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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
プロローグ
3/151

3

 序盤は動きの悪いスケルトンですので、広いフィールドはあまり得意ではありません。

 幸い日光でダメージやペナルティを受けることはありませんが、出来ることなら暗視能力を活かせる灯りのない洞窟が理想的です。


 とはいえ、まずは街周辺の平原でレベリングですね。

 すぐに他のプレイヤーで溢れ返るのが目に見えていますから、ここを少しでも早く抜けて北の森に行ける戦力を整えましょう。


「よーし狩るぞー!」


「……」


 えいえいおー、の動きに合わせてヨサクも斧を振り上げます。

 お、気合十分ですね?


 北に向かう街道から外れて、草原に踏み出します。

 残念ながら気配察知などの便利スキルはないため、目についた魔物に片っ端から魔法を放ちアクティブにしていくか、魔物の方からこちらに接近してくるのを期待するしかありません。


 β時代の記憶が確かなら、ここら辺ではワイルドドッグ、つまり野犬が雑魚敵として現れるはずです。

 装備を整えたスケルトンとネクロマンサーの支援があれば、問題のない相手です。


 おっと、早速ワイルドドッグを発見。

 血祭りにしてやりましょう。


「ブラインド!」


 闇魔法の目くらましは強力で、抵抗力のない最序盤の魔物ならほぼ盲目状態にできます。

 まあ当分の間、闇属性はこれしか使える魔法がないんで弱かったら目も当てられませんが……。


 目が見えなくなったワイルドドッグは、それでも耳と鼻を頼りに私達の方へと走り寄ってきます。

 アクティブモンスターの悲しい性ですね。


 やっておしまい、ヨサク!


 バックラーを突き出すように構えたヨサクは、手当り次第に噛み付こうとするワイルドドッグの鼻っ柱にバックラーを叩き付けてから、斧を振り上げました。


 ガツン! と振り下ろされた斧から火花の散るようなエフェクトとともに、ワイルドドッグが派手に転げ回ります。

 ブラインドによる盲目状態に加え、バックラーによる打撃で体制が崩れていたところに斧による渾身の一撃。

 そりゃ、のたうち回ろうというものです。


 地面を這いずり回り、混乱の極みにあるワイルドドッグに、ヨサクが再び斧を振るいます。


 ガツン!


 ゴツン!


 ワイルドドッグは二度と立ち上がることはありませんでした。

 ヨサクの追撃によりHPがゼロになったワイルドドッグは、ポコン! というマヌケな音とともに砕け散ったのです。


 EXPバーがちみっと伸びて、アイテムドロップがあったことをログが告げました。


 野犬の牙ですかー。

 換金アイテムですね。


 魔物はこのように直接現金を落とさず、換金用アイテムをドロップします。

 生産素材になるアイテムをドロップすることもあるのですが、ワイルドドッグはどうでしたかねー。


 まあ、狩っていけばそのうち分かるでしょう。


 じゃこの調子でガンガン倒してレベルアップを目指しましょうか!


     ◆


 MPを回復するために街道に戻って座り込むのと、草原での狩りを繰り返すうちに、人が増えてきました。

 街の周辺では獲物の取り合いが始まりつつあります。


 これはちょっと場所を変えた方が良さそうですね。

 まだレベルがひとつしか上がってないので少し不安ですが、狩場を変えるリスクよりも、他のプレイヤーとのトラブルの方が怖いです。

 北の森の手前あたりなら、大丈夫かな?


 ……というわけで歩くことしばし。

 大した距離ではありませんが、森のすぐ手前までくるとハッキリ出現する魔物が変わります。


 先程まではワイルドドッグと、たまにブルースネイクという取るに足らない雑魚にしか遭遇しなかったのですが、ここでは厄介なコボルトが登場します。


 コボルトは二足歩行する犬です。

 粗末な布切れを纏っていますが、木製の棍棒を振り回してくるので、リーチの面でも野犬とは比較にならないほど危険な相手です。


 まあもっとも、ブラインドで何も見えなくなるのは野犬と変わりなく、闇魔法があればかなり余裕をもって対処できます。

 ただ森の周辺は魔物の出現密度がやや高く、処理に手間取ると複数を相手取らなければならない状況が増えてきます。


 そうなると前衛のヨサクを無視して、私に攻撃しようとする不埒な輩が現れ始めるのも必然、特にコボルトは積極的に後衛に抜けてこようとしてくる困った奴なのです。


 盲目状態にしておけばそうそう攻撃は当たらないのですが、問題はヨサクが目の前の敵と私の方に来ている敵のどちらを先に倒すべきか逡巡し始めることです。


 戦闘経験の浅いヨサクの判断力では、目の前の敵を確実に排除してから私の方に駆け付けるようにいちいち命令しなければなりません。


 口頭で指示を出すわけですから、その間は魔法が使えません。

 ……まあ、それだけの話といえば、それだけなんですけどねー。


「ヨサク、こっちはいいから目の前の敵を先に倒して! ……ブラインド!」


 私の方に走り寄るコボルトに目くらましを掛けて、距離を取ります。

 犬だけに鼻がいいのか、距離を詰めながら棍棒を振り回してくるのが鬱陶しいですねー。


 ヨサクの方もやたらめったら振るわれる棍棒に苦戦しているようです。


 やっぱりレベルが足りてないのかな?

 MP消費を気にしている場合じゃなさそうですね、火力を増強しないと押し負けそうです。


「ファイヤアロー!」


 火魔法は闇魔法と違って最初から攻撃魔法があります。ただしブラインドより消費が重く、ヨサクの斧を二回当てたダメージより少ない程度なので、できればケチっていきたいところですが……そうも言ってられませんね。


 アロー系の魔法は誘導性能があるので、大雑把な照準でも味方を避けて敵に命中してくれます。


 赤く燃える矢が緩い弧を描いてコボルトに炸裂し、敵のHPバーがガクンと減りました。


 さて、あとはヨサクの仕事ですよー。


「……」


 斧による追撃でなんとか一体を処理し、もう一体にはブラインドをもう一度かけ直した上でファイヤアローを叩き込み、ヨサクに任せます。

 ……うんうん、無事に撃破しましたね。


 しかしさすがにヨサクのHPも減りましたねー。

 アンデッドは普通の回復魔法でHPを回復させることは出来ません。


 ネクロマンサー専用魔法の出番ですね!


「リペア・アンデッド!」


 黒い光に包まれたヨサクのHPバーがググっと回復、全快しました。

 さすが専用魔法、効果が高い。


 ……ただネクロマンサー本人はアンデッドじゃないので、結局は普通の回復魔法も必要なんですけどね。

 もちろんその辺は抜かりなく、地魔法を習得してあるんですが……防具を後回しにしているとおり、しばらく出番はないでしょう。


 コボルト二体に対してブラインド三回、ファイヤアロー二回、リペア・アンデッド一回……いきなりMP効率が悪いですね。


 その分、経験値は少し多めに貰えて、レベルアップしました。

 これでレベル3ですね。

 この狩場での戦いが少しでも安定すると良いのですが……休憩を挟みながら気長に頑張りましょう。


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