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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
桜が乱れ咲く里編
65/151

55

「……ストーン、ボルト」


 ビシィっ!!


 マドカの鋭い石の矢がドラゴンの翼を穿ちます。


 シュルっ、ルッ、シュルルルルル――ッ!


 グラインダーが空中をバウンドしながら疾走、やはりドラゴンの翼の皮膜を切り裂き、血しぶきが舞います。


『小癪!』


 空中で爪と尻尾を振り回し、さながら暴風のように周囲を薙ぎ払います。

 もちろんその中に、グラインダーは巻き込まれて、


 カシィン!


 破片が飛び散りました。

 あーあ即死ですよ。


「リジェネレイト・アンデッド!」


 すぐに復活させますけどね。

 ただHPが随分と減っているので、即座にパーティから外します。


 そして呼び出すのはスケルトン・バリスタのロビン。

 ぶっつけ本番で申し訳ないのですが、ちょっとドラゴンを撃ち落としてもらえます?


「ロビン、アーバレストでドラゴンの翼を狙え! できるだけ連射。防御や回避はしなくていい!」


 酷い命令です。

 しかしアーバレストの大きさと弦を引く困難さを思えば、少なくとも現状では固定運用しか有り得ません。

 それでも一発くらいは耐えてもらいましょう。


「レジスト・ファイヤ」


 本当にこれで耐えられるのかはまだ未確認ですが。


「そら、何を遊んでいるんですか。私はここですよ、フィアー!」


 再度、恐怖をドラゴンに向けます。

 もちろん格上であるはずのドラゴンには、取るに足らない人間からの威圧など、不快以外の何物でもないでしょう。


『貴様ぁ、またしても!』


「ほらほら。こんなに舐められてたら、里で語り継がれる中で最も無様なドラゴンになりますよ」


『きさ……ッ!?』


 バスッ!


 翼に穴が空き、ドラゴンは空中でガクリと体勢を崩しました。


 ロビンのクロスボウによる攻撃でしょうか。

 凄い威力ですね、実戦経験を積めば良い戦力になりそうです。


 いや、既にドラゴンに痛烈な一撃を加えましたから戦力としてカウントしましょうか。

 そういえば弓スキルは合体により第四段階になっていましたね。


「インストラクト・スキル!」


 はいこれで第五段階になったはず。

 技術があれば、当てることは難しくなくなるでしょう。


「……ストーン、ボルト」

「……」


 ビシィっ!!


 バスッ!


 おお、マドカとロビンが順調に翼をズタボロにしていきますよ。


 さすがにドラゴンも、空中に留まっているのはいい的だと気づいたようですね。

 低空飛行に移行しつつ、大きく息を吸い込みました。


 ブレス、来ますか!?


 正確には不明ですが、レジスト・ファイヤの効果時間はまだ残っているようです。

 しかし敵の火の吐息は第三段階。

 第二段階の氷の吐息がソコヤマさんを一撃で死に至らしめたことを思えば、防御魔法がかかっていても楽観視できません。


「ブレス来るよ、散開!」


 ヨサクとムラマサがそれぞれ違う方向に走り出します。

 ただしどちらもドラゴンの方へ向かう動き、どうやら避けるだけに終わらせるつもりはないようですね!


 ドラゴンの狙いは私です。


 そりゃあれだけ挑発したんですから、ブレスを叩き込まないと気がすまないでしょう。


 そして狙われている以上、回避は絶望的です。

 相手の機動力に到底、敵わないからです。


 ならば耐えるのみ。


 残りSPは3点ですか、まあここは注ぎ込みどころでしょう。


 SPを2点消費して、水魔法を第二段階までを一気に取得します。


「ウォーターシェル!」


 水魔法の第二段階のウォーターシェルは、主に魔法攻撃を軽減する防御魔法です。

 武器による攻撃にはほぼ効果はなく、一撃で消滅するため、持続する防御魔法という感覚ではなく、一発だけ魔法を防ぐことのできる保険というイメージが近いでしょうか。


 確実に来るブレスに対応するなら、これがベストでしょう。


 同時に横でいそいそとボルトを装填しているロビンにも掛けます。


 さあ、来なさい!!


『耐えられると思うな!』


 ブォゴオォォォォ!!!!


 目の前が真っ赤に染まります。


 ドゴォン!!!


