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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
森人族の少女とメオンの塔編
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 ガチガチガチガチ。


 顎を激しく鳴らす女王蜂、クイーンビー“ピアッシング”シャルルセシル。


 この場合、クイーンビーが魔物としての名前で、“ピアッシング”はいわゆる二つ名、シャルルセシルが固有名称でしょう。

 ネームドクラスの魔物に出会うのはこれで二度目ですが、一度目が魔王アインスなのでなんとなく初めてという気がしますね。


 ヒュォっ!


 恐ろしく長い腕が槍のように突きを放ちます。


 ヨサク、ムラマサは難なく回避できますが、フジキがちょっと危なっかしいですね。


 即死を狙いに行くには接近しなければならないのですが、そんな余裕はなさそうです。

 敵はやたら巨体で、近づいてくることもないでしょうしね。


 パーティメンバーの入れ替えを行います。


 現在のパーティはスペクター・ウォーリアバロンのヨサク、スペクター・フェンサーのムラマサ、この二体はこのまま継続して戦闘してもらいましょう。

 何と言っても私のパーティの主力たちですからね。


 グリムリーパーのフジキは戦闘経験がまだ浅いため、パーティから外します。

 既にブレスを撃ったレッサードラゴン(水の吐息)も不要ですので、パーティから外します。


 スケルトン・バリスタのロビンは定期的にアーバレストを打ち込んでいくのでなかなか役に立っていますよ?

 女王蜂の脚剣の射程外からバスバスとクロスボウを撃っているので、相手からしたら堪ったものではないでしょう。


 さてパーティ枠がふたつも開いたので、追加戦力を投入しましょう。

 レイス・ソーサレスのマドカと、デュラハン・ドラゴンライダーのセルフィです。

 特にマドカはここまでMPを温存した形になっているため、全力で稼働してもらいますよ!


「まずマドカ、シャドウバインドを女王蜂に! ついでブラインド。それらの成否に関わらずスティールマインドを!」


「……シャドウ、バインド」


 巨体を影の腕が絡め取ります。しかし女王蜂の腕がエメラルドグリーンに輝くとともに、それらの影が引きちぎられました。


 ……もしやこれが魔法剣スキルですかねえ?


 正直、知らないスキルです。

 魔法剣なんてロマン溢れる名前ですが、プレイヤーが取得したという噂は聞きません。


「……ブラインド」


 途端に、女王蜂は狂乱したかのように脚剣を振り回し、周囲をしきりに気にしだしました。

 耐性がないのは把握していましたが、ボスのくせに盲目になってしまったようです。


「……スティール、マインド」


 黒いモヤが女王蜂からマドカへ吸い込まれます。

 こちらもどうやら上手くいきそうですね。


「よし、マドカはスティールマインドで敵のMPを奪い尽くせ! ヨサク、ムラマサは敵の剣の範囲外に一旦、退避!」


 滅茶苦茶に振るわれる脚剣を捌ききれず、何本かは被弾してしまっています。

 斬撃耐性を持つソウルブリンガー製の防具を装備しているスペクター組はボスの攻撃にも関わらず、そのHPは半分程度を残しています。

 心強いですね!


「リペア・アンデッド!」


 二体のダメージを回復してから、次なる命令を発します。

 おっと、その前にカナコさんとノマキさんは無事ですかね?


 どうやら順調にジャイアントビーにとどめを刺して回っているようです。

 よしよし、これならなんとかなりそうです。


「セルフィは騎竜召喚し、上空から女王蜂にブレスを吐いた後、できるだけ上空から攻撃に徹しろ。ヨサクとムラマサはブレスの後、地上から女王蜂を攻撃だ。私は敵に少し接近しておくので、マドカはブラインドが切れたら掛け直すように。かかれ!」


 ぶわり。


 腐臭を伴い、セルフィの足元からドラゴンゾンビが顕現し、地上を飛び立ちます。

 そして女王蜂を射程に入れたところで、


 ブゴオオオオオオォウ!!!!


 猛毒の吐息。

 黒みがかった紫色の猛毒が女王蜂に吹き付けられました。


「あ、がァ!?」


 お、喋れるんですか?

