57 召喚
「というわけで里長、ドラゴンメイジに登録します」
「おう、ファナなら勝てると思っていたぞ。よし、登録した。これでファナは今日からドラゴンメイジだ」
カナコさんが「レベル倍差……」と遠い目をして呟いていましたが、気にしないで召喚陣に向かいます。
初期ボーナスはやはり五体らしく、今から何が召喚されるか楽しみですね。
おっとそれからレベル20になったため新システムが開放されました。
まあ新システムなんて大仰なものではないんですけどね。
まずパーティ枠がいつもどおりひとつ増えて、遂に5枠になりました。
あと単純に第一職業の召喚獣がレベルごとに2体ずつ召喚可能になるというだけです。
恐らくティアー1とティアー2の召喚獣が一体ずつ召喚できるというシステムだと思います。
今のままだと、ティアー1のゴーストやゾンビなどが召喚できないですからね。
というわけで、ネクロマンサーの死体ガチャはティアー2が二体、ティアー1が一体。
ソウルブリンガーは二回引けるので、死体ガチャの結果次第で武器ガチャか防具ガチャかを考えます。
そしてドラゴンメイジは5回。
これは何がどうなるのか未知数なので、最初に引くことにしましょうか。
さあ、カナコさんが付いてきたがってましたけど、それを頑なに拒否しつつ、召喚陣に入ります。
あ、駄目ですよ、強引に。
これカナコさん!
……まったく、油断も隙もないですね。
さあ、無事にひとりで召喚陣の前に立てましたので、早速召喚していきましょう。
「来たれ、ドラゴン!」
ゴォォォオオオ!!!
魔法陣が真っ赤に燃え盛り、ぬぅっとレッサードラゴンが首を出します。
【レッサードラゴン(火の吐息)を召喚しました!】
こちらをチラっと睥睨して、忌々しげな舌打ちとともに魔法陣に沈んでいきます。
うっわ気分悪いですねえ。
かなり根に持っているようですよ。
というかこれ、あと四回あるんですが……。
「き、来たれドラゴン!?」
ゴォォォオオオ!!!
魔法陣が真っ赤に燃え盛り、今度はぬぅっと腕だけが出てきました。
【レッサードラゴン(火の爪)を召喚しました!】
ええー……。
なんかこう、思ってたのと違うんですが。
ドラゴンを一瞬とは言え、呼び出せるんじゃないんですか?
一部分だけとか聞いてませんよ!!
これで弱かったら里長に一撃入れてやらねばなりませんね。
「ドラゴン、来い」
ゴォォォオオオ!!!
今度はすらりとした青いドラゴンの首がぬぅっと現れ、眠そうに欠伸をしながら戻っていきました。
【レッサードラゴン(水の吐息)を召喚しました!】
……こいつら。
「はい次。ドラゴン、来い!」
ゴォォォオオオ!!!
次のドラゴンは翡翠のような美しい緑色ですが、腕だけです。
【レッサードラゴン(風の爪)を召喚しました!】
ていうか、どいつもこいつも態度、悪すぎじゃないですかね。
ええい、最後です。
「ええいドラゴン、最後ですよ!」
しゃらららん♪
「!?」
魔法陣が白く輝き、美しい白竜がのっそりと首を出し、憂いを秘めた瞳でこちらを見つめてきました。
おおう。
ちゃんとしたのもいるじゃないですか。
なぜか悲しそうな光を瞳にたたえたまま、帰っていきました。
【ホワイトドラゴン(光の吐息)を召喚しました!】
……おっと、どうやらレア召喚獣だったようですね。
まあ登場シーンからしてひと味違いましたし。
しかし結局、全身出てきた奴は皆無でしたね。
なんだか肩透かしでした。
まあブレスが一発、撃てればいいんですよ。
防御魔法がないと一撃で消し飛ぶような奴を三回、加えて爪もかなりの威力が期待できそうですしね。
さて、では次はネクロマンサーの分を召喚しましょうか。
「召喚!」
ずもももも。
【グールを召喚しました】
「はい次。召喚!」
ずもももも。
【マミーを召喚しました】
……。
「ハイ次!」
ずもももも。
【ゾンビを召喚しました】
…………。
ああ、はい。
なんでしたっけね。
そう、ネクロマンサーの召喚結果を見て、ソウルブリンガーのガチャをどっちにするか決めるんでしたね。
ゾンビとグールは武器に毒や腐敗毒を追加できるので武器が望ましいのですが、現状、ソウルブリンガー製の武器を持っていないのはスケルトン・ガーディアンのササキとスケルトン・キャスターだけなんですよね。
あ、マミーも鞭は持てるんでしたっけか。
あまり需要がある状況とも言えないので、武器をひとつ、防具をひとつが妥当なところだと思います。
ではソウルブリンガーも召喚していきましょう!
「武器召喚!」
シュアアアアっ!!
おお、これはレア演出!?
【ソウル・デスサイズを召喚しました!】
ぬ、こ、これは……!
大鎌ですよ、あのファンタジーに登場はするけど、実際に振るおうとしたらいろいろと無理のある大鎌ですよ!
絶対に重量バランス悪いですってこれ。
ハルバードなんて目じゃないくらい、うわ、重い。なにこれ重い!
実際に持って振るってみます。
ただでさえ初期作成で器用と筋力を下げている私が、もちろん振るえるはずもありません。
「どう考えても刃が真っ直ぐ突き刺さらないし! 鎌の刃の部分もどう考えても引いて刈るのは無理があるし!」
ちょっとおかしなテンションになるのは訳があります。
ネクロマンサーが大好きな私ですから、他のゲームで大鎌を装備していたことがあるのです。
ええ、もちろんそのときは柄の中頃に取っ手のついたタイプで、完全に農具のようなダサい代物でした。
鎌としての実用性を考えると仕方のないことなのですが……。
しかしこのソウル・デスサイズにはそのような取っ手はありません。
それがちょっとツボに嵌っただけです。
いやーやっぱり召喚スペースに他人は入れられませんね。
稀におかしなテンションになってしまいます。
カナコさんに見られなくて本当に良かったです。
さて気を取り直して。
「防具召喚!」
しゅきーん。
【ソウル・スプリントアーマーを召喚しました】
おや、なんですこの布の鎧は。
明らかに軽装備なんですが、戦士用じゃなく魔法使い用なのでしょうか、……と、いや結構、重いですよこれ?
よくよく手で触れてみると、布と布の間に金属板が入っており、どうやら名前通り運動性と防御力を兼ね備えた鎧のようです。
これならムラマサに着せても運動性能が下がることはなさそうですね。
さあ、面白い防具も手に入りましたし、いよいよ合体の考察に入りましょう。
ドラゴンメイジという未知の要素がどうなるか、楽しみですね!!