちゃダメだからね?」

「何の話をしているんだ君たち」


廊下の奥の方から1人の男性の教師が来た。ちょっとこれはまずいかもな。


「あ、君が両性巫女の四宮くん?」

「は、はいそうです」

「二十歳なんでしょ?」

「え?なんでそれを?」

「教員はみんな君の事を知っているよ。タバコを吸うのかい?」

「はい、まあ健康には悪いですけど」

「ははっ、そんなに堅くならなくていいよ僕もタバコを吸うんだ。もし良かったら教員の喫煙所の場所教えてあげるよ。あ、僕は社会科担当の佐藤だ。よろしく」

「はい、四宮裕也です。よろしくお願いします。佐藤先生」

「うん、今度吸うとき職員室で呼んでくれれば案内するから」

「わざわざ、ありがとうございます。」

「それじゃあ、またね四宮三姉妹」


そういって佐藤先生はこの場を後にした。


「よかったね。兄さん」

「まあな、でも五葉はついて来てくれよ喫煙所」

「ええ、なんでよ、、、」

「不安だから」

「それだけ?別に良いけどお母様も吸ってるからタバコの臭いが苦手なわけではないし好きではないけどね」

「悪い」

「それでもエチケットはしてね?弟くん」

「わかってるよ、姉さん」


そうして俺と五葉は四葉姉さんとも別れ自分たちの教室に戻った。


「あれ?裕也くん何食べてるの?」


教室に戻ると唯花が興味ありげに近づいてきた。

俺は呂律が回りにくいまま答える


「キャンディーだ、姉さんからもらった」

「へぇ、結構良い匂いするんだね。」

「ああ、そういうキャンディーらしいぞ?口臭改善だとか書いてある。」


俺はキャンディーのパッケージを見ながら唯花に答えた


「裕也くんって結構そういう身の周りの事気を使ってるよね。髪の毛もワックスでちゃんとセットしてるし」

「それはそうだろ。女の子だってみんなそういう身の周りに気使ってるだろ?女の子がやってて男がやらないってのは失礼ってものだ」

「よく知ってるね。でもそういう男の子は女子的にポイント高いよ」

「それは光栄だ。こんな美少女にお褒めの言葉を貰えるとは」


俺がそういうと唯花は口をポカンと開けながら固まっていた。どうしたと言うんだ


「ねえ?五葉ちゃん?お兄さんってもしかして天然プレイボーイ?」


唯花が俺に対して失礼な事を言うと。五葉は顔を少し赤くして答えた。


「うん、そうかもしれない。」

「おいおい、何言ってるんだ彼女が出来た事ない俺がプレイボーイなわけないだろ」

「え!?そうなの!?」


またまた驚いた顔をして唯花が返してくる。


「別に驚く事じゃないだろ」


俺がそう返したところで担任の先生が教室に入ってきた


「はいでは終礼を始めます。」


終礼も特別な事はなく。今日の登校日は無事終わった。


「五葉、職員室行くぞ」

「うん、わかった」


と五葉が答えるとまた唯花が話に入ってきた。


「私も行きたい」

「え?」


俺はなんと答えたものかと迷っていると五葉が言った。


「実はね唯花ちゃん兄さんは不良なの」

「おい、何を言い出す妹よ少なくとも俺は不良じゃない」

俺がそう返すと五葉は「任せて」と目配せをした


「兄さんは不良だからこれからタバコを吸いに先生を誘うところなの」

「おい、五葉事実を言ってどうする」

「あ、本当なんだ」


平然と言う唯花


「てか、タバコ吸いに職員室ってどんな自殺行為なの?」


まあそれが普通の答えだよな唯花は知らないが俺は二十歳だ


「ああ、実はな、、」


五葉に口を塞がれた


「大丈夫だよ唯花ちゃんついてくればわかるから」

「おい五葉」

「しょうがないよ兄さん。それに唯花ちゃんには知ってもらった方が良いと思うよ?」

「それもそうだな」


唯花にこの先誤魔化しが効くとも思えない。知ってもらった方がいいだろう

そうして俺たちは職員室に向かい近くにいた先生に佐藤先生を呼んでもらった。


「やあ来たね四宮くん。2人はついてくるのは良いけど吸ってはダメだよ?」


そうして俺たちは佐藤先生に連れられビオトープのような場所に来た。そこにポツンと灰皿が設置されていた


「さて」


と言いながら佐藤先生はタバコに火を点けていた。


「やはり、ここなんですね」


俺もタバコを箱から出した


「五葉すまん」

「はい」


五葉に火を点けてもらった


「スー、ハー。ありがと五葉」


そして五葉の髪の毛はまた毛先がピンク色に変色した


「ははっキャバクラの姉ちゃんみたいだね四宮さん」


佐藤先生が笑いながらセクハラ混じりな冗談を言う。うまいこと言ったつもりか


「やっぱり、五葉ちゃんは巫女なんだね」


唯花は意外にもあまり驚いてはいない様子だった


「うん、この髪の毛でわかっちゃうよね」

「で?裕也くんは何でさも合法のようにタバコ吸ってるの?」


俺はタバコを吸いながら答えた。


「事情まで話すと少し長いぞ?」

「いいよ、私友達になりたいから」

「わかった」


俺は今まであった全てを唯花に話した。本当の年齢が二十歳であること、中学卒業後実に親に4年間監禁されていたこと。今の四宮家に助けられたこと。唯花は驚きながらも真剣な表情で聞いていた。たまに会話に入ってきた佐藤先生も大体の事情は知っていたようだった。


