観光気分
「昨日はお楽しみだったわね」
「いや、してないから!」
ケツに刺さる視線を無視をして、ダンジョンがある帝都に向かう。今から出れば夕方には帝都に着く。昨日で馬車生活は終わりだと思ったんだけどな......。
「あ、タクミさん、帝都が見えてきました!」
「zzz......! なに? 着いたの?」
爆睡してたぜ。ミューエルが膝枕してくれてなあ。最高の心地だった......。やわらかいし良い匂いだし。これを地球で味わうには諭吉が軽く数十枚ぶっ飛ぶレベルのサービスだ。至福の太ももから離れて馬車から身を乗り出して確認する。おお、あれが帝都か。なんかすごい賑わってそうだ。
帝都に入るための検問を1時間ほどかけて潜り抜けて、都内に入場する。おお! これは王都とはまた違った賑わいだな! みんな目が活き活きしてるし、冒険者がいっぱいいる。ダンジョンがあるとやっぱり違うな!
「さて、帝都に到着したわけだが、今日はとりあえず宿屋を決めるだけでいいでしょ?」
全会一致でそれでいいという意見だったので、ギルドで一番いい宿屋を聞いて、そこに向かう。おお、デカいな。気の星亭、一流ホテル感が伝わって来るね。ちゃちゃっとチェックインを済まして外に食事をとりに行く。ギルド付近に美味しい大衆料理屋があると聞いたのでそこへ向かう。
さすが夜になりかけてるだけはあるな。にぎわい始めてる。空いてる席に向かいボリュームのある品を数品頼む。たくさん頼みたいところだけど、この世界はメニュー見てもどれくらいの量が出てくるかわからないからな!
「はいよ!」
「うわ! これまた大盛りですね!」
「何言ってんだい! 兄ちゃんも冒険者だろ? 冒険者は体が資本、食って大きくならなくちゃね! 後これはおまけだよ!」
注文した料理が全部配られた後に山盛りの揚げ物がドン! と置かれる。こ、これは食べきれるかなあ......。と少し心配したがそれは杞憂に終わった。ミラとルナがもりもり食っていったので綺麗さっぱりなくなった。
「おお! 嬢ちゃんはよく食べるなあ! 嬢ちゃんの食べっぷりに乾杯だ!」
酔った冒険者たちが大森を平らげたミラたちを見てエールを並並についで乾杯していた。酔っぱらいは何でもありだな。ちょ、おい! 俺のコップにいろんな酒をぶち込むな!
「ガハハ! 兄ちゃん達また来いよ!」
終始ハイテンションなマッチョマンに見送られて食堂を出る。あ、マッチョがナイアガラの滝を創造しやがった! 俺以外は見てなかったので気分が悪くなったのは俺だけだ。
「美味しかったですね! あそこのお料理はまた食べたいです!」
「そうね、ボリュームはあったけど飽きない味付けだったし」
「ですね! また行きましょう!」
みんな元気だな。俺はかなり食べたし飲んだから歩くのが少し大変なんだけど! それに、最近は馬車移動でご無沙汰だし、今日一杯食ったから運動とか言いながら来そうだな。よし、お腹の中の酒と油物を頑張って消化しないとな!
はい、おはようございます。現場の佐々木です。昨日の夜ですね、部屋に戻ってすぐでした! 少しの間にゃんにゃんしてたら急にスイッチが入ったらしく食べられちゃいました。1人に4回、計12回の行為で体内の水分が足りていない状態です。気分は最高でした。現場からは以上です。
「はあ、虚し。水飲も......」
干からびた体に潤いを与えるために水をごくごくと飲みまくる。まったく、俺の嫁さんたちは底なしだぜ、このままだといずれ本当に干からびるんじゃないだろうかと変に心配してしまう。俺を干からびさせた嫁たちを見ると、まるで俺の精気を吸い取っているかのようにつやっつやで若々しく見える。まあ、今も十分すぎるほど若いけどね!
「ああ、お昼まで寝てたいけど今日はダンジョンに行こうって話してたんだった......」
頬をパチンと叩いて目を覚まさせる。早朝は混んでるだろうし、10時ごろにでも行こうかな。数階層くらいならすぐに行けるでしょ。
今が大体4時ごろなので8時くらいまでは寝ていよう。回復しきっていない精気を回復させるためにベッドの空いているスペースに丸まって眠る。痛った! ルナの寝相の悪さは相変わらずだな。ルナの踵を起こさない様にどかして眠る。
「さあ、やって来ました一番深いダンジョンカルサハ!」
ミラとルナはパチパチと拍手してくれるが、ミューエルは恥ずかしいのか小さくしかやってくれなかった。こればっかりは慣れないと仕方ないよな。
「ええ、今日はみんなで行くダンジョン一日目ですので観光の気分で行きましょう! ケガをしない様に足元には気を付けて、喉が乾いたら水分補給をこまめにするように。3階層、いければ5階層くらいまでを見ていきたいと思います」
では行こう! と完全に観光気分でダンジョンに入る。ここは、草原か? このダンジョンは階層ごとに別フィールドになるのかな? さあて、草原のフィールドで最初に出会う敵は何かなあ。周りに色々な冒険者がいるからもしかしたら1階層では出会えないかもなあ。
「空気がきれいですねえ」
「そういえばそうだな。ダンジョン内なのに不思議だな」
1時間ほどあの木の実は何かなとか、あの花がきれいとか話しながら次の階層の階段前までくる。やはり、敵には合わなかったな。
この階層でやることはもうないので足元に気を付けながら階段を下りていく。王都のダンジョンで進んでいるときに階段から滑り落ちた経験があるから気を付けるようにしているのだ。
2階層も草原フィールドだった。ってことは数階層毎に代わっていくのかなと考えて観光を再開する。30分ほど歩くと俺たちの前にカルサハ最初の魔物が現れた。
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