表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
北の山編
40/151

32 召喚 合体

本日は活動報告に上げていた短編を三つ、こちらに転載しています。

いずれも読まなくても本編の理解に支障はありませんが、読んでおくとより深くこの物語を楽しむ手伝いとなるかと思います。でも好みに合わなかったら無理して読まなくてもいいですからね。

 ネクロマンサーギルドにやって来ました。


 ロッティングコープス戦を終えたところでレベルが11になったから、新たな召喚獣を召喚できるのです。

 今回からはネクロマンサーとソウルブリンガーから一体ずつ召喚できますよ!


 では早速、召喚スペースを借りて召喚しましょう。


「防具召喚!」


 本当は斧が欲しいのですが、どう考えても防具の方が合体効率がいいですからね。

 防具が半分ほど埋まってから、改めて斧を狙っていく予定です。


 しゅきーん。


【ソウル・チェインクロースを召喚しました】


 おっと鎖帷子ですね。

 これはムラマサに合体できてしまうのではないで――うわ、ヨサクにも合体できる!?


 どうやらこの鎖帷子は鎧の下に着るもののようです。

 これは防御力のヨサク用でしょう。

 なんといっても、これでヨサクも四体合体召喚獣です。

 古参の意地とプライドにかけて、新入りのムラマサと同格の強さが欲しいところですね!


 さて次はネクロマンサーですよ。

 こっちは知り尽くしている分、マミーのような新要素が出ることに期待したいですね。

 あ、スケルトン・スピアマンとかでもいいですよ。

 ソウル・ショートスピアが余ってるんですよね。


「召喚!!」


 ずももも。


 ああ、またゾンビ……


【グールを召喚しました】


 ……じゃない?


 グールはマミーのように防腐処理がされているようで、腐っていない歩く死体です。

 ただ名前、グールとは食屍鬼のことですから、死体を喰らう性質があるはずです。


《グール

 Lv11 食屍 腐敗毒 格闘 敏捷強化》


 ほらね?


 そしてマミー同様、これもまた初見です。

 もしかして、レベル帯によって出現する召喚獣が変わるように仕様変更があったのでしょうか。


 残念ながら死体ガチャの排出率はヘルプにありません。

 課金要素じゃなく、ゲーム中のランダム要素にすぎませんからね。

 記載の義務はないのです。


 とはいえレベルアップの回数では試行回数が足りずに検証になりません。

 他のプレイヤーもほとんどネクロがいない以上、後続のためにしかならない検証など放り捨ててしまいたいのですが。


 ……それをするとカナコさんが怒るんですよねえ。


 まあ自分のためになるならまだやる気にもなるのですが……いや、ひとつだけ試してみましょうか。


「すみません、召喚士の強さによって召喚される召喚獣がどのように変わるのか教えてもらいたいのですが」


 無愛想な受付は面倒さそうなものを見る目で私を一瞥してから、舌打ち混じりに答えました。


「……ん。強くなれば強い召喚獣を召喚できる。……当たり前のことをいちいち聞くな」


 やっぱりそういうい仕様があるようですね。


 私は「ありがとうございました」と丁寧に頭を下げて召喚スペースに戻ります。


 さあ、召喚が終わったら合体タイムですよ!


 今回はこれ、ソウル・チェインクロース。

 これをヨサクに着せてさらなる強化を図りたいと思います!


【スペクター・アックスナイトにソウル・チェインクロースを合体させます】

【スペクター・アックスナイトが誕生しました】


 名前は変わりませんでしたね。

 スキルは斬撃耐性が第二段階になり、衝撃耐性と火耐性が追加されました。

 うっは素の防御力も硬い硬い!

 これムラマサの斬撃でもダメージを与えられるか微妙なほどの硬さですよ!?


 まあさすがにそんな実験はしませんけどね。


 おや、メッセージが来ていますね。

 ウルシラさんからのようです。


 ふむ、ふむ。なるほど。


 さて実は昨日、ウルシラさんと連絡を取っていたのですが、ウルシラさんの都合が合わずにお流れになってしまいました。

 今日は大丈夫なそうなので、早速伺いましょう。

 いよいよアドリアンロットの街を離れて、新しい狩場に移るときがきましたよ!


     ◆


 ウルシラさんの実家の食堂です。

 道中で昨日の寺院で得たドロップ品を売却してきたので、ちゃんと現金は確保してあります。


「ウルシラさん、こんにちはー」


「よく来たな、ファナ」


 ウルシラさんはお皿を運んでいるところでした。

 実家ですがお客さんもいるので、お手伝いしているのでしょう。

 鎧姿じゃないのがちょっと新鮮ですね。

 ウサミミウェイトレスとか可愛いすぎですよ、これだけでこの店は人気店になるんじゃないですかね。


「今日は私の相談に乗っていただきたく、やってまいりました」


「相談? 聞くだけで良ければいくらでも聞くぞ」


「ウルシラさんからすると、大したことじゃないかもしれません。ここはソウルブリンガーの先輩として、後輩に助言をお願いします」


「ははは、そういえば無事にソウルブリンガーになったんだったな。おめでとう後輩」


「これから早速お世話になります、先輩」


 ウルシラさんは軽く手を振ると、隅の方にある二人用テーブルに、エプロンを椅子の背にかけて座ります。

 私もその席に座り、まずはお礼を言います。


「ソウルブリンガーとネクロマンサーの合体相性は抜群でしたよ、本当にありがとうございます」


 しかしウルシラさんは眉を上げて首を傾げます。


「そうなのか? ただ武器や防具が持てるだけだろう」


「とんでもない。武器が勝手に飛ぶリビング系や、武器防具を持たせたスケルトンがスペクターになったり……あ、これはもしかしたらソウルブリンガーだけじゃないのかな」


「スペクターだと!? そんな高位の召喚獣を使役できるのか!?」


「えっ」


 ここで始めて、NPC召喚士とプレイヤー召喚士の間に深い溝というか、成長の差があることを知りました。


 NPCは召喚士になった時点でスキル数がみっつ程度、そして二~三レベルにひとつ、行いに応じてスキルが成長するといったもので、プレイヤーの半分以下ほどのスキルしか持ち合わせていません。