「なるほどね。じゃあ五葉ちゃんと裕也くんは双子ではないんだね」

「双子どころか血も繋がっていない」

「じゃあ何で双子って事にしたの?」

「その方が周りは混乱しないだろ?」

「五葉ちゃんはそれで良いの?」


五葉は少し困った顔をしていた


「うん、兄さんを守る為なら双子のふりでも何でもするよ」

「そっか」


唯花は納得したようだった


「なら、この事は3人だけの秘密ね!」

「唯花、ありがとう」

「良いってことよ、親友!じゃあ私先に帰るから」

「そっかまた明日な」

「またね唯花ちゃん」

「うん!裕也くん、五葉ちゃんそれと佐藤先生もまた明日!」


そういって唯花は元気よく帰っていった


「良い友達が出来たじゃないか四宮兄妹」


佐藤先生がそう言って俺は答えた


「そうですね。あれは信用できる目でした」

「君は人を見る目に関しては長けているようだね。たった1日であれだけ真で話せる友達を作るなんて」

「まあ、これは実の母親からの受け売りかもしれませんね」

「ほう。恨んでいるはずの母親の事も君は認めているんだね」

「それはそうですよ。相手のことを認めていなきゃ恨む事もできません。ただ一方的に嫌う事は恨みではなく妬みです」

「ははっそれはそうだ」


佐藤先生は笑いながらも続けた


「そんなに色んなことがわかっているのに何で高校に入ったんだい?」

「それは」


俺の希望は一つだったからだ


「普通の高校生活が送りたかったからです。」

「そうか、なら3年間充分に楽しみなさい。良い思い出になるはずだから」


そう言って佐藤先生はタバコを吸い終え職員室に戻っていった。


「俺たちも帰るか。五葉。」


俺はタバコを吸い終えそう言った


「うん、帰ろっか」


そう答える五葉の髪の毛は毛先から3分の1ほどがピンク色になっていた。


「ごめんな五葉。結構魔法使わせちゃったな」

「うん、普通にライター持ってこようね?」


五葉は少し怒ったように返してきた


「あ、ああ怒った五葉も可愛いよ?うん」


俺は視線を逸らしながら言った

仕方ない魔力を返してあげよう。しかし男のままでは魔力を回復させる魔法は使えない。


「五葉、今日一日のお礼だ受け取ってくれ」


俺は全身に魔力を込めた

光が身体全体を包み髪が伸び背が縮み胸が大きく膨らみお尻も少し膨らむ髪型はサイドポニーでまとめられ制服も女子用に制服に変わった。

そして女性化の魔法を使った影響で私の髪の毛先は5分の1ほどがピンク色になった。


「兄さん、どうしたの?」


五葉は戸惑っていた


「五葉に魔力を返してあげる」

「え、私そんなつもりで言ったんじゃないのに」


五葉の顔は少し赤くなっていた



「今日のお礼ってさっきも言ったでしょ」


私は五葉の頭に手をかざして魔力を込めた。

手が光を放ち見る見るうちに五葉の髪の毛が元の銀色一色に戻っていった。


「ありがとう、兄さん」

「気にしないで、、、うん、やっぱり戻れないわ」

「え?」


私は女性化を解こうと自分に魔力を込めたが男の姿には戻れなかった。


「女性化が解けないの」

「もう、私の魔力なんて戻そうとするからだよ。私は時間が経てば魔力が戻るから良いけど兄さんは女性化してる間魔力を消費しちゃうんだよ?」

「でも魔力が尽きればまた戻るでしょ?」

「魔力が尽きたら兄さんが倒れちゃうじゃない」

「大丈夫よ寝る直前に魔力を使いきるから」

「もう、兄さんったら二度とこんな事で女性化使わないでね」


五葉は真面目に怒っているようだった。


「兄さん、多分これからはそんな事に使う魔力の余裕はないかもしれないよ?」


五葉は私を心配して言っているようだった。


「わかってるよ五葉。今日だけはこうさせて」

「うん、わかってるなら良い。」


五葉がそう言う理由は私も重々理解してる

だからこそ今日はこうしてあげたかった


「じゃあ、五葉。今日は飛行魔法で家に帰ろうか」


私は空を指差して言った


「うん、付き合うよ兄さん」


ちょうどここのビオトープは空に繋がっている屋外だった私たちは飛行魔法を使って空を飛んだ。


