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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
森人族の少女とメオンの塔編
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 アドリアンロットの北の山を登った時はスノウ・ワイバーンなんてのと遭遇しましたが、メオントゥルムの南の山を下るときには特にそういうイベントもなく、スムーズに街に辿り着くことが出来ました。


 意外だったのは、街周辺の魔物がワイルドドッグやブルースネイクなどアドリアンロット周辺でお馴染みの雑魚だったことでしょうか。

 新しい街といえば「なぜそんな危険な魔物ばかりのところに街が!?」というのがRPGのお約束なのですが。


 なにはともあれ、メオントゥルムです。

 アドリアンロットにないギルドがあるという触れ込みでやってきたメオントゥルム、まずは情報収集からですね。

 いったいどんなギルドがあるのか。

 そして街の中心部にあるあの塔は一体何なのか。

 わたし、気になります!


「待ってファナ」


 カナコさんにガシっと両肩を掴まれました。


「何をするんですか、カナコさん。これから情報収集して新しいギルドを……」


「その前にメッセージで、エクレアたちに報告」


「あ、そんな約束してましたね」


 カナコさんが心底、蔑むような視線をくれました。

 すみません、友達がいのない私で。


『メオントゥルムに着きましたよ。これからアドリアンロットにないギルドについて情報収集してきますー』


 はい、これでよし、と。


 すぐにパカパカとメニュー画面に新しいメッセージが到着したことを告げるアイコンが灯りますが、ひとまず軽く目を通すだけにして行動開始です。


「どうしましょうか、手分けします? あ、その前に一応、お昼ごはんにしましょうか」


「む、ちょうどいい時間」


「いいねー。私、もうお腹ぺこぺこだよ!」


 NPCのノマキさんは食事が必要なので、ちゃんとお昼時に食事を取らなければなりません。

 門衛のオジサンに美味しいお店を聞いて、早速その料理屋に向かうことにしました。


     ◆


「ぷはー食った食った」


「ノマキ、食った、とか言わない」


「海が近いだけあって海産物が美味しかったですねー。今度また来ましょう」


 知力や精神のバフを目的にせずに、料理をまた食べようと思えたのは久々のことです。

 ウルシラさんちのキャロットパイ、宴席で見つけたクルミ、そしてメオントゥルムの海鮮丼。


 バフを考慮せずにまた食べたいものは数少ないですが、このゲームの中で暮らしていくなら美味しいものもやっぱり幾つかないと、寂しいですからね。

 街ごとにひとつかふたつあれば、ゲームがクリアされてプレイヤーがいなくなっても、退屈しのぎに美味しいもの巡りの旅などをするのもいいですね。


 情報収集については順調で、どうやらこの街にはアドリアンロットにないギルドが四つもあることが判明しました。


 まず一つ目は楽器を持った妖精を使役するフェアリーコンダクター。

 これは他のゲームでいうところのバード、吟遊詩人などに相当する妖精を召喚することができるようで、同時に使役する数が増すほどに音楽に深みが増していくのだとか。

 楽器を持たず歌を歌う妖精もいるらしいですよ。


 二つ目は装飾品や魔導書を召喚するセレブリティスカラー。

 直訳すると著名な学者、でしょうか。

 ソウルブリンガーの亜種のような職業で、アクセサリやスキルなしで魔法を発動することができる魔導書を召喚できるのがウリです。


 三つ目は動く植物を使役するガーデンドルイド。

 地を這うツタやら二足歩行のトレントなどを使役する正統派なファンタジー感のある職業ですね。


 最後の四つ目は天使を使役するセラフィムコーラー。

 これはもう名前と特性からして強そうですね。

 恐らくデビルサモナーと対になるような職業なのでしょうが、なぜアドリアンロットになかったのか不思議なくらいです。


 更に街の中心にある塔についても分かりました。


 あれはメオンの塔と呼ばれる施設で、全てのギルドを統括する総合ギルドがあるそうなのです。

 プレイヤーは遂にそこで、ユニオンという組織を結成することができるようになるのだとか。


 他のゲームでよくあるプレイヤーギルドやクランに相当するものですね。

 この『幻想と召喚の絆』ではユニオンという名前でプレイヤー同士のグループを作ることができる、と。


 恐らく正式サービス中はこのユニオンを用いて、ユニオン対抗戦イベントなどが開催されていたのだと思います。

 いまこのゲームの状況でそのようなイベントが開催されるかは不明ですが、ユニオンメンバー間でのみ共用できる掲示板機能などがあるそうなので、仲のいい友人同士で結成しておくのも悪くないかもしれません。

 もちろんメッセージ機能やフレンド機能で十分かもしれませんが……。

 必要か不要かは実際に塔に行って確かめるしかないでしょうね。


「さてカナコさんとノマキさんはそれぞれ第二職業を選びに行きますよね?」


「掲示板に情報を流してから、第二職業についてはゆっくり考える」


「私もちょっと迷うな~。インセクトクイーンと相性がいい職業ってのはなんなんだ?」


 ふたりは決めきれていないようですね。

 まあ、私も魔法の斧を持ったヨサクが作りたかっただけで、ソウルブリンガーを選択したので適切なアドバイスはできそうもありません。


「好みで選んでいいと思いますよ。今のところ、どの職業を組み合わせても弱くなることはなさそうですし。極端に相性の良い組み合せがあるとするなら、ネクロマンサーとソウルブリンガーはそうだと思ってますけどね」


「私は装備を鍛冶で用意できるから、人形を強くする組み合わせを探してみる」


「うーん。人型じゃないから装備とか関係ないんだよなー。そうなるとアニマルテイマーとかか? ちょっとこっちもギルドに行って情報収集してみるよ」


 ふたりは別行動となるようですね。

 じゃあ私は一足先にメオンの塔を見学してきましょうか。


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