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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
朽ち果てた寺院編
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 癒やしタイム終了、さあ攻略に戻りましょう!


 マドカと私のMPがきっちり全快したところで、再びヨサクとマドカという黄金コンビで布陣を整えます。


「ん、ファナ。休憩はもういいのか? では先に進むか」


「はいー。付き合わせてすみません。多分、ウルシラさんなら一人でも余裕なのでしょう?」


「そうでなくては、そもそもネクロマンサーギルドの嘱託になどなれんからな。とはいえ勘違いするなよ、私はあくまで仕事を請け負っているだけで、ソウルブリンガーなんだからな。所属もソウルブリンガーギルドだ。あとエレメンタラーギルドだな」


「分かってますよ。…………うん? 今なんと」


「ん?」


「エレメンタラーギルドにも、……そうか。10レベル以上なら当然でしたね。うっかりしてました」


「ああ。二つ目のギルド登録資格の話か? 当然、私はクリアしているとも」


「と、ということは召喚獣の合体も既に?」


「ああ。いま身につけている私の装備はみっつともそうだが?」


 なんということでしょう!


 βテストのときはレベルキャップが10でしたが、二つ目のギルドへの登録は実装されておらず、もちろん召喚獣合体も未実装でした。

 正式サービスではレベル10でそれらが行えるという情報と、ゾンビ・ウルフやセイバー・ドールなどの合体後の召喚獣の映像がチラっと公開されていただけだったのです。


 まさかここで合体召喚獣に出会えるとは……ああでもソウルブリンガーだとなんかありがたみが薄い気がしますけど。


 そこから私は攻略そっちのけで質問モードに切り替わりました。

 そうですよ、この世界の住人であるNPCなら詳しいに決まっているじゃないですか。


「いや自分の職業くらいは確かに把握しているが、他の職業のことまでは詳しくないぞ」


「でもご同業が全員、ソウルブリンガーとエレメンタラーというわけではないでしょう!?」


「まあ……そうだな」


「ネクロマンサーとソウルブリンガーについてはどうでしょう。そこが一番、気になっているのですが」


 公式がチラっと出した情報の中にあるセイバー・ドールは、ドールメイカーのメイド・ドールがソウルブリンガーの剣を持っているというだけの「どこが合体やねん!」と思わず大阪弁で罵りたくなるような雑な合体結果でした。


 しかしこれが示す事実は大きいのです。

 例えばソウルブリンガーで斧を引いたら。

 その斧を、ヨサクに持たせることができたら。


 魔法の斧をもったヨサクが誕生するかもしれないのです。

 しかもパーティ枠は恐らく一体分で。


「ああ、いるな。スケルトンに槍を持たせている奴が」


「やっぱりー!?」


 いける、いけますよソウルブリンガー!