「五葉、帰ったらまた魔力回復させてあげるからね」

「うん、わかってるよ兄さん」


私たちは空を飛んで家まで帰った

飛行魔法は魔力の消費が多く帰る頃に私の髪の毛はちょうど半分くらいがピンク色に変色していた


「大分使ったわね」


私はサイドポニーを目の前にして言った


「私は4分の1くらい」


五葉に方は4分の1程の魔力だったようだ唯花と話している間どれだけのタバコを吸っていたかがわかってしまう。


「じゃあ、五葉。約束通り魔力返すね」


そう言って私は五葉の魔力をもう一度回復させた

回復系魔法は回復させるものに限らず全てが魔力の消費は少ないほんの少しだけピンク色の部分が長くなった。


「あら、おかえりなさい2人とも」

「清花さん、ただいま戻りました。」

「お母様、ただいま。」


清花さんが玄関まで出てきたのだ


「なんで女性化してるの?裕也。何かあった?」


当然の疑問が投げかけられた。それに五葉が答える


「すみません、お母様。兄さんが私の魔力を回復させる為に女性化して。また今回も戻れませんでした」


五葉は清花さんに頭を下げて謝っていた。清花さんは私の方を見た


「なんでそんな事をしたの?」

「大した事じゃないですよ。今日にお礼がしたくてしたまでですから」


清花さんため息混じりに言う


「優しいのね裕也。でもこれからはそんな余裕ないのよ?」

「それは先ほども五葉の方から言われました。今日だけです」

「そう、なら良いの今日のうちに魔力を使い切っておきなさい」

「はいそのつもりです。」


とは言うものの何で魔力を使おうかしら手段自体はいくらでもあるけど念のために俊にメールを送っておこう


宛先:小山俊

件名:

本文:今日、走る?


と送信。送信が完了しました。

で、どうしようか走るってなったら魔力残しておかないと勿体無いし


養子の身だし晩ご飯作るの手伝おうかな


私は台所に行って清花さんに言った。


「清花さんたまには晩ご、、」

「大丈夫」


即答だった


「いやでも養子の身だしたまには、、」

「ゆっくりしてなさい」


即答だった


「きょ、、」

「なにも触らないで」

「は、はい、、」


見事にあしらわれてしまった。すると部屋から五葉が出てきた。


「何やってるの?兄さん」

「晩ご飯手伝おうと思ったんだけど、、遇らわれちゃって」


五葉は察した顔をして


「そりゃそうだよ。だって兄さん女性化してても料理は、、、」

「でも魔法さえあればなんでもありじゃん」

「その言い方やめようね。」


全く私はこの家では何も出来てない。実家でも何かしてたわけじゃないけど

何か役に立てることがしたい


「あとお母様の場合魔法がどうこうって問題じゃないと思うよ?手作りの物は手作りで出したいって言うのがあるんじゃないかな?我が強い人だし」


確かにそれは思う。清花さんが作るご飯は絶対に1人で作った料理だったし


「五葉?裕也とお風呂にでも入って来なさい」


台所からとんでもないセリフが聴こえてきた


「お母様!?いまなんて!?」


五葉の方から答えが帰ってきた。


「お風呂に裕也と入って来なさい」


さらにドスの効いた声で清花さんが言う。


「いやあの私は別にいいよ?兄さん今女の子だし女性化状態の時のことも知ってるし」


そう両性巫女全員がそうだが女性化状態の時の両性巫女は心身共に完全に女性となるので一部の例外を除いて女性への関心はなくなる完全な女となる。

ので変な気を起こす事はこの姿ではない

ただこれの影響なのか両性巫女は男性の状態でも一般男性よりも性欲が劣る事が実験でも証明されているらしい。

といっても両性巫女自体数が少ないので根拠に説得力が無いのだが何となく自覚する事はある。


「じゃあしょうがない。入ろっか五葉。」


五葉は顔を赤くして答える


「う、うん」


その前に私は部屋に着替えとスマートフォンを取りに行った。


「兄さん、先入るね。」

「わかった」


返信来てるかな

ー通知1件

お、来てる来てる


宛先: 四宮裕也

件名:

本文: 四宮が行くんなら行くけど?なにかあった?


