表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
北の山編
50/151

42

「グリズリーです!」


 もはやこの光景も三度目。

 カナコさんもソコヤマさんも変わること無く、自分たちが足を引っ張らないよう頑張ってくれています。


 さて、今回のメンバーは最強の古参、ヨサクを外してみました。


 主役はマミー・インスペクターのマルキド、その護衛にスケルトン・ガーディアンのササキ、攻撃役にスペクター・ブレイドマンのムラマサ、支援にレイス・ソーサレスのマドカです。


 さて注目のマルキド選手ですが、調子はどうですかねえ。

 鞭を持ったマミーというなんか良く分からない存在になりましたが、正直、包帯の間からチラチラする目は嫌らしい感じがしてちょっとドキドキします。

 こう中東系イケメンの眼差しなんですが、なんか鞭持って敵を睥睨しているのを見ると、犯罪臭がするんですよね。

 大丈夫でしょうか、この子。


 何もしでかしていないにも関わらず、グラインダーに次ぐ問題児という印象しかありません。

 果たしてマルキドはどんな戦いを見せてくれるのでしょうか。


 試合会場は、ここ北の山中腹、相手は歴戦の強者グリズリーですが、ここ最近は連敗続きです。

 果たして連敗脱出なるか……ってなったら私たち死に戻るので一体でも倒されたら代打ヨサクを降臨させてやりますよ。

 負けは論外です。


 さてそろそろマンネリの三回戦目、おふざけ実況もこの辺りにして突進してくるグリズリーを迎撃しましょうかね。


「マルキドとササキが接近、ムラマサは彼らが攻撃をするまで斬るな。マドカは至急、ブラインド」


「……ブラインド」


「よし。マドカはその後、ファイヤアローかウーンズで牽制に務めなさい。ブラインドが切れたらかけなおすこと。魔法の選択は任せる。ではかかれ!」


 ふう、一息に命令を飛ばすと疲れますねえ。


 おっと念のため武器スキルの低いマルキドには支援をかけましょう。

 実はパーティ枠以外にレベル15で解禁された新要素があるのです。


 それは第二職業の専用魔法!


 ただし第一職業のレベルの半分までの魔法しか使えません。

 今の私のレベルは16なので半分にすると8、ソウルブリンガーの専用魔法はレベル1とレベル5の魔法が使えるということですね。

 どちらの魔法も強力なのですが、今回はレベル5の魔法を使います。


「インストラクト・スキル!」


 武具に宿る魂の記憶から、対応するスキルを一時的に上昇させる魔法です。

 ソウルブリンガーは、英雄や名のある武人が生前に使っていた武具を召喚する職業ですから、「魂の運び手」と呼ばれているのですよ。

 この魔法、強力なだけに消費が重いのがネックですね。

 あまり乱発したくはありません。

 なにはともあれ、これでマルキドの鞭スキルは第四段階になったはずです。


 さて準備は万端。みんなちゃんと動いてくれるでしょうか?


 突進をブラインドで止められたグリズリーは、走る速度を落としてゆっくりとこちらに向かって来ます。

 見えていなくても怯えないとは、なかなか冷静な奴ですね。


 やはりジリジリ距離を詰めるのはマルキドとササキです。

 マルキドがやや先行しつつあるのは、ササキの歩みが遅いからでしょう。

 ちゃんと護衛、できますかねササキくん。


 一方、のんびりした進軍にイライラしているのが目に見えて分かるムラマサ。

 顎が上下し、歯がカチカチ鳴らされています。

 貧乏ゆすりか何かの親戚でしょうか。


 まだ戦線が定まっていないので、マドカはのんびり様子を見守っています。

 フードの下には透ける女性の顔。

 そう、レイス・ソーサレスになってからは儚げな美女といった印象に進化しています。

 完全に美女の幽霊ですね。


 さあ遂にマルキドがグリズリーに接敵しましたよ!


 ビシィ!!


 何故か地面を叩く鞭。

 その鋭い音にグリズリーは反射的に身構え、――マルキドが伸ばした包帯に絡め取られました。


 しかしグリズリーの巨体を包帯で拘束するのは無理があったのか、そもそも拘束しても相手の方がパワーがある場合は逆効果にしかならないのではないのか、やる前から危惧していたことが現実になりました。


「グオオオオオん!!」


 激しく身を振るグリズリー。

 自らが巻きつけた包帯に引っ張られて転倒、地面を転がりまわるマルキド。


 ようやく到着したササキも、これには困惑。


 ……ていやいや、早く助けてあげてくださいよ!?


「……ファイヤ、アロー」


 シュッ――ボヒュ!


 マドカの牽制が放たれます。

 あーササキがなにもしないからですよ?


 ボンッ!!!!


 …………は?


 マルキドの巻きつけた包帯に、マドカのファイヤアローが着弾、激しく燃え上がります。

 いやいや、燃えすぎでしょう!?


 マルキドは包帯を自ら切り離し、地面を転がりながら距離を取ります。

 どうやらこれが狙いだったようですが、包帯を切り離すのが遅すぎですね。

 この辺は実戦経験をつませていけば、いずれ学習するのでしょう。


 おや、そういえばムラマサはどこで何を……、


 シュルん。


 グリズリーの首がくるくる回って、地面に落ちました。


 ズン、と倒れ伏すグリズリーの向こう側に、刀を振るい終えて血振りをしているムラマサの姿が!


 その仕草は格好いいんですが、このゲームそもそも血とか流れませんから。


 ムラマサはどうやら回り込んで、背後から一撃したようですね。

 一閃で首を落とす辺りがさすがです。

 散々グリズリーを狩りましたからねえ。

 この程度の芸当はお手の物です。


 ……やはり重要なのは実戦経験のようですね。

 どうしてもAIの学習進度の差が出てしまいます。

 特に初戦は危なっかしくて見てられません。


 旅がどの程度続くのか分かりませんが、できるだけメンツを変えながら進むとしましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