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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
森人族の少女とメオンの塔編
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 その後は消化試合と言っても過言ではないでしょう。

 キングとナイトはレベル相応の強さを誇っていましたが、女王蜂を駆除した私たちの敵ではありません。


 途中で回復したMPにも余裕がありましたし、問題なくこちらも駆除。

 完勝ですね。


【クイーンビー“ピアッシング”シャルルセシルが討伐されました】

【イベント「ジャイアントビーの分蜂」をクリアしました】


 相変わらず、イベントの終わりだけをアナウンスするゲームですね。

 始まりの部分が明瞭でないから、カナコさんみたいに避けて通ろうなんて意見が出てくるのです。


 ……まあ、積極的に戦う選択をしなければクリアできない。

 そういうプレイヤーの自然発生的な意志を重視するところは、原口さんらしいゲームデザインですね。


【全プレイヤーへ通達:アドリアンロット北部山嶺地帯北西部が解放されました】


 うわあ、そういうのはいいですってば!


     ◆


「お疲れ様でした、ふたりとも」


「…………」

「…………」


 カナコさんとノマキさんの目が若干、死んでますが。

 君たちには楽な経験値稼ぎをさせてあげたと思うんですが、なんでそんな恨みがましい目でこっちを見ますかねえ?


「いやー経験値、うまうまでしたね。私レベルがふたつも上がっちゃいましたよ。ふたりも結構、稼げたでしょう?」


「……確かに。レベルはふたつあがった」


「……こっちも。でもさあ。やっぱ無茶はよくないよファナぁ」


 ふたりとも疲れきった声ですが、やっぱりレベルアップは嬉しいのでしょう。

 少しだけ笑顔も戻ってきましたね。


 しかし北西部が解放されたということは、あの無茶な数のハチの群れは出てこなくなるということですね。

 あれでナイト辺りが大量に出てくるなら女王蜂を放置してレベリングに活用できたのですが……戦闘終盤にならないと出てこない増援扱いじゃ期待できませんね。


 ……んー?

 なんか見落としている気がしますね。


 あ、分かった。

 分蜂ですよ。


 分蜂というのはつまり新しい女王蜂が巣立ったという意味で、つまりまだ先代の女王蜂が今も巣にいるはずです。

 さすがにハチの全戦力に喧嘩を売りに行くほど私も無謀ではありませんが、いずれレベルが上ったら挑戦してみたいですね。


 巣、まるごとハチ駆除。


 きっと楽しい死闘になりますよ?


     ◆


「じゃあ一旦、里に戻ろうか」


 ノマキさんがそんなことを言い出しました。


「え? このまま北西部を突っ切ってメオントゥルムへ行くのではないのですか?」


「……ファナ、先を急ぎすぎ」


 カナコさんが呆れ果てた様子で嘆息しました。


「いやでも、ここから里までも結構ありますよ。ミニマップで見ても、メオントゥルムは里と同じくらいの距離ですし」


「ううん? そう言われるとそうなんだけどさあ。さっきのジャイアント・ビーの群れが全部ってわけじゃないかもしれないじゃん。また何か危険があったらどうするのさ。私、もうへとへとだよ?」


 ノマキさんがへたり込もうとするのを、腕を取って立ち上がらせます。


「里を出たときの勢いはどこへ言ったんですか。ほら立って。行きますよー。カナコさんもいいですよね? 今更、後戻りなんて私、しませんからね」


「…………仕方ない」


 カナコさんはメニューをポチポチ弄りながら、とぼとぼ歩き出しました。


 多分、先程の戦闘の様子や全体アナウンスの件について掲示板に報告を書いているのでしょう。


 後で私も見せてもらいましょう。

 自分の視点と他人から見た視点とでは、結構、異なる点が多くて面白いんですよね。


     ◆


 グリズリーやジャイアント・ビーだけでなく、ジャイアントビー・ルークやジャイアントビー・ビショップ、ジャイアントビー・ナイトとも遭遇するようになったアドリアンロット北部山嶺地帯北西部を抜けると、遂にメオントゥルム南の山エリアに入りました。


 頂上から見下ろす景色はなかなかに爽快で、海に面したメオントゥルムの街並みが遠目に見ることが出来ます。


 中でも目を引くのは、街の中心部にある高い塔ですね。

 アレは一体、なんの施設なんでしょうか。

 イベントの予感がひしひししますよ。楽しみですね。


「あれがメオントゥルムかあ。遂に来たぞー!」


 ノマキさんのテンションもすっかり元通り、カナコさんもスクショを撮って掲示板に上げていることでしょう。

 さっきからせわしなくメニューを触っています。


 まあ私は景色とかに興味はないわけでもないですが、自分の目で見たこの光景で十分です。


 さあ、山を降りましょう!


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