返信しておこう


宛先: 小山俊

件名:

本文: なら今日行こう。女性化戻らなくなった。


で送信。 送信が完了しました。

よしよしこれでとりあえず明日は男の姿で登校できそう。

ピロン♪

おっ。返信早いな


宛先: 四宮裕也

件名:

本文: なるほど協力しよう


最後に「助かる」とだけ返信して風呂場に向かった


「おまたせ。五葉」

「うん、兄さん」


沈黙が続く。落ち着かない

すると五葉から口を開いた。


「なんか女の子に向かって兄さんっておかしいよね?」

「うん、まあそうよね」

「だからさ、女性化してる時だけ姉さんでもいい?」


それはちょっと違う


「うーん姉さんは嫌かな。なんかヤンキーみたいだし」

「四葉お姉ちゃんにそう呼んでるじゃん、、じゃあ裕也お姉ちゃん?」


それも変だよ。稀にゆうやって名前の女の子居るけど本当に稀だけど


「めんどくさいからお姉ちゃんでいいよ」

「それ四葉お姉ちゃんと被っちゃうじゃん」

「被れば良いんじゃないかな」

「もう裕也さんでいいよ。」

「ならそうして」


そういえば実家にも五葉と同い年の妹がいるんだよね。

夢弥。元気かな


「裕也さん。これからどうやって魔力消費するの?」


五葉が質問をしてきた。私を心配してくれてるのかな。


「夕ご飯食べたら車を走らせて来る。」

「そういえば、たまに夜遅くに車でどっか行ってるよね?」

「まあね。」

「私も行っちゃダメ?」


五葉が上目遣いをしながら聞いてくる

湯船でブクブクもし始めた


「行ってみたいの?」


五葉は無言で頷く


「いいよ。一緒に行こうか。」


五葉は笑顔になった


「ありがとう兄さん!」

「さ、そろそろ出ようか五葉」

「あ、うん」


2人で脱衣所に出た。


「あれ?兄さん女物の服?」


私は部屋から女物の服を持って来ていた。


「うん、こういう時のために持ってるの」

「なんか女装趣味の人みたい」

「実際似たような物でしょ」


女装じゃなくて女性化だけどね何もかも女性になってるけどね

ピロン♪

私のスマートフォンの通知音がなった。


宛先: 四宮裕也

件名:

本文: で?今どうなってんの?


何これはこの場で撮った写真を送れってこと?

ではカメラを自撮りモードにセットしてパシャ


「何してるの、兄さん!?」

「メール」

「じゃなくてパシャってなに!?」

「写メ写メ♪ 」

「今の角度、私写ってたよね?」

「うん」

「誰に送ったの?」

「車友達」

「男の人?」

「うん」

「兄さん殺す!絶対殺す!」

五葉が突然発狂し始めたので頭の中で今の状況を整理する。あ、、

「五葉、ごめんごめん両性巫女の車友達だから安心して!」

「え?そうなの?、、、でも許せない!」

「本当にごめん五葉」


ピロン♪

宛先:四宮裕也

件名:

本文: お前、男でも女でも鈍感バカだな


鈍感あんま関係ないでしょ


2人で脱衣所を出ると丁度四葉姉さんが帰って来た。


「お帰り姉さん。」


一瞬誰?みたいな顔をしてちょっとして気づいたようだった


「裕也くんどうしちゃったの?」

「五葉に今日一日のお礼」

「女性化が?」


ちょっと引きながら言う姉さん


「違うわよ。魔力回復してあげたの。で男に戻れなかった。」

「また?毎回のように戻れないよね?」

「たまには戻ってるわよ」

「戻ってる方が少ないでしょ?」

「うぅ、、、」


そう女性化からたまにも戻れなくなると言っていたのだが実はほとんど戻れず魔力が尽きるのを待つ方法を取る方が圧倒的に多かった。


理由はよく分かってはいないがおそらく魔法の使い方による癖だと言われている。だから戻れる事もあるがほとんど戻れない。ごく稀に術式が偶然当たった時にだけ戻れるらしい。


なら変わるまで魔力を込めればいいと思われるかもしれないけどそんなに簡単ではない特に女性化から男性化その逆もしかりいわゆる性転換魔法は女性は使えない男性にだけできる魔法ということもありかなりややこしい術式らしい


