表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
北の山編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/151

35

 北の森は完全に敵が近寄ってこず、無事に北の山と呼ばれるテリトリーに入りました。

 ミニマップの表示に書いてあるので、分かりやすいですね。


「ここが北の山、ですか。あんまり森と変わらないですねー」


 というか私、正式版では森で戦ってませんけどね。

 低レベル寺院攻略が上手くいったので、間を色々とすっ飛ばしてしまいました。

 まあ進む分にはいいんですよ。


「ファナさん。それでも出て来る魔物の強さが尋常じゃないんです。逃げるのもままならず、出会ったら終わりなんですよ」


「ソコヤマ、グリズリーということはやっぱり熊?」


「はい。熊です、それも二メートルくらいある巨大なヤツですよ」


「うわー。二メートルは大きいですね」


 私は二メートルの熊を想像します。

 うん、たしかに強そうではあります。


 しかし同時に、勝てない敵じゃなさそうだなーとも思います。


「き、来た!!」


 ソコヤマさんが恐怖のこもった悲鳴をあげました。

 うわ、確かに迫力ありますねえ。


 見上げるような大きさの人食い熊です。


「ぐるるるる」


「……」

「……」

「……」


 ザっと私の召喚獣たちが前に出ます。

 うお、嬉しいですねえ。

 私を危険に晒さないように積極的に前に出るなんて。

 AIの成長を感じます。


「開幕にマドカのファイヤブラスト、その後にヨサクとムラマサで倒して。マドカは好きな魔法で牽制、もちろん仲間に当てないようにね」


 言うやいなやマドカが杖を掲げ、


「……ファイヤ、ブラスト」


 ゴウ、と放たれた火炎の波は、しかし猛スピードで四足で横に駆けるグリズリーにあっさり回避されます。


 マズい、迂回されると私たちが危険ですよ!


「ブラインド!」


 盲目の魔法は、意外なことにあっさり決まりました。

 ピタリとグリズリーは足を止め、しかしすんすんと鼻を鳴らして耳をくりくりと動かし、――冷静な面持ちでこちらに突進してくるではありませんか!?


 これだから野生は!


 カナコさんの戦闘用召喚獣、スーツ・ドールの課長が迎撃のために構えますが、レベルと頭頂部がすごく頼りない感じです。

 なお一応、彼のために弁明しておきますが、オジサン趣味の女性には堪らない感じです。

 そういう意味ではドールメイカーの美形の範疇なのでしょう。

 たしかに頭頂部は薄いのですが、「それがどうした」という感じで自信に満ち溢れた表情が、私からしてもイケメンに見えます。


 一方、ソコヤマさんは凄いです。

 素早く木の上に登り、腰に挿していた二本の形が違うナイフを逆手に抜いて臨戦態勢、というかあれは逃げただけですね。

 二本のナイフがソウルブリンガーであるソコヤマさんの武器らしいです。

 二刀流は格好いいのですが、振るわれないと意味がないのではないでしょうか。


 さて、私たちの方に突っ込んできたグリズリーは、無事にヨサクとムラマサによって足止めされました。


 ドガァっ!


 ザンッ!


 ガスっ!


 グリズリーがいかに殴ろうとも、スペクターコンビは体勢を崩すだけでHPバーはやはり一ミリも減っていません。

 そんな気はしてたんですよねー。


 グリズリーですよ?

 魔法なんて使うわけないじゃないですか。


「マドカ。盲目が切れたら入れ直して。支援は多分、それで十分ですよ」


「……」


 コクリと頷いた気がします。


     ◆


「いやあ、なかなかの経験値ですね。これなら一日くらい狩場にしても良さそうな感じです」


「…………」


「…………」


 ソコヤマさんとカナコさんが信じがたいものを見る目をこちらに向けましたが、実際、問題のない相手でした。

 二体出てくると厳しいですが、一体ずつならなんとでもなるでしょう。


 北の山は広く、グリズリーとの遭遇率はそう高くないようです。

 ただし一度出会ってしまえば、ソコヤマさんでは為す術もないというのも理解できますが。


「じゃ今日はこのくらいにして、明日は一日、準備に当てましょう。私はここでレベリング、ふたりは旅や野営に必要な買い物と、あと時間が余れば適正な狩場でレベリングしててください」


 パワーレベリングなんてしませんよ。

 ていうか今のふたりじゃここではなにもすることがありません。

 逆に大した経験値が得られないでしょう。


 戦闘で得られる経験値は、戦闘中にどのくらい貢献したかによって決まります。

 ダメージを与える、デバフを与える、味方にバフをかける、などなど。


 しかし先程の戦いの通り、デバフは闇魔法のブラインドくらいしか役に立たないでしょうし、ふたりではダメージを与える手段がありません。

 さらには味方にバフを与える手段も持ち合わせていないようですので、することなし。

 つまり経験値を得られないのです。


 それにここで経験値を得るためだけに闇魔法を、恐らく三段階目まで取得するのは無駄が過ぎますしね。

 いえ別に他の支援魔法でもいいのですが。

 自分に合った、もしくは欲しいスキルを伸ばして、それが役に立つのがベストなのです。

 レベリングのためだけに今後ろくに使わないスキルを取るなんて、もったいないですよね。


「じゃあ帰りましょう。いやあ何とかなって良かったですね」


「はは、凄いですね合体召喚獣。私も早くレベル10にならなきゃいかんと思いましたよ」


「鍛冶だけじゃ経験値が足りない……」


 カナコさんが難しい顔をしていますが、別に戦闘ができないわけじゃないでしょうから、地道に頑張って欲しいものです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