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ブックマーク200件突破記念SSを活動報告に上げました。
沢山の方々に読んでもらえて嬉しいです。
また次々章の予約投稿も済みましたので、こちらも活動報告に詳細な日程などを書いておきます。
どうか引き続きこの物語をお楽しみください。
「お見事」
ウルシラさんから褒められてしまいました。
それ自体は嬉しいことなのですが、正直、内容はかなり悪いものでした。
β時代の低レベル寺院攻略において、ここまでの数のイビルゴーストが道を阻んだことはありませんでした。
これは正式版になったことや十年分のアップデートによる影響なのか、はたまた今同行しているウルシラさんのイベントが原因なのか。
いえ、例え理由が判明してもどうしようもないことでしょうね。
ここからも予定通りの戦術で押し通るのみです!
「ファナの実力では階段まで辿り着く前に死ぬだろうと思っていた。正直、なんども剣の柄に手がかかった」
「いえ、実際に不甲斐ないところをお見せしました。ここからは更に気を引き締めていかなければなりませんね……」
「ここからか……」
ウルシラさんが不安に満ちた視線を送ってきます。
当然でしょう。
私もこの先に何があるか知っているのですから。
「ファナ。明らかにしておきたい。君は神の手によりアドリアンロットの街に召喚された召喚士、ネクロマンサーだな」
「そうですね」
「この朽ち果てた寺院……祀られていた神の名さえも失われた亡者の巣窟に修行にやって来ている」
「そうですね」
「成長を温存し、回廊のイビルゴーストに対して付与魔法を用意してきた。次の対策もすでに心当たりがある、そうだな?」
「ウルシラさん。私はこの寺院について事前情報を持ち合わせているに過ぎません。何度か挑めば、先程の回廊ももっとスムーズに抜けられたでしょう。それこそ、ヨサクに触れることすらできずに、イビルゴーストどもを殲滅できました」
私はログからリザルトを開き、回廊での戦闘の結果を確認します。
イビルゴーストの数は二十八体。
ドロップアイテムのほとんどは換金アイテムである霊素で、みっつは高純度霊素というやはり換金アイテムでした。
あ、いや換金アイテムじゃなくて調合用素材だったかな。
ポーション類はアンデッドに効果がないのでスルーしてきたため、正直、詳しくないのです。
ただどうせ私にとってお金にしかならない、という事実は変わりません。
さて重要なのはドロップアイテムではありません。
そう、二十八体ものイビルゴーストを倒した経験値にあります。
低レベル寺院攻略とはすなわち、効率的なレベリングを兼ねているのです。
現在のレベルは6、いくら大量のイビルゴーストを相手にしていたとはいえ、ワイルドキャット戦から引き続き短時間での連続レベルアップです。
もっともこの朽ち果てた寺院の適正レベルは召喚獣を三体使役できるレベル10ですから、かなり無茶をしている状態にあります。
私もマドカもMPはほぼ空っぽ。
ここで効いてくるのはアンデッドにポーション類が効果を発揮しないことでしょう。
せめてMP回復ポーションをマドカに使えたら、もう少し楽ができたかもしれないのですが。
私は街でMPポーションを三本だけ買っておきました。
野犬の牙やコボルトの木の棍棒を売ったお金を全部はたいてようやく三本です。
あと少しイビルゴーストが多ければ、一本目を使わざるを得なかったでしょう。
……三本あれば、ギリギリ足りますかね。
「あ、ウルシラさん。ここで休憩していきたいんですが、いいですかね」
「もちろんだ。あれだけ魔法を連発したら、MPが底をついているだろう。よくもったな」
「精神を鍛えてありますからね」
初期作成のときに器用やら筋力やらを捨て去ったお陰ですね!
「いいだろう。ファナに今更言うまでもなさそうだが、ここにはなぜだかアンデッドは入り込まないからな」
「はい。では休ませてもらいますねー」
マドカと壁際に並んで、体育座りです。
ヨサクが所在なさげに立ち尽くしているのがなんとなく落ち着かないので、パーティから一旦外して代わりにゾンビくんを出してみます。
「……うん? ゾンビに変えるのか? 先程のスケルトンの方が強いだろう」
「いや休憩が必要なさそうだったので、あんまり呼んでない子との触れ合いの時間にしようかなーと」
「触れ合いだと……?」
ウルシラさんはおぞましいものを見るような目で私とゾンビくんを見比べ、自分の肩を抱いて後ずさり始めました。
みんなゾンビ、嫌いですよねー。
私は気にせず、ゾンビくんを目の前に座らせました。
別にぺたぺた触りたいわけじゃないんですよ。
ただこうなんというか、ぼへーっとしたこの顔に癒やされるんですよ。
そういえばカナコさんに「県庁などのマスコットに通ずるものがありますよね」と言ったことがあるのですが、ものすごい勢いで否定されたのをなんとなく思い出しました。




