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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
合体召喚獣編
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新章「合体召喚獣編」、まったり始まります。

「ファナ、とりあえずソウルブリンガーギルドへ案内するということでいいのだな?」


「はい。馴染みがないので助かります、ウルシラさん」


 朽ち果てた寺院を無事にクリアした私とウルシラさんは、アドリアンロットの街に戻ってきました。


 時刻は午後十一時。

 翌日に仕事があるなら就寝する時間ですね。

 ……なければゲームを朝までコースなんですが、やっぱり最近は歳のせいか徹夜も厳しくなってまいりました。

 肉体的にはハタチくらいが全盛期ってあれ、本当ですよね。

 社会人になってつくづく思いました。


「しかし疲れた。私は大して戦っていないが、先に何か食べたい。ファナ、ギルドに行く前に食事にしないか」


「ええ? 食事ですか」


 このゲーム、『幻想と召喚の絆』は五感没入型のVRゲームのご多分に漏れず、食事要素があります。

 ただ空腹ゲージなどがあって食事をしないとペナルティがあるようなことはありません。

 なぜなら擬似的にでも食事をしてしまうと、……恐ろしいことに現実でお腹が空いてしまうのです。


 身体は何も食べていないにも関わらず、ゲーム内では美味しいものを食べる。

 梅干しを目の前にした日本人が口内に唾液が分泌されるように、ゲーム内で食事をすると胃腸が活発に活動し始めるのです。

 しかし消化するものは一切ない。

 そうすると身体は消化に対して食事が足りていないと判断して、空腹を訴えだすのです。


 さて賢い皆さんはここで疑問を持つでしょう。

 ならば満腹感を一緒に与えればいいではないか、と。


 しかしそれは駄目なのです。

 我が社のVRゲームの安全基準に抵触してしまうのです。


 あ、現実ではとっくに私は死んでいるので、今はもう社員じゃないですね。


 ともかく実際に栄養も取らずにゲーム内で満腹になる、それがどれほど危険かは想像に難くないでしょう。

 ダイエットに活用する女子が必ず現れます。

 そのような状況になれば、行き過ぎたダイエットにより病院沙汰になり、ハードメーカーの訴訟による損害は計り知れないものとなるのです。


 そういうわけで、ゲーム内で食事をすれば文字通り美味しい思いができて様々なバフが掛かるのですが、空腹ゲージのようなものはないので、『幻想と召喚の絆』では全く食事をしなくても差し支えない仕様になっています。


 ……そういうわけで魔法を撃つばかりの私には旨味のあるバフは限られており、そうするとわざわざ限られたバフを得られるバリエーションの少ない食事をする時間の方が惜しい、というゲーマー的な思考が優先されるのです。


 つまり食事に、興味ないのです。


「私は別に食べなくても平気なのですが。まあ、ウルシラさんが空腹だと言うなら、お付き合いしましょう」


「え、神に召喚された者たちは食事が不要なのか?」


「食べれないわけでもないし、好んで食べる人も多いですよ。でも全く食べなくても支障はありませんね」


 どうやらこの話は知らなかったようで、ウルシラさんは大きな衝撃を受けてしまったようです。


「ええとウルシラさん、そんなにショックですか? 私たちに食事が必須でないことが」


「いや、まあなんというか。ショックというか納得したというべきか」


「はあ」


「実はウチの両親が料理屋をやっていてな。大量の客が来ると期待していたのだが、いや確かに大量に客は増えたのだが、街が思っていたより食料の消費が伸びなかったのだ。あれには領主様も商人たちも困惑していてな」


「あー特需を睨んでいたのに肩透かしだったわけですか。そもそも召喚士になりたての私たちじゃ、食事よりまず装備から揃えますよ」


「いや。その日の食事より先に、装備を整える方がおかしいだろう」


「おや、冷静に考えれば全くその通りですね」


 しかしウルシラさんの実家が料理屋だとは知りませんでした。

 兎人族の料理屋ですか……少し興味はわきましたね。

 ドロップアイテムも大量に手に入りましたから、現金化した暁には懐には余裕があるはずです。

 ……逆に言えば、現金化しなければ手元にお金はありません。


「あーウルシラさん、申し訳ないのですが現金の持ち合わせが少ないので、ドロップアイテムを幾つか譲るので奢ってください」


「ああ、いつも持ち込んでいる薬師に霊素を売りたかったから丁度いい。かなりの数を倒していたから、数はあるだろう?」


「はい、二十五個ありますね」


「ほーう。では高純度な奴がみっつほどありそうだな」


 どうやら私が倒したイビルゴーストをカウントしていたようですね。


「そちらの方が都合がいいのでしたら、高純度な方でも構いませんよ」


「む、それひとつでウチの店の料理は全種類出してお釣りを出さねばならない。悪いが普通の霊素で十分だ」


「あれ高純度霊素ってそんなに高級なものでしたっけ?」


「いやまあ、ウチの店が庶民向けの料理屋だからという理由のほうが大きいな」


 なるほど、料理は安価でおそらくメニューも少ないのでしょう。


「では食事をした分だけ、霊素を差し上げます。勘定はそっちに任せますよ」


 どうせ相場が分かりませんしね。


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