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新たな旅の始まり

「ってことはこの子たちって元から魔力操作で来たの?」

「はい、もともと魔法の素養が高かったらしく少し教えるだけで身に着けてくれました」


 魔法の素養が高いとコントロールも感覚的にできる物なのかな。魔法の事は専門的に習っていないからそんなものなのかなと思い深く考えるのをやめた。30分程、べスと会話を交わしながら訓練を見ていると、走り終わった者たちが続々帰ってきた。べスはどこからか出した名簿にサラサラ何かを書いて走り終えた者たちに水分を渡していた。


「あれ、あと1人いなかったか?」

「ああ、クレアですか。ヴィトゥン、クレアはどうした」


 ヴィトゥンは息を整えながらまだ終わっていないから走ってると端的に伝えた。結構差が出るものだなあ。さて、どの辺は知ってるのかちょっと見に行こうかな。


「べス、俺その子見に行ってくるわ」

「ありがとうございます」


 そういうとべスがこちらに近づきボソッと小声で一言注意してくる。


「教官、あのですね、私の後輩にまで手を出すのはできるだけ控えていただくと......」

「しないから! そんなことしたらミラ達に絞り殺されちまうよ」


 ちょっと見てくるわと伝え、防壁の上に転移する。探知系の魔法を使い防壁外の人間の反応を探ると少し遠くに反応があった。ん、ここって森方面じゃないか? 不思議に思いその近くに転移する。音を立てないように歩き、森の中でとどまっている反応の正体を後ろからのぞき込む。この子は確かべスの後輩の一人で間違いないな。こんな所で何してるのか気になるので話しかける。


「そんなところで何してるんだ?」

「え!? 誰!?」


 ガバッとこちらを向いてくる。うん、間違いなく後輩にした子だな。これで間違えてたらどうしたらいいか分からなかったわ。そのことを悟られないように真顔で話しかける。


「訓練中だろう、どうしたんだ?」

「あ、えと、休憩中で......」


休憩中か、なら仕方ないな。俺も部活の外周中にバレない様にサボった経験があるから何となくその気持ちがわかる。でも、なあ。それはお金を払ってもらってる時にやったらだめだよなあ。自分より年下の子に言うのも複雑な気持ちであるが致し方ない。


「休憩か、それは走り終わってからでもできるんじゃないか」

「で、でも」


 いや、わかるよ。その気持ちすごくわかる。わかるけど、ダメだよ。サボり癖がついていい仕事ではないからな、べスの仕事は下手したら命を落とすんだ。ここは心を鬼にして言わなきゃな。


「君だけだぞ、まだ走り終えていないのは。この時間にも他の人間たちはドンドンスキルアップしていくんだぞ、一人だけ置いていかれるのは辛いぞ」


 クレアは複雑な顔をしながら外壁の方に走り出していく。よし、これでひとまずは大丈夫だろう。べスの所に転移する。15分ほど訓練内容を見ているとクレアがこちらに戻ってきた。休憩もすぐに切り上げ、実践訓練に混ざる。偉いな、ちゃんと走って来たのか。


「これで全員だよな、べス」

「はい、これで全員そろいました。実践訓練の後は座学ですが観ていきますか?」


 道の整備もまだ終わってないから今日はいいやと伝え、実践訓練の終了と同時に道路整備に向かう。もう、休暇でも何でもないが気にしたら負けだろう。夕食まで整備を続け、王都までほとんどできた。あと半日もあれば完成するかな。夕食を食べながら今後の予定を考える。召喚までまだかなり日数があるし、どこか旅行にでも行こうかな?


 食後にミラ達を呼んで話をする。


「って感じなんだけど、どこかいい場所ないかな?」

「そうですねえ、なら帝国に行くのはどうでしょう? ダンジョンもあるし、美味しい料理もたくさんあるらしいですよ?」


 おおう、そういえばダンジョンもあるって前に聞いたな。それに美味い飯か、それは楽しみだなあ。よし! 次はそこに行くかな。


「ダンジョンに新しい飯か! いいねえ、そこに行きたいな! ルナ、ミューはどう?」


「私は賛成です! 新しいダンジョンに未知の料理、楽しみです」

「そうねえ、帝国の魔法技術も気になるし、やっぱり料理が楽しみよね。私も賛成だわ」

「私は元々賛成ですよ」


 ようし、全員の賛成も得られたことだ。明日にでも出発するかな。ミラ達には旅行で使う物を用意してもらって、その間にバドロンとべス達に旅行に出ることを伝えておく。


「分かりました。その間私たちはどうすればいいでしょうか」

「そうだなあ、べスには後輩の育成と並行して神聖国の動きを掴んでくれ。バドロン達はそうだな、バトラを徹底的に鍛え上げてもらおうかな。ガッツは庭のお手入れをよろしく。枯らさないようにな」


「「「分かりました」」」


 散開する前にべスには俺が作った道具の一つを渡しておく。


「タクミ様。これは?」

「これは俺が作った魔道具の一つ、通信機だ」


 通信機ですか、とべスは俺が作った魔道具をまじまじと見ている。まだ、最高傑作とは言えないが普通に使うなら問題ないはずだ。


通信機…未完成。指定された個体と魔力間でのみ発動する通信型魔道具。登録された魔力以外では反応しない。常に魔力を送り続けなくては通信ができず、数分の通信が限界。




「かなり魔力を使うから数分しかできないけど、どこでも俺と通信できる魔道具だ。魔力を登録するから、万が一盗まれても問題ない」

「ありがとうございます。これは諜報活動で相当使用できるものです! 重宝いたします」

 

 べスはその道具の有用性を瞬時に理解して興奮気味に会話をする。さすがべスだな、これがあれば情報を瞬時に伝えられるからな。べスの反応に満足する。


 居残り組に指示を出したし、べスに魔道具を渡せたから俺も準備を始めようかな。仕事部屋に行き、無限収納(インベントリ)に突っ込む。やっぱりこのスキル便利だわあ。取っておいて正解だった。


 準備も終わったので、ルンルン気分でミラたちの部屋に戻りイチャイチャする。やっぱりミラ達成分を注入しないと体がうまく機能しなくなっちゃったからな。さあて、明日から帝国旅行だ。ダンジョンに料理に魔道具、楽しみなことがいっぱいだな。


お疲れ様です。意見感想などありましたらいつでもお待ちしております。


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