それを一つでも外れた術を打ち込むと失敗になる。


そしてこれはあくまで憶測の話しだが3回程度似ている術式を打ち込むと1日から14日間ほど似た術式を打ち込んでも何も起こらなくなると思われるという非常に曖昧な憶測もある。


スマートフォンでパスワードを何回か失敗すると何分間かログイン出来なくなるあれにとても似ている。


「何回、術式打ったの?」

四葉姉さんが聞いてきた。

「3回やったよ一応ね。」

「って事は魔力が尽きるのを待つしかないのね。明日の学校どうするの?」

「それは大丈夫。寝る前に魔力を全部使うつもり」


四葉姉さんはため息をつきながら


「これからこんな余裕はないのよ?自覚しなさい」

「さっき2人にも言われた。」

「そうでしょうね」


台所の方から段々と美味しそうな匂いが立ち込めて来た。

この匂いはハンバーグかな?


「清花さん、ハンバーグですか?」


私は台所に顔を覗かせて清花さんに話しかけた。


「そうよ。入学式だったけどあまり豪華じゃなくてごめんなさいね。」


ハンバーグで豪華じゃないってどんな金持ちですかって思うけど実際には四宮家はそれなりに大規模な巫女組織だからその頭首である清花さんが金持ちじゃないわけがないんだけど


「さ、裕也ここからは手伝いなさい。魔法で良いから運びなさい。」


どうやら料理自体は出来たらしい。都合の良すぎるおねだりだ。


「はい、じゃ運びますね。」


物体移動の魔法で盛り付けされた料理たちが食卓まで運ばれる


物体移動の魔法自体は男性状態の両性巫女でもできるただその精度に関しては女性化状態よりは圧倒的に劣るが魔法を持たない一般人よりは役に立つというなんとも微妙な立ち位置である男性状態の両性巫女


そんな両性巫女の大体の就職先は軍人だったり自衛隊である射撃おいては男性状態でも9割は命中人並みを外れているそういう両性巫女は大体最前線に置かれるので死亡率も高い。


今日これから会いに行く。「小山俊」はそんな両性巫女の中でも珍しくごく普通の中古車販売店をやっているらしい私の車も彼のお店で買った。


今まで会ったどの両性巫女からも聞いた話だけどやはり実家や本家では残酷な扱いを受けていたらしい中には実の親を殺そうとして捕まった両性巫女なんかもいる。


世間からは両性巫女はあまりよく見られていない「犯罪者予備軍の種族」と言われることもある今唯一関わりのある両性巫女の小山俊も普段は魔法で髪の色を黒に見せて仕事が終わった後はほぼ髪の毛ピンク色の状態で家に帰るらしい。


両性巫女っていうのはこんな具合に肩身が狭い存在なのだ


「では、頂きましょうか」


清花さんの声で私含めた3人が手を合わせて


「いただきます」


ごく普通の一般家庭の食卓だ。私も両性巫女じゃなかったら実の家族とこんな風に食卓を囲んだのかな?

実家では妹くらいしか一緒にご飯を食べた事はなかったような気がする。


妹は両性巫女である俺を全く軽蔑せず優しく元気に接してくれた唯一の肉身だ。


名前は 大川(おおかわ) 夢弥(ゆめや) 実家の大川家の次女で母親である 大川(おおかわ) 沙弥(さや)が産んだ2人目の巫女だ。


大川家という巫女の組織は大きく祖母の世代に姉妹が12人母親の世代に15人そこから血の繋がった親戚巫女が膨れ上がり今は120人〜150人という規模にまで大川家は膨れ上がっている。