 私が付与魔法を取得するのを見て、幼くして成長をとどめて有効な魔法を習得する姿に驚くと同時に、羨ましく思っていたそうです。


 さらに使役できる召喚獣も、力量に見合ったものでなくてはならないそうです。

 私のスペクターは最低三体合体なので、スキル数はNPC召喚士12レベル分くらいの強さがあります。

 NPCにとって召喚獣は格上の召喚士にしか従わないものであるため、力量に合わない召喚獣を引いてしまった場合は、見合った力量となるまでパーティに出さないようにするそうです。


 だからいきなりスペクターを合体して寺院で無双するというのは、プレイヤー召喚士にのみ許された行為だったわけですね。


 しかし腑に落ちました。


 NPC召喚士はそれなりの数が居ます。

 この召喚士たちがプレイヤーと同じように成長していくとしたら、多分プレイヤーなんていなくてもいずれ魔神を討伐できてしまうはずなのです。


 プレイヤーが不要でNPCが大活躍するゲームなんてクソゲーですからね。

 そういう意味ではNPCの成長が不遇なのではなく、神の手で直接召喚されたプレイヤーこそが特別な才能に満ち溢れて自在に成長できる恩寵を受けている、という解釈が成り立つのです。


 これはあくまでゲーム。

 プレイヤーが楽しむことを前提に作成されているのですから、ある意味で当然の仕様です。


 そしてこれは「NPCが困っていたら助けましょう」、つまり「力ある者は弱き者を助けよ」というRPGの基本精神を求められているということです。


 この手のゲームの基本ですが、往々にして自由度の高さとともに無視されることもあります。

 特に多人数の参加するMMOはある意味で競争ですから、ゲーム的なメリットがなければ人助けなんてしてられません。


 まあ大抵は報酬ありますから、それを目当てに人助けは積極的にするものなのですが。


 さて話題が横道に逸れましたね。

 私が訊きたいのは新しい狩場についての情報なのです。


「朽ち果てた寺院が物足りない、か。まったく羨ましいやら恐ろしいやら……複雑な気分だ」


「すみません。しかし魔神を討伐するために神に召喚されたのですから、強くなるための努力を惜しむわけにはいかないんです」


「……なるほど。君たちの頑張りで世界は救われる、のか。それは確かに重要だな」


 ウルシラさんは神妙な表情になった後、言いました。


「メオントゥルムの街に行ってみてはどうだろう。アドリアンロットよりよほど大きい上に、この街にないギルドもあると聞く」


「この街にない、ギルドですと……!?」


 え、ということは他にも職業があるということですか!?

 それは第三職業が解禁されるまでに行っておかないと!!


 逸る気持ちを抑えながら、ウルシラさんに問います。


「そ、それはどのようにして行けば良いのでしょう?」


「ううむ。北にある山々を越えた先なんだが……」


「北ですね、分かりました!」


「ちょおっと待てえぇ!!」


 ガシッと肩を捕まれ、椅子に座らせられます。


「ファナ、いいか。北の山嶺というのは非常に危険な場所なんだ。それこそ人通りなんて皆無だ。山に入ったら死ぬ、北の山々は本当に恐ろしいところなんだ」


「え、なんですかそれ」


 危ないところでした。

 今の私なら、何も考えずに北の山に突撃していましたよ、絶対。


「では、メオントゥルムにはどうやって行くのですか?」


「行く方法などない」


「…………はい?」


「正確には、稀に腕の立つ召喚士が何人かで一隊を率いて山を越えてやってくることがある。十年に一度もないくらいの頻度でな」


「え、交易とかしているんじゃないんですか」


「無茶だ。山を超えなければ辿り着けない街だぞ。どうやって行くんだ」


「えーそんな」


「……とはいえ、お前たち神に召喚された特別な存在ならば、あるいは越えられるかもしれん」


「む、そうですよね!」


 新しい街と新しい職業の情報があって、行く方法がないなんて有り得ません。


 どうもウルシラさんによると、北の山嶺を越える以外には海を渡って迂回するしかないそうです。

 しかし海は海で危険な魔物が多く、特に海中に引きずり込むような魔物がいるため、山を行くより危険なのだとか。


 まあそれでも漁村があるあたり、逞しいですねこの世界は。


 もしかしたら海関連の職業もあるかもしれません。

 でもネクロマンサーを中心に考えると、あんまり相性がいいとも思えませんね。


 まずはメオントゥルムを目指すことにしましょう!


「ファナ、何日掛かるかわからないぞ。野営の準備もちゃんとするんだぞ」


「や、野営ですか?」


 思わず声が裏返ります。

 こちとらそんなアウトドアな趣味はありませんので、何を用意すればいいかわかりませんよ!


「う、ウルシラさん~」


「仕方ないヤツだな。買い物に付き合ってやる。手持ちはあるのか?」


「あ、それは昨日、寺院で稼いできたので」


「そうか。そういえばファナ以外にも召喚士が入っていたな。その、ファナたちに交流はあるのか?」


「いいえ基本的にないですよ。ただ昨日のメンバーのリーダーとは顔見知りでしたけど、たまたまですね」


「そういうものか」


 しばらく野菜ジュースを飲みながら雑談に興じ、買い物に行くことにしました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