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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
森人族の少女とメオンの塔編
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 さてノマキさんの強さですが、カナコさんと似たり寄ったりでした。

 つまりレベルは10しかなく、護衛対象が増えたようなものです。


 ……と、当初は考えていたのですが。


「行け!」


 二体のジャイアント・ビーがグリズリーに襲いかかります。

 巨大な二体の蜂は鋭く迫ると、ブッスリと針を刺して離脱、そのままノマキさんの背後まで下がります。

 針はグリズリーに刺さったままですが、どうも毒があるらしく、グリズリーはかなり弱体化してしまいました。


 そこをノマキさんのジャイアント・アントとカナコさんの戦闘用ドール三体が襲いかかります。

 グリズリーに対して適正レベルとはいえ、未合体の召喚獣六体による連携攻撃。


 しかしながら毒による弱体化は激しく、更にはふたりの魔法の支援もあり、無事にふたりでグリズリーを一匹、討伐することができました。


 …………周囲に溢れていた他のグリズリーと蟻は全部、私が相手にしていたのですけどね。

 まあ二人がかりでもグリズリーが一体、任せられる程度の強さがあると思えば、なかなか悪くありません。


 しかし不安なのは、山岳地帯を北に進めば進むほど、敵の数が増えているような気がします。

 いや気のせいではありませんね、確実に増えているはずです。


 何と言っても先程のグリズリーは三体、更にジャイアントアントが八体の大盤振る舞い。

 しかも似たような戦闘は既にニ回目です。


 二度あることは三度ある、とも言いますし。

 少し対策を考えたほうがいいかもしれませんね。


 しかし悪いことばかりではありませんでした。


「今の戦いでレベルが上った」


 カナコさんはどうやらレベル11になったようですね。

 グリズリーをふたりがかりで倒せたのが大きいのでしょう。


 与えたダメージはノマキさんの半分以下とはいえ、私が倒すグリズリーにファイヤボールを打ち込むだけだった頃よりもずっと貢献度が高いと見えます。

 カナコさんのレベリングには丁度いいかもしれませんね。


 ……とはいえ、この調子で戦闘ばかりしていると旅がちっとも進みません。


「今の私ならフィアーで周囲の魔物を遠ざけられるはずですので、使ってもいいですか?」


「……構わない」


「フィアー? なにそれ?」


 ノマキさんは知らないようですね。

 ネクロマンサーギルドがない森人族の里で暮らしていたので、専用魔法について知らないのは仕方のないことでしょう。


 しかし説明してみると、思わぬ新事実が発覚しました。


「ファナ。それ多分、意味ないと思うよ」


「え、どういうことですか」


「グリズリーは確かに避けてくれるけど、昆虫は精神系に耐性あるっていうか、そもそも精神構造が違いすぎて恐怖を感じないと思う」


「なんと」


 じゃあ一番うざったいジャイアント・アントを避けられないではないですか!


「でもそういう魔法があるなら、虫の方はフェロモンで遠ざければいいかもしれないね」


「フェロモンですか? ……ああ!」


 そういえば掲示板の書き込みでレベリングに使えるかもしれないと話題になった魔法ですね。

 そういえば逆に虫を遠ざけることができる効果も併せ持っていたはずです。


 つまりフィアーでグリズリーを避けて、フェロモンで昆虫を遠ざける。

 これで完全にエンカウントがなくなるわけですね!


「よし、それで一気に進みましょうか。お願いできますかノマキさん」


「もちろん。……フェロモン!」


「ではこちらも。フィアー!」


「……っ」


「うひぃ」


 カナコさんとノマキさんが揃って息を呑みます。

 そういえば私のレベルは22,カナコさんが11になったばかりで、ノマキさんも10か11くらいだったはずです。

 倍ほども差があれば、恐怖は相当なものでしょう。


「では怖いところ申し訳ないですが、先に進みましょうか」


 ふたりはもはや言葉すら発することができないようで、コクコクと頷くばかりです。

 便利なような、そうでないような。微妙な魔法ですねえフィアー。


     ◆


 こうして魔物と遭遇すること無く山岳地帯を北へ北へと進んでいったのですが……。


「ノマキさん、この辺りの魔物は強いのですか」


「ごめんね、ファナ。私のフェロモンじゃ遠ざけられないや」


 ジャイアント・ビーというノマキさんも使役する厄介な飛行昆虫です。

 素早く、トゲに麻痺毒のある危険な相手です。


《ジャイアント・ビー

 Lv20 顎牙2 麻痺針2 飛行5 蜂兵誘引》


 しかも仲間を呼ぶという厄介な能力持ち。

 それが一度に複数現れるのですから、堪りません。

 アリといいハチといい、昆虫はこんなのばっかですか。


 短剣サイズの針なんて刺されるだけでも痛そうなのに、毒まであるのはいただけません。


 ……とはいえ、この手の物理攻撃や毒はアンデッドには無駄なんで、私のパーティには意味ないんですけどね。

 厄介なのはその飛行能力。高機動であるため、後衛である私たちのところへ抜けてこようとすることです。


「ヨサク、右の奴を処理! ムラマサはヨサクの左にいる奴を処理して! ああ、ファイヤボルト!」


 牽制のために私が魔法を撃つハメになる始末。

 どうしてくれようか……。


「ファナ、キリがない」


「どうするんだよ、私たちじゃここら辺のジャイアント・ビーには勝てないぞ!」


 カナコさんとノマキさんは戦力外ですか。

 まあ仕方ありませんね、使うとしましょうか。


 私はセルフィをパーティから外して、レッサードラゴン(火の吐息)を呼び出します。


「行け、ドラゴンブレス!」


 ゴオオオオォォオオゥ!!


 レッサードラゴンの火の吐息は、ヨサク、ムラマサ、グラインダー、マドカの四体でカバーしきれていない方面を一発で薙ぎ払いました。

 しかし仲間を呼び続けるハチはまだまだいます。


 とっとと門の中に帰っていったレッサードラゴンをパーティから外し、私は次のレッサードラゴン(水の吐息)を参加させます。


「今度はそっち、ドラゴンブレス!」


 ブシャァァアアアアァ!!


 強烈な水のブレスがハチどもを圧し潰し、また一方面を壊滅させます。


 私は火魔石の杖+6からサファイアの杖+5に持ち替えると、


「チルレイン!」


 前方に冷たい雨を降らせ、ハチたちの動きを鈍らせにかかります。

 さあ、とっとと殲滅してくださいよ。

 もうドラゴンブレスはないんですからね!


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