24 召喚
日付が変わろうとしていますが、そんなことより召喚獣合体システムを早く確認したくて、私はソウルブリンガーギルドにやって来ていました。
さすがにこの時間帯だと、プレイヤーは宿で休んでいるようですね、人が明らかに少ないです。
ソウルブリンガーは人数の不利を補って余りある職業で、特に最大火力に関しては他の追随を許さない最強職の一角です。
当然、最弱職と目されているネクロマンサーとは数が違いますので、ギルドは大抵、混雑しているのだとか。
目立つのは好きではないので、とっとと登録しちゃいましょう。
「すみません、登録したいのですが」
「はい、少々お待ちください……ああ第二ギルドの登録ですね。資格を確認しました。ようこそソウルブリンガーギルドへ、ファナさん。歓迎いたします」
……ネクロマンサーギルドとは受付の態度が雲泥の差ですねえ。
「ええと召喚と合体についてなのですが……」
「はい。召喚はネクロマンサーギルドでもソウルブリンガーギルドでも問題なく行えます。許可がおりることはまずないと思いますが、別のギルドの召喚陣でも、問題なく召喚できますよ」
なんと、あれは統一規格だったんですね。
「合体につきましても、同じく召喚陣の元で可能となります。合体の仕様につきましては、ファナ様にはヘルプが解禁されましたので、そちらをご覧になってください」
ああ、疑問がひとつ氷解しました。
この『幻想と召喚の絆』が十年分のアップデートを経ているとしたら、ヘルプの内容が圧倒的に足りていないのです。
かなりの仕様変更があったにも関わらず、あくまでβ版から正式版への移行によって変わったかのようなテキストしか見当たらなかったのです。
順次解禁されていくなら、これから先も楽しめそうですね。
既にレベルは10、β時代にはなかった第二職業と召喚獣合体システムが解禁され、これから先は完全に未知の領域です。
私の冒険は真実、ここから始まるのです。
◆
召喚スペースを借りました。
ソウルブリンガーの召喚スペースは、交差するハルバードや紋章の描かれた盾などが飾られており、騎士の部屋といった趣です。
さあさあ部屋の内装なんでもうどうでもいいですよね?
さっそく、召喚していきましょう!
第二職業はレベルの数だけ、とはいかず、登録した時点で五体の召喚ができるという仕様になっています。
もちろんレベル11以降は一体ずつ召喚できるので、第一職業と合わせて召喚獣が二体ずつ増えていくというインフレっぷりです。
本当、どんなバランスになるんでしょうね。
さあ早速、召喚しますよー。
まずは期待のソウルブリンガー五連ガチャです。
「まずは……武器召喚!」
そうそう言い忘れていました。
ソウルブリンガーは二種類の召喚が選択できるのです。
すなわち武器か防具。
武器ばっかり、防具ばっかりに偏ったら悲惨ですからね。
たとえ戦闘では頼りないゾンビくんでも、パーティ編成でゾンビだらけにすることは可能です。
しかしソウルブリンガーは装備品なので、二刀流するにしても片手武器はふたつ、鎧など同部位の防具はもちろん重複しません。
その辺の手詰まりをなくすための仕様なのでしょうね。
シュキーン! と魔法陣が輝き、武器がせり上がってきます。
【ソウル・ブレイドを召喚しました】
ううむ、剣ですか。
今のところ不要ですね。
「はい次! 武器召喚!」
しゅきーん、おやこれは。
【ソウル・スタッフを召喚しました】
もしかしてもしかします?
後でマドカと合体できるか、確認しましょう。
「はい次ぃ! 武器召喚!」
しゅきーん!
【ソウル・ショートスピアを召喚しました】
ち、違う。
そうじゃない。
どうか斧を私に!!
「ほら次ぃ!! 武器召喚!」
シュァァァァアっ!! と魔法陣が激しく輝き出します。
これはレア演出、来ましたか!?
【ソウル・チャクラムを召喚しました!】
――ってなんやねんそれ!!
いや思わず関西弁でツッコミいれてしまいました。
チャクラムは知ってますよ?
円形の刃物で、投擲武器ですよね。
でもさあ、そこは斧でしょ?
レア斧、出る流れだったでしょ?
「はあ。最後に、……防具召喚!」
テンションだだ下がりです。
念のためひとつは防具を引いておきましょう。
使える奴だといいんですが……。
しゅきーん。
【ソウル・ブレストプレートを召喚しました】
おや、これヨサクに丁度よさそうですね。
斧じゃないのは残念ですが、もし合体可能なら鎧もいいかもしれません。
何と言っても、前衛の要ですからね。
さて皆さん、実はまだ寺院で大量にレベルアップしたネクロマンサー分が引けるのをお忘れないでしょうか。
ここで召喚できるそうなので、部屋に違和感がありますけど引いてみましょうか。
ネクロマンサー六連ガチャ、さあレア召喚獣よ、来い!
「召喚!」
もちろん、さっきから叫んでる呪文は不要です。
ずもももも……あ、ここでも煙なんですね。
【スケルトン・ソードマンを召喚しました】
おっとホネ二体目ですねえ。
……うん?
もしかしてこれ、ソウル・ブレイドと合体できるんじゃ……。
ヨサクを差し置いて合体するだなんて、なんとナマイキな新入りなんでしょう。
可愛いから許します!
「次ぃ! 召喚!」
ずももも。
【ゾンビを召喚しました】
「はい次ぃ! 召喚!」
ずもももも……。
【ゴーストを召喚しました】
「く、次ぃ! 召喚!」
ずもももも……。
【ゴーストを召喚しました】
連続でダブったぁ!!
これでゴーストは三体目です。
攻撃能力を持ったら化けると思うのですが、現状では完全に持て余していますね。
「つ、次ぃ。召喚!」
ズアっと黒い煙が噴き出します。
来ましたね、レア演出ですよ!
【スケルトン・アーチャーを召喚しました!】
おおう、君か。
レア召喚獣の中では微妙枠のスケルトン・アーチャー君でした。
遠距離攻撃ができる、というだけの理由でのレア昇格しているスケルトンです。
能力値は若干高いようですが、所詮はスケルトン。
装備を整えなければ戦力にはならないでしょう。
ソウルブリンガーでも弓を引いていませんし、いまひとつな引きでしたね。
まあレア引き出来ただけでもラッキーですし、スケルトンくん可愛いので大いにアリなんですけどね!
さあ次で最後、六連目ですよ。
「召喚!」
ずもも……うん?
見慣れないシルエットですよ?
【マミーを召喚しました】
…………。
えーと、マミー?
いえ分かりますよ、全身包帯のマミーですよね?
え、もしかしてアップデートで追加されたんですか、しかもレアじゃなくノーマル召喚獣として。
これはちょっと検証が必要ですね。
いったいどんな性能なのか、楽しみが増えましたよ。
召喚回と合体回が掲示板回と同様に見分けがつくよう、サブタイトルを編集しました。
これは作者の利便性のための措置です。あしからず。