 実のところやはり公式のゾンビ・ウルフが気にはなっていたのです。

 戦力的に弱いゾンビをアニマルテイマーのウルフと合体させたら、なかなか強くなるのではないかな、と。


 しかし正直、動物に興味ないのですよ私。

 医学も人体の方でしたし、魔物でいっそ実在しないような、それこそドラゴンとかフェニックスとかまで行けばまた違うのですが。


 ひとまずレベル10になってからまた吟味するとして、ソウルブリンガーは二つ目の職業としては有力だと判明したのは大きいです。


「ウルシラさんのお陰で、かなりテンションが上がりました」


「そうか。まあ先人の話は聞いておけということだ。……ところで、本当にここから先に進むのか? さっきの戦いはかなりギリギリだったように見えたが」


 そうなんですけどね。

 まあ勝利の方程式は、すでに解いてあるので。

 やっぱり答え合わせをしないとスッキリしないのですよ。


「もちろん進みます。万事、予定通りです」


「……そうか。手は出さない、君の予定とやらに期待しておくよ」


 ウルシラさんも私の手腕を認めつつあるようですが、しかしこの先に待ち受ける危険のことを考えると、頭から信用することもできないのでしょうね。


 しかしウルシラさんは光属性の剣をお持ちだそうですが、ということはアンデッドの特性には、少なくとも使役する側としての知識については、詳しくないのかもしれません。


 次の攻略はそこら辺がポイントになりますからね。

 種も仕掛けもないガチバトル、引き続き低レベル朽ち果てた寺院攻略ネクロマンサー縛り、進めていきます。


     ◆


「なるほどな。確かにこの光景は非常識なものを感じるが、言われてみれば当然だったな」


「でしょう? アンデッドに毒は効きません」


 私たちは階段を降り、寺院の元厨房にやってきていました。


 食堂が併設されているため、厨房と合わせたスペースはそれなりの広さがあります。

 そしてなんといっても部屋一面に生えた紫色の毒々しいカビでしょう。

 カビが放つ胞子は猛毒で、この広い部屋に充満しているのです。


 カビのコロニーにはコアと呼ばれる球体の塊があり、それを破壊することで半径二~三メートルほどのカビが胞子の飛散を止めます。


 私とウルシラさんは部屋の入口からも離れ、毒を吸い込まないよう布で口元を覆い、ヨサクとマドカがコアを破壊しているのをただ待つだけです。


 遠くからヨサクの斧がコアを叩き割る音が聞こえ、マドカがコアを魔法で焼いた焦げ臭い臭いが部屋の中から漂ってきます。


 あ、ちなみにヨサクの斧にはエンチャント・ファイヤをかけてあります。効果が切れたら戻ってくるよう予め命令してあり、エンチャント・ファイヤをかけ直すようにしています。


 エンチャント・ファイヤなしでの攻撃はかなりダメージが低くなり、コアを破壊するのにヨサクの斧では十数回は叩かなければなりません。

 エンチャント・ファイヤありでは劇的に効果が上がり、なんとたった四~五回でコアを破壊することができるのです。


 エンチャント・ファイヤは割りと燃費がいい魔法で、ファイヤアローと同等の消費MPにも関わらず、持続的に効果を発揮するのが実にコストパフォーマンスに優れていますね。


 待つことしばし。

 三十分とかからず、毒のカビのコアを破壊し尽くしたヨサクとマドカが帰還しました。


 ログを確認すると、倒したコアの数はピッタリ30個です。

 いやあ経験値とドロップアイテムがうまうまですね。

 先程、大量のイビルゴーストを倒してレベルアップしたにもかかわらず、持ち越した経験値が結構あったため、またしてもレベルアップを果たしましたよ。


 レベル7といえば、ゲーム開始からかなり頑張っても二~三日はかかるレベルです。

 しかもまた経験値の持ち越しが在り、EXPバーは半分ほど貯まった状態になっています。

 これは次のレベルアップもありそうですね。

 β時代の低レベル攻略ではこのあたりでレベルアップも頭打ちだったのですが、敵の数がやや多い不運が、幸運に転じているようです。


「厨房の毒カビは積極的に襲い掛かってくる類ではないとはいえ、アンデッドに毒がここまで効果が無いとはしらなかった。漠然と耐性がある、程度の認識だったぞ。ファナのおかげで勉強になった」


「いえいえー。というか、ウルシラさんはここもひとりでなんとかなさっているのですか? むしろ後学のため、どうやっているのか教えてもらえないでしょうか」


「そのくらいなら構わないぞ。手の内というほど大したことでもないしな」


 ウルシラさんはおもむろに右手を胸甲に当てると、


「目覚めろ、風の精霊鎧。シルフィード・ブレスト」


 キラキラと白みがかった緑色の光が、ウルシラさんの全身を覆います。


「この状態は、常に私の周囲の空気を浄化してくれるのだ。部屋の毒は効かないので、コアをひとつずつ破壊している」


 ……凄いですね、ソウルブリンガーとエレメンタラーの合体鎧は。


 合体召喚獣のポテンシャルは相当に高いようです。

 レベル10が待ち遠しいですね!


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