下見
「さあて、いっちょ下見にでも行くかな」
みんなが寝静まった頃に静かにベッドから降りて出掛けようの服装に着替える。先に探索してどこに罠があるかとか予め知ってないと楽しくダンジョン旅行ができないからね!
極力物音をたてない様に靴を履き、小声で行ってきますと一言残し昨日進んだ場所へ転移する。外は真夜中だってのに相変わらずダンジョンの中は昼間のように明るい。
「昼間より冒険者がいるな」
人がいない時間を狙っているのだろうか、日が出ている時間よりも視界に入る冒険者の数が多い。しかし昼間と決定的に違うのはほとんどの冒険者がパーティを組んでおり、周りの魔物に目も向けずに下の階層を目指している点だ。
少し大きめの荷物を1人1つ、それとは別に何も入っていない大きな荷物袋をもっているところを見ると、一気に深くまで潜ってたくさんのドロップアイテムを回収する予定なのだろう。今回は攻略が目的ではないので他の冒険者パーティー同様に魔物を相手にしないでトラップや出現する魔物を調べながら超特急で降りていく。
「ん? なんだこの落とし穴、落とすだけにしては深すぎないか?」
現在16層、ボスのキングポイズンスライムを倒して草原ステージから岩場ステージに変わってすぐの場所だ。ここのダンジョンはどうやら15層ごとにボスモンスターを置いて、ボス部屋を抜けるとステージが丸々変わるようだ。
岩場ステージが始まってすぐのところに2メートル四方程度の少し大き目の落とし穴がある。ここに来るまでに落とし穴のトラップは4つほどあったがこんなに底の見えないような深さではなかった気がする。
「うーん、なんか怪しいな......」
試しに無限収納からいらないアイテムを放り投げる。通常なら1秒もかからずに物が地面に衝突した音なり水に着水した音なりが聞こえるはずなんだけど、数秒経っても一向に音が聞こえてこない。
「ここまで聞こえないと何百メートル単位の深さだよな」
これは今行くのはなんか良くない気がしたので、この落とし穴には何かあると脳内メモに書き込んで新ステージの魔物とトラップを調べていく。
16層からは草原ステージとは打って変わり周りが岩だらけ。草も全く生えておらず、地面はカッチカチの土だ。この固さは足に負担が来そうだな、このステージは草原ステージよりも休憩を増やした方がいいかもな。
周りは岩山がたくさんあり、ここよりもさらに右側に歩いていくと、下の方は崖のようになっている。そこをゆっくり覗くとたくさんの岩がそちらに落ちていったのだろう事が窺える。その時に岩々の隙間から冒険者の装備品とみられる鎧や剣が見えるが、手を合わせて見なかったことにする。ここは気を付けて進ませないとな......。
「うを、落石か」
自分の数十メートル先を2メートル近い大きさの岩がゴロゴロと大きな音を立てて転がっていく。転がって行った岩は勢いを保ったまま崖に向かって落ちていく。こ。怖ええ......。ここに来た時は上の警戒も怠らない様にしよう。
数分ほど歩くと、このステージ初の魔物に出会った。
「岩のスライムと、あれは......亀、か?」
さっそく鑑定をして詳細を確認する。
名前:ロックスライム
種族:スライム
性別:――
年齢:――
Lv:29
HP:2150/2150
MP:520/520
力 :118
防御:1878
速さ:80
器用:758
魔法
土魔法lv3
スキル
硬化lv3
称号
名前:ロックタートル
種族:ロックタートル
性別:――
年齢:――
Lv:44
HP:3855/3855
MP:11/11
力 :3500
防御:6200
速さ:2507
器用:328
魔法
スキル
突撃lv2 硬化lv4 滞空lv5 回転lv2
称号
ふむ、キングポイズンスライムのレベルが39だったから次のステージ的にはまあ適正くらいなのかな? 攻撃パターンも知りたいのでこちらから攻撃は行わずに無効化スキルだけオンにして観察する。
まず動き出したのはロックスライムだ。土魔法を唱えたのか空中に岩の塊が形成されていく。5秒ほどで射出準備が完了してこちらめがけて100キロほどのスピードで飛ばしてくる。岩塊が直撃する直前にロックタートルが空中浮遊をしながら高速で回転し始める。あれが滞空と回転のスキルかな。
土魔法をスキルで打ち消してから2秒ほど後にロックタートルが高速回転を維持しながらこちらに向ってくる。俺との距離が10メートルほどになった瞬間に突然加速しだした。なるほど、あれが突進か。
「うん、ロックスライムの魔法よりも速いな。スキル使用前が120キロくらいで、使ってからが170キロくらいか......。防御系のスキルかタンク系のタイプじゃないと防いでもダメージが来るな」
この突撃も魔法と同様に無効化されてロックタートルは数メートルほど吹っ飛ばされる。数秒の間飛ばされていたが、滞空の効果時間が切れたのかドシンと地面に着地する。滞空時間は約30秒前後か、かなり滞空できるんだな。
「攻撃パターンはこんなものか」
その後も数分間攻撃を観察していたが、ロックスライムが攻撃している間にロックタートルが回転しながら突撃してくるのパターンしかなく、ロックタートルが空中回転か、地上を転がりながらの突進しかなかったので、土属性魔法を使い地面で敵をサンドするように盛り上がらせる。
「地面が敵を喰う感じだから、地喰らいみたいな?」
技名を付けてみたが恥ずかしくなったので忘れることにした。その後もロックタートルがいきなり襲って来たりしてきたが、ここもあまり魔物に遭遇しなかった。先に行った冒険者たちが根こそぎ狩って行ったのかと思い、ここの階層で危険な足場や崩れそうな場所を記憶して家に帰る。
もう4時過ぎであまり寝れそうにないが一応睡眠をとるために体を綺麗にして空きスペースを探すが3人に占領されていた。
「久しぶりにウォーターベッドで寝るか......」
前に作ったのと同じ要領で作成して横になる。好きに形を変える事ができるのが魔法ベッドのいいところだよなあ。
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