 未だにガチガチと顎を鳴らしていますが、苦悶の呻きが聞けるとは思いませんでした。

 ネームドですものね。名前の概念があるということは、他称ではなくしっかりとした自我を持ち会話もできるのでしょう。

 虫けらの癖に、その辺はファンタジーな魔物ですね。


 まあこの期に及んで会話などする気はありませんが。


 上空に向けて脚剣が二本、振るわれます。

 どんなに巨大でも昆虫の脚は六本。

 上に二本を向けるなら、地上に向けられるのは四本に減るのが道理。


 ヨサクとムラマサに命じた通り、その好機を逃す手はありません!


 まず軽快なムラマサが風をまとった脚剣をかいくぐり切り込みます。


 ズバんッ!!


 なんと脚剣を切り飛ばしましたよ、ムラマサ。

 おっと、敵の武器を削げるならば、支援をもっと掛けておくべきですね。


「アウェイク・パワー! インストラクト・スキル!」


 ソウルブリンガーの専用魔法の二重掛け。

 さてそうすると、ヨサクにも期待できそうです。こちらにも掛けておきましょう。


 同じ魔法を更に唱え……うわMPがやっぱり厳しいですね。

 MPポーションを一本、あおります。


 戦況は優勢ですが、セルフィの騎竜召喚の制限時間はたったの一分。


 おやおや、しかしどうせ一分で消えるのならばと、ドラゴンゾンビを敵の脚剣に晒しながら思いっきり上空から突撃かましてますよセルフィ。

 ナイス判断です!


 巨大なドラゴンゾンビの騎乗降下突撃……うわ、グシャリと敵の半身を破壊しましたよ!

 背中の羽根が千切れ飛んでくるくると回って、地面に突き刺さります。


「……スティール、マインド。…………ん」


 どうやら敵のMPが切れたようですね。

 黒いモヤが出てこなくなってしまいました。


 そして敵の脚剣の輝きも徐々に薄れていきます。

 どうやら魔法剣にもMPが必要だったようですね。これはラッキーですよ。


「よしマドカ、シャドウバインドを」


「……シャドウ、バインド」


 今度こそ決まりました。

 影の腕が女王蜂を絡め取り、その場に拘束します。


「マドカ、後は味方を巻き込まないようにファイヤアローやファイヤボール、ストーンボルトで支援です。使う魔法の判断は任せます。ただしシャドウバインドとブラインドの効果が切れたら掛け直せるようにそれぞれ最低一発ずつ撃てるようMPを残しておくように。ではかかれ」


「…………ファイヤ、アロー」


 少し迷った末に選んだのは、誘導性能のあるファイヤアローでした。

 ムラマサやヨサクの動きが大きく素早くなってきているため、味方を巻き込まないように、というのは最近は厳しい注文になりつつあります。


 今は上空からもセルフィが攻撃を加えいているため、狙える場所が少ないのも相まって難しそうです。


 どうせ持久戦ですから、ペースは遅くて良いんですよ。


 とはいえ敵のHPバーは既に三本目。

 セルフィの猛攻が功を奏したようで、敵はかなりボロボロになっています。


 ガチ、ガチ、ガチ……。


 そのとき、ようやく敵増援が現れました。

 ブンブンと大きな羽音をさせて、やってきたのはジャイアントビーより一回りも二回りも大きいハチと、それに率いられるやはりちょっと強そうなハチでした。


《ジャイアントビー・キング

 Lv35 顎牙6 麻痺針4 飛行 蜂兵誘引4》


《ジャイアントビー・ナイト

 Lv30 顎牙7 麻痺針2 飛行5 蜂兵誘引2》


 なるほど、まだキングとナイトは出てきてませんでしたね。

 これで敵戦力は出揃ったようなので、ここらで幕引きとしましょうか。


 私はボロボロになった女王蜂の目の前に立ち、騎竜召喚の効果が切れ掛かっているセルフィをパーティから外しました。

 そしてパーティに加入させるのは、レッサードラゴン(火の吐息)です。


 ……思ったんですが、これってやっぱり至近距離から放つほうが、威力があると思うんですよね。


 ブレスは距離が伸びるに従って拡散していくため、至近距離が最も密度が高いのは道理と言えましょう。

 よって……


「ヨサク、ムラマサ、一時退避! ――行け、ドラゴンブレス!」


 火の吐息が、轟音とともにクイーンビー“ピアッシング”シャルルセシルをHPバーもろとも吹き飛ばしました。


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