おそらく巫女の組織の中では1、2を争う規模だろう。


そしてあろうことかそれだけの数の血筋のなかで両性巫女が産まれたのはこの私 大川 裕也 たった1人という世間だけではなく家庭内での肩身も狭い私だった。


「あの、私ご飯食べたらちょっと車で出かけるから」


私が報告すると五葉の方が続けて言った。


「私も、今日は兄さんについて行くから」

「そう。2人共気をつけて行ってらっしゃい」


清花さんはすでにわかっていたように言った。

すると四葉姉さんが少し心配そうな顔をして続けてきた。


「魔力消費しに行くの?」

「うん、大丈夫心配しないで魔力のなくなる前に帰るから。」

「わかってるけどちょっと心配だよ」


姉さんが心配したくなるのはよくわかる。

以前同じ事をした時私は幸い停車している時だったが魔力を使い切って車の中で1日意識を失っていた事があるからだ。


「大丈夫だよ。お姉ちゃんそういう事もあるだろうからって思って私が付いていくんだから。」


五葉が姉さんに念を押していた。


「うん、お願いね五葉ちゃん。」


そんな会話もありながら夕ご飯が終わった。


「ご馳走さま。清花さんのご飯はやっぱり美味しい!いつもありがとうございます。」

「お粗末さま。良いのよ私は母親なんだから」

「私は実のお母さんだとしてもこんな美味しい料理出されたらお礼を言いますよ。」


まあ私、実の母親のご飯食べたの多分1、2歳のときだから実質食べた事ないのも同然なんだけど

私は立ち上がって感謝を伝えようと思った


「さて、お皿洗いますよ。私、出るのにまだ少し早いですし」


清花さんは呆れ笑いで答えてくれた


「じゃあ、お願い」


さてさて了承ももらった事だし恩返ししますか

五葉が手伝うと言ってきたが私は「たまにはやらせて」と言ったら

優しい笑顔で了解してくれた。


そんなこんなで食器洗いも終わり。車で出る準備をして部屋を出て五葉を呼ぼうとすると


「兄さんもう行く?」


五葉が自分の部屋から顔を出して言ってきた。


「うん、ちょうど呼ぼうと思ってたとこ」


そして2人で家を出て車に乗り込んだ。

鍵を回してエンジンをかける


キュルキュルブオーン!ボー


「今日も快音ねリンテちゃん」

「兄さん今なんて?」


五葉が驚いた顔で私を見ていた。


「リンテちゃん?」

「なにそれ」

「この車の名前よ。ホノダのリンテグラだからリンテちゃん」

「よくわからない」


五葉は呆れたような顔をしていた。でも私は気にしない


「さあ行くわよ!リンテちゃん!」


ブオーン!ブオーン!ボーっボーン


「ところで兄さんどこに行くの?」

「いつも走ってるところよ」

「場所を聞いてるんだけど」

「えっとね、東京と神奈川の境目らへんある峠道よ」

「ふーん、他にも来る人とかいるの?」

「同じ両性巫女の車友達を呼んでるわ」

「あーさっき言ってた人ね」


私は車を走らせた。

そんなこんなで1時間弱一般道を走らせて自動販売機のある大きめの路肩に車を止めた。


「意外と遠いんだね兄さん」

「まあちょっとね。でもここ結構楽しいんだよ?」


五葉は何が?と言ったような顔をしていた。


ブーンブーン!


