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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
北の山編
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 宴会での質問攻勢はエクレアさんとセインさん、そしてバラスケがシャットアウトしてくれたため、非常にのんびり食事を楽しむことができました。

 品目はできればバフに拘って選びたいものですが、色々な味を楽しむというのもなかなか悪くない気がしてきました。

 ゲームの味だからと少し舐めてた、というのが実際のところで、現実の味をかなり再現しているところは、十年分の技術の進化を感じさせます。


 またグリズリーの通常ドロップアイテムの熊肉を大量にドロップしていたため、これを提供したら大層喜ばれました。

 たしかに美味しかったですね。

 私は野性味のある肉も嫌いではないですが、魚や野菜の方がどちらかと言えば好みです。


 気に入ったのはクルミですね。

 塩っけとクルミの濃厚な味がたまりません。

 現実と違っていくら食べても鼻血が出たりしませんので、おやつにピッタリです。

 アイテムストレージに袋ごと入れておくことに決めました。

 地味な知力ボーナスもありますからね。

 これだけで宴会に参加した意味がありました。


     ◆


 さてさて、そんな翌日。

 二日酔いみたいな表情をしている人もいますが、早速出発ですよー。


「それじゃ行ってきますね」


「ファナ、くれぐれも無茶などして死に戻ったりしないようになさいね」


「私が死んだらカナコさんもソコヤマさんも死にますからねー」


 エクレアさんと私の会話に、カナコさんとソコヤマさんの顔がこわばります。


「出発前に脅してどうするんだ、ファナ」


 セインさんが呆れた様子で窘めました。

 そしてバラスケが眉尻を下げて言います。


「ファナ様なら大丈夫でしょうが、目的の街に到着したら一報くださいませ。掲示板でカナコさんから知るよりも、できればファナ様の御言葉で真っ先に知りたいと思いますので」


「あ、それはわたくしもですわね」


「そうだね。ファナはなんとかって次の街に着いたら、私たちに連絡入れること。カナコさんとソコヤマさんも覚えておいてね」


「分かっている」


「は、はい」


 私ってほんと信用されてませんね。

 何かしましたっけか……。


 いや、何もしないからこんな反応なんですかね?


「キリがないので、そろそろ出発しますよー」


 心配事を聞かされるのもうんざりしてきたので、とっととスペクター・ウォーリアバロンのヨサク、スペクター・ブレイドマンのムラマサ、レイス・ソーサレスのマドカ、スケルトンガーディアンのササキを呼び出しました。


「さあ、行きましょうか――ってあれ。みなさんどうしましたか?」


 そういえば、今の召喚獣のラインナップを見せるの、初めてでしたかね?



「グリズリーです!!」


 ソコヤマさんの悲鳴が叫び渡ります。


「防御、迎撃に徹して」


 カナコさんは素早く二体の人形に命令を出します。

 戦闘用の部品を組み込んだそれらは、それぞれジェントル・ドールとレディ・ドールという妙齢の男女の人形です。

 もちろん美男美女なのですが、名前とは裏腹にちょっとこう、なんというか、軽い印象を受けます。


 ……カナコさんは、ジェントル・ドールにチャラ男、レディ・ドールにビッチと名付けて戦闘にこき使っていることから、お察しください。


 なおメイド・ドールは部品スロットすべてを生産活動用に割り当てているため、戦闘には参加させない方針のようです。


 さてさて、ソコヤマさんがすごい勢いで近くの木に登って逃げたので、グリズリーを狩ることにしましょう。


「マドカはまずファイヤブラスト。ヨサク、ムラマサ、ササキはその後に近接戦闘に移れ。ただしササキは私たち後衛に敵が抜けてこないことを第一優先目標とする。かかれ!」


 ザっと三体のホネが横にずれて、マドカのために射線を空けます。

 よだれを撒き散らしながら迫力満点で突っ込んでくるグリズリーに、マドカは何の感慨もわかない様子で炎の魔法を撃ち込むのでした。


「……ファイヤ、ブラスト」


 ゴオゥ!


 炎の波が一直線にグリズリーに向かい、全身を舐めました。

 グリズリーの絶叫を確認して、二体のスペクターと一体のスケルトンが走り寄ります。


 まず軽快スキルをもつムラマサが先頭に躍り出ました。

 次いで高い能力値を誇るヨサクが続き、敏捷に補正もなく重装備気味のササキがかなり遅れてついていきます。

 ちなみにササキの武器はヨサクのお古の鉄の斧+3です。


 自然と良い感じのフォーメーションになりましたね。

 どうやらこの四体の連携については、命令する私が間違えなければ問題なさそうです。


 炎で怯んでいたグリズリーをムラマサが袈裟に斬り、HPバーをグンっと減らしました。

 そこにヨサクがハルバードの穂先を突き入れ、ぐっと押し込みグリズリーの巨体を浮かせます。

 体勢を完全に崩したグリズリーに、ムラマサが一閃。


 ポコン!


 グリズリーを瞬殺、お疲れ様でした。


 もうウチのパーティはグリズリーには苦戦しません。

 いやだいぶ前から苦戦してませんけど。


 ところでササキ、戦線に到着したときには終わっているとは情けない。

 いっそ下手に前に出さずに私たちの護衛として近くに立たせたほうが効率いいかもしれませんね。


 少なくともスペクターコンビにはついていけそうにないです。


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