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「レベリングどうでしたー?」
「開口一番に聞くことがそれ?」
カナコさんが半眼で私を見ながらため息を付きます。
え、なんでそんな反応ですか?
「丸一日も連絡なしに、一体何をしていたのか。適正なレベリングとやらは一体、どんなものだったのか。細大漏らさず、聞かせてもらう」
「うはあ。ご勘弁を。まだいろいろと処理している最中でして」
「んむ?」
「もうしばらくしたら片がつくので、それまで情報は伏せさせてもらえると嬉しいんですよ。あ、話せることは話しますよ? 初見の召喚獣のステータスのスクショとかで良ければ」
「…………仕方ない。それで手を打つ」
「ありがたや~」
ノマキさんが私たちのやり取りを呆れながら見ながら、
「なあ。なんでそんなファナはカナコに対して腰が低いんだ?」
触れてはならないところに直球をねじ込んできました。
「…………」
「…………」
気まずい空気を素早く察して、ノマキさんが「腹減ったから早く飯、行こうぜー」と言い出さなければ、どうなっていたことやら。
あー辛いというか重いというか。
憂鬱ですね、遠からずツヴァイとして十五年後のカナコさんとも会わなきゃならないようですし。
あーほんと、こればっかりはなんとか決着させたいけど、今となってはどうにもならないことですからね。
ゲームの外に出られないことを考えれば、ゲームをクリアした後に私以外の全員が消滅することを考えれば、何もしないのが一番なのです。
◆
やっぱりメオントゥルムの海産物は絶品ですね。
バフに関係なく美味しく食べられるというのは、私が日本人であるという証左のようです。
カナコさんは私が渡したスクショをせっせと掲示板にアップしながらカタカタと仮想キーボードを叩いています。
後で何を書かれているのかチェックしておいたほうが良さそうですね。
横目でカナコさんを見ていると、ノマキさんが私をつつきながら小声で問うてきました。
「なあなあ、ドラゴンメイジでレベルが圧倒的に高いのに、なんでカナコにあんなに下手に出るんだ?」
「あれ、それまだ気になります?」
「まあ直接、カナコの方には聞けない雰囲気だったから、ファナなら行けるかなーって」
「うーん。これに関しては私も迂闊に口に出せないことなんで、無理です。それよりどうでした、カナコさんとふたりでレベリング。カナコさんは口数が少ないですけど、雰囲気とか悪くなかったですかね?」
「あー私そういうの気にならないし。カナコは確かにあんま無駄なこと喋らないけど、必要なことはちゃんと言うしな。別に困ったことにはならなかったぞ」
「そうでしたか、それは良かったです」
「ふーん、良く分からん関係だな。……まあいいか」
どちらからも回答が得られない以上、ノマキさんはもう気にしないことにしたみたいです。
今回も短くてすみません。次回、合体回です。