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『ま、参った! 降参だ!』
【竜の試練に打ち勝ちました!】
「おや、さすがに最後までやらないんですね」
『これから助力を得ようというのに、殺す気かあ!?』
「えーネクロマンサーにそれを言いますか?」
『く、そうか。貴様らは我らが死してもこき使おうという最悪の召喚士だったな』
「そういう認識なんですかー」
まあ、確かにそうですね。
最古参のヨサクですら酷使されているウチのパーティで、安穏としていられると思わないことです。
例え呼べるのが一瞬であろうと、使い倒してやりますよ!
『ふん、まあいい。試練は合格だ。非常に不本意ながら、お前は力を示した。そこだけは竜として認めねばならぬ』
「ありがとうございます」
『最初からそのような殊勝な態度でおればいいものを……』
「いやあ、さすがにあの高空に居座られると、打つ手が少ないもので」
『分かっておる。どのような手を使ってでも、我を地上に引きずり落とした。それは貴様の手腕の内だ。……心情は別だが!』
「あははー」
『ふん、ではまたな』
「はい。お力を借りる時はよろしくお願いします」
レッサードラゴンは何も言わず、天に昇っていきました。
◆
……いやあ、ぶっちゃけ疲れました。
疲れることはないはずなんですけどね、今の私は生身じゃないので。
でもやっぱり格上相手の戦いなんて、するもんじゃないです。
やっぱり安定して狩れる魔物をルーチンワークで処理してレベル上げるのが楽しいのです。
そして普通なら苦戦するような強敵を、ルーチンワークの延長でボコるのが最高に楽しいのです。
低レベル寺院攻略やらドラゴンの試練やら、ちょっと無茶が続きましたからね。
こっからメオントゥルムまではのんびり進めるといいんですけど。
「あ、カナコさん。勝ちましたよ」
「おめでとう」
試練場を出ると、カナコさんが待っててくれました。
「凄い音、してた」
「ですねえ。だいたい鳴き声が煩いんですよ」
「内容からすると、多分ファナが悪いことしてたっぽい」
「あ、そこまで聞こえてました?」
まあドラゴンの声はやたら頭に響いていましたからね。
試練場の外まで聞こえていたとは少し恥ずかしいです。
「おめでとうファナ。里の者として、新たなドラゴンメイジの誕生に心から祝福と敬意を」
「ありがとうございます、ネイヒェルさん」
布でくるみ直した鈴を返して、ふと疑問に思ったことを聞きます。
「あのう、その鈴って使う度にドラゴンが来るんですよね? 私がもう一度、使うことって出来ますか?」
「…………つまり、ドラゴンとまた戦いたいと?」
「はい」
良い経験値になったんですよ、これが。
さすがレベル32のレッサードラゴン。
私もこれで第三職業が取れるというものです。
「…………君はドラゴンをいじめるので、駄目だ」
「えーそんな。私以外だったらいいのですか!?」
「いや、普通は試練は一度合格すれば二度目は必要ない。うむ、里の決まりとして新たに追加するよう、里長に進言しておく。ありがとうファナ、その視点はなかったぞ」
「……う、嬉しくない」
さすがにドラゴンレベリングは駄目でした。
カナコさんも呆れて半目になろうというものです。
いやでもほんとに経験値がですね……!