焼き芋屋さん
アライグマさんは洗い物が得意です。せっせとサツマイモを洗います。
「今年はサクラ芋の出来が良いらしい」
「いやいや、やっぱりナルト芋だよ」
「ウスムラサキって知ってるかい。甘くてしっとりしてるんだ」
川辺での情報交換も欠かせません。流通が発達して遠くで採れる芋も手に入るようになりましたが、川の流れは変わりません。澄み切った水の中で、ぽちゃんと魚が跳ねました。今日も良いお天気です。
洗い終わったら熱く焼いた石の上でじっくりと焼き上げます。じんわりと芋の中に火が通っていくのを見守るのも大切なお仕事です。
「やっきいも〜いしや〜きいも〜」
いつもの経路で家々をまわります。
「先週の美味しかったから同じのひとつ下さいな」
子リスを連れたお母さんリスが買いにきます。アライグマさんはお客さんの笑顔が大好きです。寒くても心がほんわり温まります。
「アライグマさん、また来てね〜」
子リスが手を振りながら叫びました。アライグマさんも笑顔で手を振り返しました。
子リスは焼き芋を楽しみに秋冬を過ごし、成長して都会で働くようになりました。
都会には焼き芋屋さんは回ってきません。
子リスはスーパーで焼き芋を見かけると、アライグマさんの焼き芋を思い出します。
いつかあの町へ。きっと。