第2ボス
「この落とし穴はずいぶんと深いですね。そこが見えないですよ......」
「やっぱりそこ気になるよね」
旅行も3日目、テンポよくダンジョンを攻略していき16階層に到着した。相変わらず底が見えないんだよねえ。4人で落とし穴をのぞき込むという、周りから見たら何ともシュールな絵面ができてしまった。
「ちょっと光の球を出して確認してみていいかしら?」
「いいんじゃないか、でも落ちないように気をつけてな?」
ミューエルが20センチほどの光の球を降ろしていく。10秒、20秒と降ろしていくが、やがて操れる距離の限界に来たのかふっと光の球が消えた。なるほど、ミューエルの実力で数十秒か......。なら深さはキロレベルになるよな。
「相当深いわね。そこが分からなかったわ」
「うーん、やっぱり何かありそうなんだよなあ。滅茶苦茶気になる」
「それならまずダンジョンを回ってその後にこの穴の中を調べてみるのはどうですか?」
「そうだな、まずは最下層まで行ってみるか」
ルナがいい案を出したので、少しだけ急ぎ足でダンジョンを攻略を開始することにする。みんなこの数カ月の間暇な時間を見つけて俺と訓練をしてきたので相当な速度でダンジョンを走り抜けることが出来る。
「あ! ミューちゃん魔法使ってますね!?」
20階層を下ってる時にミラが騒ぎ出す。あ、気づいたのか。ミューエルは18階層当たりまでは真面目に走っていたが、途中から突然閃いた顔をして浮遊していた。走るよりも慣れれば楽だしな飛んで移動するのは。
「いいじゃない、これも私の実力よ?」
「そうですけど! そんな事ばっかりしていると体にお肉が付いちゃいますよ!」
一瞬ミューエルがムッとするが、何かを思い出したのか勝ち誇ったような顔をする。おお、一体何を言うんだろ。少し気になるな。
「ミラちゃん、その攻撃は効かないわ! タクミ君って痩せてる女の子より少しむっちりしてる子の方が好みなのよ!」
「ほ、本当なんですかタクミさん!」
「うわ、飛び火してきた」
そういえばこの間そのようなことを言ってましたよ! とルナがさらに燃料を投下してくる。な、な、何を言っているんだルナよ! そんなこと言ったらミラがどうなるかなんてわかってるだろうが!
「落ち着けミラ、俺はみんな好きなんだぜ? そこに優劣なんてないだろ?」
「でもむっちりした方が好きなんですよね?」
そ、それは......、と目をそらした瞬間に飛びかかってきた。やっぱり来たよ! この時のミラって般若モードだからかなり怖いんだよ!! シャーっと言いながら手をブンブンしてくる。
「わっ、ちょっ、待って」
「タクミさん私よりもむっちりした女の子の方が好きなんですか!!」
「タクミ君はね、私と腕組みするときはいっつも顔が緩むのよ!」
「ミューエル! 何爆弾投下してるんだ!」
まったく、これ以上ミラの般若状態をさせとくのも嫌なのでここら辺で終わらせよう。決してミラの般若が怖いわけじゃないぞ、ああ違うとも。これはこのダンジョンの最下層にさっさと到着するためにやるのだ。ビビってるわけじゃないからな!
突っ込んでくるミラを残像で躱して抱きしめる。抱きしめてる間もダッシュは続いているからミスったらちょっと危なかったな。反省しながらも何とかミラを落ち着けさせる。
30階層に着くころにはミラも落ち着いてくれたのでささっと進んでいく。さあ、第二のボスは誰だ??
名前:ロックゴーレム
種族:ゴーレム
性別:――
年齢:――
Lv:55
HP:23500/23500
MP:50/50
力 :13500
防御:20000
速さ:90
器用:150
魔法
土魔法lv2
スキル
硬化lv3 剛腕lv2
称号
そうだなあ、第2ボスにしては強いな。それに、ステータスもなんか弱点のように調整されているしな。これならミラたちでもしっかり倒せる。
「今回は誰が行くの?」
「じゃあ今回は私が行きます!」
張り切った顔でミラが名乗り出る。うん、ミラなら簡単に倒せるだろうな。みんなも納得してミラを送り出す。3人の中ならミラが一番強いからな。それにあの胸の真ん中あたりで鈍く光ってるところ、多分あれ削ればもう弱点だろ? 俺ならあそこを魔法でちょちょいとやって1秒くらいで倒せそうだ。
「タクミ君、ミラちゃんならこのゴーレムどのくらいで倒せるのかしら」
「え? そうだな......。あそこが多分ゴーレムの核だろうし、3分もあれば倒せるんじゃないかな?」
そんなにも早くに!? と驚いている。まあそうだよな、ミラがちゃんと戦っているのを見ているのは俺くらいだしな。これくらいなら良い鍛錬になるだろう。
「ミラ、怪我だけはしないでね!」
「大丈夫です、これなら無傷で倒すのにいい練習になりそうです!」
行ってきます! と元気に駆け出していく。うん、駆け出しの速度も素晴らしいな。これならもっと早くに倒せそうだ。
的に反応したゴーレムの目が一瞬だけ鈍く輝き重たい腕を振り上げてミラを殴り飛ばそうとする。そのパンチを最小限の動きで躱すが、かなりの振動で少しだけバランスを崩す。0.5秒ほどよろめいたが浮いた足をしっかり地面につけてバランスをとる。
隙と見たのか、ゴーレムはもう片方の腕を上から振り下ろす。ミラもこの攻撃を食らったらヤバいと理解したのか、全力で横っ飛びをする。攻撃の5メートル程の場所で両手両足で着地する。
「お、そろそろ決まりそうだ」
俺が呟いた瞬間にミラが全身のばねを使って駆け出した。ゴーレムは両腕を地面にめり込ましているのでまだ数秒は上がりそうにない。その数秒を使って腕からゴーレムの胸に水魔法を発動した。あ、あれは俺が最初に教えた魔法だな。
「タクミ君あの魔法って......」
「うん、俺が教えた魔法。名前を付けるなら『ウォータージェット』かな」
まあ、名付けについてはテレビでやってた機械の名前なんだけどな。あれ凄いよね、切断できない物ないらしいじゃん? すごくない? どうでも良いことを考えている間にミラがゴーレムの装甲を貫通した。
ゴーレムは数秒の間もがくようなそぶりを見せて煙になって消えた。煙の中でゴトリと音がする。煙が落ち着いた後に音がした場所を見ると、赤い球体がドロップした。あいつの核か? ミラがドロップ品をもってこちらに戻って来る。
「少しよろめいちゃいましたけど何とか勝てました!」
「動き出しもよかったし、あの水魔法も前よりも出る所もかなり狭められてる。これならあと少しでマスター出来るな!」
頑張ります! と尻尾をフリフリしながらふにゃっとした笑顔を見せる。か、可愛い! あまりの可愛さに撫でまわしてしまった。
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