 重く巨大な何かが地面を叩き、土砂が飛び散りました。


 これほどの威力。これほどの脅威。


 ――しかし炎は二重の防御魔法により、HPの三分の一ほどを削ったものの、その程度の被害で済みました。

 ロビンもHPは半分ほどを残して立っています。


 むしろ土砂の方がびしびし当たって痛いです。


 土煙が晴れるにつれ、何が起こったのか理解できました。


 やってくれましたね、ヨサクとムラマサ。


 ブレスの射線から逃れると同時に接近、すれ違いざまに翼を傷つけていったようです。

 地面に落ちたのはドラゴンだったんですね。


 さて地上に落ちたなら、ここからは全力で攻めるのみです。


「マドカ、シャドウバインドで動きを止めて! その後は攻撃魔法で攻めろ、魔法の選択は任せる。ただし火は効かないぞ」


 おっと、最初に掛けた魔法がほとんど解けているじゃないですか。


「アウェイクパワー!」


 ヨサク、ムラマサ、マドカ、ロビンに順にかけていきます。


 まあソウルブリンガー専用魔法のせいでMPがやっぱりキツいんですけどね。

 MPポーションをあおります。


 うう、ちょっと気持ち悪い。

 短時間で飲み過ぎですね。


「うぇっぷ。……アースヒール! とそれからリペア・アンデッド!」


 自分とロビンのHPを回復します。

 思えば、私がダメージを受けたのも回復魔法を使ったのも、初めてじゃないですかね?


「ブラインド!」


 まずは盲目に……ならない?

 あーさすがにドラゴン、精神強化も第四段階もありますし、ブラインドは効きませんか。

 レベル差もありますし、ステータス表示されないボス耐性があるのかもしれませんし。

 何にせよブラインドはなし、と。


 あれ? すると私は何をしていれば良いんでしょうか。

 闇魔法はウーンズ程度しかありませんが、翼はもう破壊済みで、小威力の魔法を連打する効果は薄いです。


 ファイヤアローは有り得ません。

 だって火耐性が第五段階のドラゴンに効果があるとは思えないのです。


 するとエンチャント・ウォーターかなんかで支援ですか?

 既にアウェイクパワーで火力をかさ増ししているのに?


 ムラマサは確かにスピードファイターですが、大ぶりの刀を扱うため攻撃回数が多いわけではありません。

 むしろ一刀ごとに渾身の力を乗せるタイプです。


 ヨサクのハルバードも槍で突く、斧で叩き切る、といろいろな攻撃はありますがいずれも重厚感溢れる戦い方。


 ロビンに至ってはボルトの装填に時間がかかるため、攻撃間隔はかなり長めです。


 武器の威力を増しても効果的とは思えません。


 スキル欄を開き、残りSP1点で出来ることを考えます。


 マドカと一緒にストーンボルト?

 却下、どうせまたすぐにマドカに魔法で置いていかれるのが目に見えています。

 同様に闇も第四段階にしかなりません。

 火魔法はこの状況下では論外。


 となると水魔法ですか。

 ええと第三段階はチルレイン……冷たい雨を降らせて範囲内の器用と敏捷を下げる?


 戦場を見ます。


 スペクター・ウォーリアバロンは霊体かつホネです。

 スペクター・ブレイドマンも霊体かつホネです。

 レイス・ソーサレスは霊体です。

 スケルトン・バリスタは紛うこと無くホネです。


 アンデッドに、寒さは関係なさそうですね。

 筋肉、ないし。


 決定、チルレインで援護しましょう!

 なにげにアンデッドと相性抜群じゃないですかこの魔法!


 ポチっとな。


「チルレイン!」


 サー……


『つ、冷た!?』


 うひー、私もかなり冷たいですよ!?


 しかし効果は抜群のようですね。


 多少地面がぬかるんでしまいましたが、逆に言えば、その程度の影響しかありません。


 ヨサクのハルバードの穂先がドラゴンの鱗に突き刺さります。


 ドスっ!


 そして引き抜いて、今度は斧として振り下ろされます。


 ガスっ!


 ムラマサの長刀が鋭い爪のある腕を切り落としました。


 ザンっ!


 マドカのストーンボルトが、ドラゴンの目に突き刺さります。


 ビシィ!


 ロビンのアーバレストがドラゴンの首元にボルトを突き立てます。


 バスっ!


『ぐおおおおおお!!!?』


 ドラゴンが、かじかむ腕で爪を薙ぎ払いますが、ぎこちない動きゆえかヨサクとムラマサは難なくかいくぐり、追撃に移ります。


 ドカっ!


 ザンっ!


 尻尾も振るわれますが、凍えているのか可動範囲が若干、狭く感じます。

 やはりスペクター組はかいくぐり、


 ドスっ!


 ザンっ!


 追撃を加えるのです。


 良い、チルレインすごく相性が良いですよ!?


「……ストーン、ボルト」

「……」


 ビシィ!

 バスッ!


 マドカの魔法とロビンのアーバレストも定期的に挟んで、ドラゴンのHPをガリガリ削っています。


 全員の動きが凄く良い。


 ここに来てようやく、ナイトウォーカーによる総合力アップの恩恵を感じています。

 これは勝ちましたね。


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