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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
北の山編
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活動報告にブックマーク1250件突破記念SSを上げました。

まーた半端な数字ですが、作者から読者様方へのささやかながら感謝の気持ちです。

短編の内容もささやかですが……なにぶんかなり前に書いたものなのでご容赦を。

他の記念短編を書かなければならないほどのペースでブックマークが増えると思っていなかったのですよ。

 趣味は山登りです、とその男は言いました。


「はじめまして、ソコヤマと申します」


「あ、ご丁寧にどうも。ファナと申します」


「……なにやってんの」


 カナコさんが紹介したがったサバイバルの達人ことソコヤマさんは、ビシっとしたビジネスマナーを心得ていることから社会人だというのは確実です。

 営業職か何かですかね?

 割りとデキる匂いがぷんぷんしますよ。


「しかし驚きました。今話題のトッププレイヤーですよね。すごく心強いです」


「北の山々を抜けて新しい街に行きたいんです。野営が必要になるらしいので、詳しい人がいると助かるなーと思いまして、カナコさんに紹介していただいたんですよー」


「山々……ですか?」


 目を丸くしたソコヤマさんは、申し訳無さそうな顔で言いました。


「北の山は正直、魔物が強すぎてまったくどうしようもないんです。その先、野営をしながら何日かかるかわからないというのは……」


「そうらしいですね、掲示板は拝見しました。とりあえずそのグリズリーというのと戦ってみたいと思います」


 合体召喚獣の反則的な強さがあれば、割となんとかなると楽観しています。


 というかむしろ、どうにもならないとこの周辺でやることないんですよねー。

 ゲーム的にもここは進みどころだと思うのです。


「分かりました。トッププレイヤーのファナさんが勝てるよう応援します」


「では早速、向かいましょうか」


「今からですか!?」


 ソコヤマさんが驚きましたが、別に山に入って魔物を一体倒してくるだけですよね?

 逆にわざわざ時間を置く理由もありません。


 あ、もしかして暗視がないんですかね?


「いえ、暗視は取得しています。ただ準備とかは……」


「特には。むしろ今の戦力でどうにもならないなら、北の山の難易度はいま挑む場所じゃないってことですから」


「はあ……」


 というわけで出発を決めましたが、カナコさんがふと「あ、忘れてた」と言って黒い鎧を取り出しました。


「はい、注文の品」


「え……、ああ! あのインゴットがこれになったんですか! へー」


 見た目は胴体を覆う軽鎧ですが、異常な軽さです。

 それでいて金属のような触感があり、データ的にもその辺の鉄の鎧と同じくらいの防御力がありました。

 しかも嬉しいことに闇耐性の特殊効果つき。

 ネクロマンサーにピッタリのいい鎧です。


「カナコさん、お代はいかほどで?」


「護衛料でいい」


「了解しました。カナコさんは私が全力で守ります」


「う、うん」


 ぐっと拳を握って宣誓しましたが、カナコさんの方が照れてしまいました。

 まあ何にせよタダ同然で鎧が手に入ってしまったのはラッキーでしたね。

 早速着用します。


「うっわ軽いですねー」


「シャドウインゴットが優秀な素材だった」


「でもカナコさんの鍛冶スキルあってのものでしょう? このフィット感、さすがです」


「褒めすぎ」


 カナコさんが会話を強引に打ち切ったため、早速、北の山に向かうことになりました。


     ◆


「ファナさん、それが噂の合体召喚獣ですか」


「迫力は満点」


「そうですよー」


 スペクター・アックスナイトのヨサク、スペクター・ブレイドマンのムラマサ、リッチ・ソーサレスのマドカと、最強メンバーを揃えています。


 グラインダーも凄い強さですが、なんとなく落ち着きがないので広いフィールドを歩くときに目障りだと思うんですよね。

 目の届かないとこまで魔物を追っていきそうなイメージがあります。

 実際には命令すればそんなことはしないのでしょうけど。


「それじゃ道中の邪魔は全部、私が除けますね」


「分かった」


「え。ファナさん、除けるとはどういうことなんですか」


 カナコさんはβのときにレベル10のネクロマンサー専用魔法を見ていますからね。


「フィアー!」


 レベル10で習得するネクロマンサー専用魔法はフィアー、直訳すれば畏怖となるので、ヨサクやムラマサがもつスキルと似たような効果があります。

 つまり術者から恐怖の気配が撒き散らされる、という魔法なのです。


 その効果は、すなわち周囲の敵が怯え、遠ざかっていくということなのですが。


「……っ」


「うひゃぁ!?」


 私と私の召喚獣は平気なのですが、他のプレイヤーであるカナコさんとソコヤマさんは当然、この効果を受けて怖い思いをします。


「じゃあ進みますよー先頭は任せますよソコヤマさん」


「は、ひゃい!」


 ガクガクと歩きながら先頭を行くのはいいとして、頑として背後をむこうとしないのはなんなんでしょうか。

 そんなに怖いものでしたっけ、この魔法。


「カナコさん、フィアーってβのときより効果上がったりしてます?」


「……それは、分からない、けど」


「けど?」


「ファナと、レベル差、あるから」


 ああ!


 そういえばβは基本、レベルキャップが10しかなかったため、ほとんどのプレイヤーがレベル10で過ごしていました。

 だからあまりレベル差がなかったのですが、今の私はレベル11です。


「失礼ですが、おふたりのレベルはおいくつで?」


「わ、私は6ですっ」


「……4」


 ソコヤマさんがレベル6、カナコさんがレベル4ですか。


 カナコさんはどうやら街から出ずに、鍛冶ばかりしていたようですね。

 シャドウインゴットを加工しなければ3くらいだったのではないでしょうか。


「なるほどー。倍近い差があればフィアーの効果も絶大ですよねー」


「……」


「……」


 あ、ふたりの反応がないです。

 ちょっと寂しいですね。


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