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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
自称魔王編
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「リペア・アンデッド!」


 まずはヨサクとムラマサの回復からです。


 しかし光魔法の第四段階は厄介ですね。

 こちらの戦力はすべてアンデッド。

 どの子に当てられても効果は抜群なのです!


 しかし魔王アインスは、回復していくヨサクのHPを見ても落ち着き払った態度を崩しません。


「ううん、やっぱり召喚士から片付けるのがいいかな」


「え?」


 スルリとヨサクの横を抜けて、こちらに接近してくる魔王。


 ちょ、なにしてんのヨサク!?


 咄嗟にヨサクをパーティから外し、適当に一覧の中で上の方にいたグリムリーパーのフジキを呼び出します。


「……く、助けてフジキ!」


「っと、新しい召喚獣を――――は?」


 急速に接近していたアインスは、ぺたりと触れたフジキの手により、ポコン! という間抜けな音とともに消滅しました。


「…………え?」


「…………」


 あ、もしかして即死判定ですか?

 いきなり決まっちゃった感じですかね。


 どうやら死の手は属性のある魔法ではなかったようで、全属性耐性も関係なく判定があった模様。


 いきなり召喚士が死んだため、メデューサたちも相次いでポコン! ポコン! と消滅していきます。


 ……え、これ勝ったってことでいいんですかね?


 釈然としないのは、恐らく私だけじゃないでしょう。


     ◆


「まさかあんな死に方するとは思わなかったよ。今度は即死耐性、付けてくるかなあ」


「むしろ今度があるんですか?」


「あー。しばらくはないかも」


 魔王アインスは何事もなかったように死んだ場所にリポップしました。

 しかもその間、わずか一分足らず。


 まあ私としてもあれで会話が途切れたまま終わるのも困るので、別にかまわないのですが。


「ま、あんな感じで僕らはプレイヤーにつっかかって、勝ち負けに関わらずヒントを出していくっていう役回りを任されているわけだよ」


「はあ。さっき報酬はないと言ってましたが、ボランティアで犯罪にそこまで時間を捧げるとか、馬鹿かなにかですか?」


「辛辣だなぁ。でもその通り、馬鹿なんだよね。それとそんな馬鹿が、まだ後、五人もいるんだよ」


「うわー。まさかそれ、全員と戦わされたりしませんよね?」


「あ、それは多分、大丈夫。ファナさんの担当は僕ってことになってるはずだから、他の人達と会うことすらないと思うよ」


 それは何よりの朗報です。


「それで。私に対してヒントとやらは何か無いのですか? 折角、勝ったのにご褒美が経験値だけじゃ納得いきませんよ」


 いえレベルが一気に22になったので、実を言うと内心はホクホクしてますけどね。

 でもむしれる情報があるなら、出来る限り得ておくべきでしょう。


「もちろんあるさ。さっきの戦い、グリムリーパーの即死が運よく決まってなかったら、ファナさんの負けだったと思うけど」


「そこは否定しませんが、結果的に勝ったのは私ですよ」


「ああ、違う違う。勝ち負けに難癖つけたいわけじゃないよ。……問題はね、なんでそんな窮地に陥ったかってこと」


 そんなの決まってます。


「私が戦況把握と命令に徹しすぎたからです。同数かつ同格の敵を相手に、ひとりが戦線に加わらなかったのですから当然の結果です」


 序盤から支援魔法を連発していればもっと余裕があったはずです。

 ムラマサにレジスト・ファイヤをかければヘルハウンドは無視できたでしょうし、ヨサクにアウェイクパワーやインストラクトスキルをかければ、もう少しアインスといい勝負になったでしょう。


「ううん、それもあるんだけどね。ファナさんは魔物知識スキルも持ってるでしょ」


「そもそもこちらの情報を下調べして挑んでくるのは、卑怯だと思いませんか?」


「そう言わないでよ。こっちも慣れないデビルサモナーで苦労しているんだ」


「……」


「それでね。悪魔化のスキル、見えてたでしょ?」


「ああ、あの強力な奴ですか。デビルサモナー専用スキルですかね? まったく敵専用スキルまで使って酷いったら――」


「それが違うんだなあ」


「――なんですと?」


 悪魔化スキルがデビルサモナー専用スキルではない。

 それがどういう意味かといえば、……単純に考えて、私にも使えるということでは?


「エルフの隠れ里はね、実装順だと四番目くらいのマップなんだ」


 急なアインスの話題転換についていけません。


「それがどうかしましたか?」


「メオントゥルムの実装は三番目、少なくともエルフの里より早かったんだよ」


「んんん???」


 それはおかしな話でした。


 どう考えてもアドリアンロットから森人族の里までの方が近いです。

 メオントゥルムまで、まだ半分もの行程があるというのに、里の方が実装が遅いとはどういうことでしょう。


「えーとつまり。ファナさんはまた順番を違えたんだよ」


「ええ、また重要情報の取り逃しですかっ!?」


「いや。今回は強化順序の間違い、かな」


「もうハッキリ結論から言ってください。あなたの話は回りくどいです」


「あ、ごめんなさい。えーとファナさん、十五年前はね、まずメオントゥルムで戦力強化をしてから、プレイヤーはドラゴンの試練に臨んでいたんだよ」


「へ? ですがメオントゥルムは森人族の里よりも更に遠いのですが」


「森人族? ああ、なんか新鮮だ。すっかり俗称のエルフ呼ばわりに慣れてたよ」


 アインスはクスクスとひとりで笑ってから、話を続けます。


「本当は谷間やら峰を通ってメオントゥルムに到達するものなんだよ。確かに遠回りだけど、出現する敵は少し弱いし、本当はそっちが正式なルートなんだよね」


 アインスは「むしろよく複数のグリズリーやらジャイアントアントの群れやら面倒なのを倒してきたよね」などと言い出しました。


 え?

 じゃあなんですか、今までの苦労は。

 もしかしなくても攻略組が模索している谷間ルートが正式な道だったってことですか?


「あ、でも気にしないで。どうせスノウ・ワイバーンを倒さなきゃドラゴンメイジになる試練は受けられないし、そういう意味じゃファナさんは順序を無視して最短距離を突っ走っているだけだからさ」


「それは褒められてるように聞こえませんねー」


「褒めてるよ。さすがファナさん、俺達に出来ないことを平然とやってくれる。……あ、それで召喚獣同化なんだけど」


「……デビルサモナー専用じゃないというなら、ネクロマンサーでも可能なんですか?」


「もちろん可能さ。だから、早くメオントゥルムに行くといいよ。えーと身も蓋もない会話になっちゃったなあ。ファナさんだからいいけど、他のプレイヤーに対してはもう少し厳かにヒントを伝えるように努力しないと駄目だね」


 アインスは「じゃあ僕はそろそろこれで」とあっさり飛び去りました。


 これは原口さんを問い詰めなければなりませんね。


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