「あ、来た来た」


車から髪の毛がほぼピンク色になった若い男性が降りてきた


「よっ、待たせたな四宮」

「今さっき来たところよ」

「あれ?その隣の子は?巫女か?」

「ああ、紹介するよ。四宮家の五女の巫女 四宮五葉。さあ五葉挨拶して」

「あ、えっと四宮五葉です。よろしくお願いします」

「ああよろしく。俺は見ての通り両性巫女の小山俊っていう。まあ裕也とは車仲間ってところか?」


俊は自分の頭を指差しながら五葉に自己紹介をした


「今日も魔力使ってるわね。俊」

「ま、仕方ねえだろ。お客さんに両性巫女ってバレたらちょっと面倒だしな。それよりお前は何で毎回女性化から戻れないんだ?」

「毎回じゃないわよ。戻ってる時もあるじゃない?」

「いーや、俺がそれを見たのはたった1回だけだ。やり方教えてやったのにって言っても魔法の使い方の癖は仕方ないんだけどな」

「じゃ、今日よろしく頼むわね。」

「おうよ、早速だが俺の車にハイオク満タン入れてくれ」

「了解!」


私は俊の車に近づいて給油口に魔力を込めた。

ちなみに魔法でどうやってガソリンを生み出すのかというとガソリンスタンドから取っているわけではない。それをすると普通に窃盗罪となる。


なので世界中はたまた宇宙中にある物質を使いガソリンの元となるものを魔法で合成し車のガソリンタンクに入れていくという以外と小難しい魔法で行なっている。

しかし小難しいから魔力消費が多いのかというとそうではなくむしろ魔力消費は少ない。


「はい、ハイオク満タン」

「サンキュー、あとブレーキフルードとミッションオイルも交換してくれ」

「はいはい」

「結構難しい術式みたいですけど魔力消費は少ないんですね」


五葉が俊に話しかけていた。


「さすが本物の巫女!わかってるじゃん。そう結局は現実にあるものを作り出しているだけだからな」

「はい、ブレーキフルードとミッションオイルも終わったよ。」

「おう、じゃあ早速行くか。」

「ちょっと待って。私のリンテにもガソリンとオイル系やりたいから」

「おっけー、待つよ」

「ちなみに俊さん。行くってどこに行くんですか?」

「あれ四宮から聞いてねえの?」

「はい、、」

「まあ、楽しみにしてな。多分楽しいぜ?特にあいつの隣の席はな。本当は俺が乗りたいくらいさ。」


俊はやたら嬉しそうに五葉に話す。

私も自分の車への魔法をかけ終えた


「じゃあ、行きましょうか俊。」

「おうよ、こっからは魔法は無しだぜ?」

「上等よ私のリンテについて来れるかしら?」

「上等だぜコラ、俺のミビックを舐めんな」


私たちは車に乗り込んだ。

そして止まっていた所から少し奥まで走り。私のリンテを先頭にして後ろの俊のミビックに合図を出した。


「行くわよ!リンテR!」


ブオオーン!パァァァァァァン!パァァァァン!


「行くぜミビック!」


ンパァァァァァァァン!パァァァァン!


最初の加速では兄さんのリンテグラが俊さんのミビックを離した

でもすぐに道がカーブに入る、これ曲がれるの兄さん!?

そして兄さんは急ブレーキをかけギアを変えてカーブを抜けたその間に俊さんの車が兄さんの車のすぐ真後ろについていた。


「さすがねミビック。でもここから先はリンテの独壇場のコーナーの連続よ!」


なにこれ、兄さんすごく楽しそう。スピードは凄く速いのに全然怖くない。

兄さんってもしかしてすごく運転が上手?

そう思って私は後ろを振り向いた。俊さんの車がいない


「兄さん!俊さん来ないよ!?」

「ぶっち切りよ!」

「意味わかんないよ兄さん!」


そして兄さんはそのまま走り続け少し広くなっている路肩に車を止めて降りた


「兄さん。これ凄く楽しいね!」


私は素直にそう思った。この世の中色んな遊びがあるんだと思った。


「良かったわ、五葉には楽しんで貰えたみたいで人によっては怖いっていう人が居るから。」

「スピードは凄く速かったけど。それ以上に安心できて凄い楽しかったよ兄さん!」

「そっか」

「兄さんの車がリンテグラなのはわかったけど。俊さんの車は何て言うの?リンテグラと同じ赤いバッジ付けてたよね?」

「俊の車はミビック、リンテと同じホノダっていうメーカーの車よ」


私はすごく車に興味が湧いた。そういえばお母様もなんか高そうなスポーツカーぽいの乗ってたような。


「そういえばお母様もスポーツカー持ってなかったっけ?」

「ああ、清花さんが乗ってるのは外車だよリェラーリ(レラーリ)のL430っていう車めちゃくちゃ高いよ」


そう話していると俊さんのミビックが来た。

ブオーンブオーン!


「おいおい四宮速えよ!お前2人乗りでも関係無しだな!こっちのが車重軽いのによ!」

「まあこれが1600ccと1800ccと腕の違いかしらね!」

「うあー嫌なヤロー!もう一本だ!」

「じゃあ前後入れ替えね」

「バンパー突くんじゃねえぞ?」


どうやらもう一本行くみたいだったので私はまた兄さんの車に乗った。


「あれ?次は俊さん先頭?」

「うん、見ていなさい五葉。格の違いって言うのはこういう事を言うのよ。」


兄さん完全に性格変わってる居るんだ本当に車に乗ると性格の変わる人


「さあ行くわよ!リンテR!」


先ほどの道の逆走でまた始まった。後ろから見たらどんな感じなんだろ?

ブーン!パァァァァァァン!パァァァァン!

にしてもスゴいエンジンの音まるで本物のレースをしてる車みたい

っていうか兄さん!?すごい俊さんの車と近くない!?ぶつからない!?


「ふふっ甘いは俊!そんなツッコミじゃ私とリンテをぶっち切るのなんて100億年早いわ!」

「兄さんキャラ変わってる!」

「見てなさい五葉!これが本物のオーバーテイクよ!」

「オーバーテイク??」


すると兄さんの車は一旦前との間隔を空けてカーブの途中から真っ直ぐと加速していった。

パァァァァァァン!

抜ける!俊さんの車を!これがオーバーテイク?


そして兄さんの車は俊さんの車を追い越して走り続けた

そしてまた後ろから俊さんの車が見えなくなり元の自動販売機のあるところまで戻った。

そして私は本来の目的を思い出して兄さんの髪の毛を見た。


「兄さん?結構魔力使ってるね。走ってる時は魔法禁止じゃなかった?」

「いや、両性巫女の場合女性化状態の時は体力の消費も魔力消費になるのよ」

「あ、そういえばそうだったね。にしても俊さん遅いね。」

「タバコ吸って待ってようか」


そうして私と兄さんは車を降りて兄さんが自動販売機で飲み物を買ってタバコに火をつけて吸っていた。


「はい、五葉。お茶で良かった?」

「うん、ありがとう兄さん!」


ブオーンブオーン!


