2017年4月1日のエイプリルフール企画
慌てて書いた勢いが気に入ったので、こっちに転載しておきます。
またβテストの様子はこの短編を採用しますので、……いきなり波乱万丈だったんだなあこのゲーム。
この『幻想と召喚の絆』βテストは好評を博していました。
開始直後、初期の街アドリアンロットにはテストプレイヤー1万人がひしめいているのです。
まさに壮観!
私もテンション上がってきましたよー!?
仕事ではこのゲームの案件に関わらせてもらっていないので、是非上司には私も噛ませてもらえるよう交渉してみようと思います。
さて、このゲームは様々な召喚士になることができるという触れ込みのVRファンタジーMMORPGです。
数ある中でも目を引くのは、やはり何と言ってもネクロマンサーでしょう。
大抵のゲームでは敵専用クラス、もしくはプレイヤーが使えても中盤以降の上級職扱いですからね。
これがいきなり選択できるというのがまさに快挙、開発チームの素晴らしき英断に心より尊敬と賞賛の念をお送りします。
さて奇しくも今日は4月1日、エイプリルフールです。
そのためログインした後のチュートリアルが嘘っぱちを並べたて、公式ホームページの情報もデタラメだらけというカオスな状態で、果たしてこのゲームは一体、どういうゲームなのか全容が全く把握できない状況です。
まあそんなことはいいです。
瑣末な問題です。
ともかく、初期にネクロマンサーを選択できるという情報は今日発表の新情報ではないため、信用してネクロマンサーギルドを探してみましょう。
街のミニマップが既に嘘まみれなので、ぶっちゃけどこに何のギルドがあるのか探すところからスタートなんですけどね。
……これはちょっとやりすぎでしょう、運営さん。
◆
小学生の宝探しもかくやというほどの熱狂ぶりを呈しているここアドリアンロットの街では、ようやく各ギルドの場所がプレイヤーたちの努力によって掲示板にまとめられていました。
さすがの私もこの情報がなければ辿り着けなかったでしょう。
誰がこんなボロい建物にギルドが入居しているとか思うのでしょうか。
まあなにはともあれネクロマンサーギルドです。
さあ、なりますよーネクロ。
ギィ、と軋みを上げる扉を開くと、いるわいるわネクロマンサー志望のプレイヤーの行列。
そりゃそうですよ、ネクロマンサーですもの。
みんななりたいですよね、憧れの死霊使い。
私は「最後尾」と書かれた立て札を受け取り、行列に並びます。
すぐに私の後から来たひとに立て札を譲りましたが、あの立て札を受け渡すという行為すら楽しい気がしてきます。
真実、お祭り騒ぎなんですよねえ、今の状態は。
いやあ早く順番きませんかねー。
◆
【ネクロマンサーになりますか?】
イエス!
それ意外に選択肢はありませんよ!!
行列に並ぶこと小一時間、さすがに疲れました。
召喚スペースはインスタンスフロアであるため、こっちは並ぶ必要が無いのは救いでしょう。
召喚スペースというのはネクロマンサーに限らず、どこのギルドにもある施設だそうで、プレイヤー召喚士が召喚をするための魔法陣が設置されているらしいです。
そこで希望する召喚獣を選択し、召喚するのだーとチュートリアルは嘘こいてましたが、実際にはガチャ形式で自分で選べません。
運営、マジ運営。
というわけで召喚スペースを借りて、さっそく召喚してみます。
さあ何が出るかな?
いきなりレア召喚獣が出ちゃったりして!?
「召喚!」
チュートリアルによればここで如何に気合を込めるかで出る召喚獣の強さが変わるそうですよ。
はい、もちろん嘘に決まってますけど。
まあガチャに気合を込めるのは当然のことですから、叫ぶのは別に構いません。
誰も見てませんしね?
ずもももも……魔法陣から怪しげな煙が湧き出し、そこに立っていたのは……
【スケルトン・ソードマンを召喚しました】
ほほう、スケルトンですか。
なんとなくレアじゃなくノーマル召喚獣っぽいですが、まあいいでしょう。
私は無類のスケルトン好きですからね。
骨がカタカタ動いて戦う姿とか、可愛らしいじゃないですか、ねえ?
さっそく名前をつけてあげましょう。
何がいいかなー。
「よし、今日から君の名はムラマサだ」
「…………」
ムラマサはカタカタと顎を鳴らし、喜んでくれています。
気合は十分、さて街の外に出て早速、スケルトンの強さを確認しましょう!
◆
その後、装備のないムラマサが野犬に襲われ、私ごと死んで街の神殿で蘇生されるまで、そう時間はかかりませんでした。
チュートリアルには、召喚獣は自分にあった装備を持っているのでそのまま戦えるぞ! って書いてあったんですが、まさかそれすら嘘だったとは。
まったく脇が甘かったですね、反省しております。
「ごめんね、ムラマサ。痛い思いをさせて」
「…………」
「あ、でもスケルトンだから痛くないのかな。じゃあいっか」
「…………」
「よーし、今度はちゃんと装備を買って、野犬にリベンジですよー」
そんな、βテスト初日でした。