俊さんが来たようだ。


「クソッタレ!速えーよ四宮リンテ!」


俊さんも車を降りてタバコを吸っていた。

2人はすごく楽しそうに車話をしていた。いいな、こんなに趣味を共有できる仲間が居るのって、お母様もあんな車に乗ってるしそういう友達居たりするのかな?


車か。私も免許取って早く運転したいな。


「そいえばお前そろそろ魔力尽きそうだな早めに帰った方が良いんじゃねえか?」

「うん、そうね。また連絡するわ!俊。」

「おう!いつでも待ってるぜ!サーキットもまた誘うからよ!」

「ありがと。じゃあまた」

「おう!またな!五葉ちゃんもまた会おうぜ!」

「はい!また兄さんに連れてきてもらいます。」


こうして私たちは俊と別れ帰ることにした。


「兄さん、私も車欲しくなっちゃった。」

「良かったわ、楽しんで貰えたみたいで。どんな車が欲しいの?」

「うーん、兄さん達と同じのだと芸がなさそうだからお母様の車とか?」

「ええ!?リェラーリ?本当に!?」

「うんちょっとお母様に相談してみよう。」

「う、うん止めはしないわ」


そして帰宅


「お母様!ただいま戻りました!」

「あら、五葉。随分楽しかったみたいね」

「あの私も免許を取ったらお母様の車乗せてもらえませんか?」

「免許を取ったらって事は運転するって事?どっちの車?」


清花さんはすごい苦い顔をして五葉に聞いていた


「えっと赤い方のレラーリ?の方です!」


言っちゃったよ五葉!本当に言っちゃったわ!

清花さんなんて返すんだろ


「乗せるか!バカ娘!」


ですよねー。だってリェラーリですよレラーリ免許取り立ての子に乗らせるわけないわよね。


「あのね。五葉申し訳ないんだけどあの車はさすがに乗せられないわ新車で3000万円近く出して買ってるの。」

「ああ、それはすみませんでした。お母様あまりに失礼な事を」


以外と冷静なんだね五葉。


「良いのよ一つ返事で理解してくれて助かるわ五葉。」

「でも今日すごく楽しくて私も早く車に乗りたいと思ってですね。」

「ならアルバイトをしなさいまだ高校1年生なんだし3年もお金貯めれば良い車買えるわよ。」

「そうですか!なら私、アルバイト始めます!」

「うん、良いわよ。裕也も私の仕事を手伝ってあの車を買ったぐらいなんだから。あと、五葉の場合は裕也の護衛も仕事だから口座に貯めておいてあげるわ」


良い母親だな。清花さん


「で、裕也?あんたも隠れてないで出て来なさい」

「あ、すみません清花さん」


バレてたのか怖いわ。威圧感


「大分魔力使ってきたみたいね。」

「はい、あとは布団で飛行魔法の術式を打てば魔力不足で男に戻るはずです。」


すると私に急に眠気が襲ってきた。光が私を包み俺は男の姿に戻った


「あ、戻ったみたいね」

「良かったね!兄さん!」

「ああ、もう流石に眠いからもう寝ますね清花さん」

「ええ、裕也おやすみ。」

「おやすみ兄さん。部屋まで送るよ」

「ありがとう。五葉」


そして俺は五葉に部屋に連れられ布団に入ってすぐに眠ってしまった。


「おやすみ兄さん。今日はありがとね」

「あれ?五葉ちゃん。おかえり」


お姉ちゃんが兄さんの部屋に入ってきた。


「ただいま、お姉ちゃん」

「裕也くん寝ちゃった?」

「うん、魔力全部使ったからぐっすり。」

「そっか。五葉ちゃんも今日は疲れたでしょ?早く寝ちゃいなさい明日も学校なんだし。」

「うん、そうする。おやすみお姉ちゃん」

「おやすみ五葉ちゃん」


私とお姉ちゃんも自分の部屋に戻り眠りに就いた。

明日はどんな日になるかな。


1話「両性巫女の入学日」ー完ー


どうも!「両性巫女の高校生活」作者の小林歌子です♪

人生初めて小説を書いて見ました!結構大変なものなんですね汗

2話以降も執筆中ですので最後まで読んで頂けると幸いです♪

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