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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
朽ち果てた寺院編
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「そもそもウルシラさんこそ、こんなところで何をしていたんですか」


「私か? 私はネクロマンサーギルドの嘱託召喚士として、この寺院のアンデッドを定期的に掃討しているのだ」


「はい? なんでソウルブリンガーのウルシラさんがネクロマンサーギルドに……いやまさか、そんな。そこまで人材不足なんですか、ネクロマンサーギルドは!?」


 確かにギルドの建物はボロかったし、受付のオジサンも態度悪かったですし。

 プレイヤーに人気がないのはともかくとして、NPCの間でも人気がないというのでしょうか。


「いや半分はその通りなんだがな。ネクロマンサーはアンデッドを使役する召喚士だが、アンデッドとの戦いを得意としているか、といえば人によるとしか言いようがない。私の剣は光属性を帯びているため、アンデッドには滅法強いのだ。だからネクロマンサーギルドからの仕事を受けているんだよ」


「なるほど、確かに言われてみれば納得の理由ですね」


 プレイヤーに関してもそうですが、『幻想と召喚の絆』の世界の召喚士というのは、召喚能力以外は特に傾向や制限はありません。

 私にしたって魔法中心のスキル構成だから杖を選びましたが、剣スキルを習得して革鎧を着ればヨサクの隣で戦士として戦うことができるのです。


 もちろん初期作成で戦士に必要そうな能力値はあらかた下げて、知力と精神力につぎ込んでしまったため、今更、前衛に出るような無計画かつ無謀な真似はするつもりもないのですが。


 そういうわけで、例えばネクロマンサーの専用魔法以外を使えないネクロマンサーなんてのもいるわけで、そういう脳筋戦士は当然、対アンデッド戦闘に強いとはとても言えません。


 ……しかしそうなると、ネクロマンサーの専用魔法には対アンデッド用の魔法がないのでしょうか。

 疑問に思ったのでウルシラさんに聞いてみると、


「確かターン・アンデッドとかいう魔法があると聞いたことがある。ただ一体ずつアンデッドを倒すだけの魔法だとも聞いているから、それなら私が剣を振った方が早い。MPも使わないしな」


 あー、一応あるにはあるんですね。

 少し安心しました。

 アンデッドの専門家であるネクロマンサーが、まさか対アンデッド魔法を持っていないなんてダサすぎますからね!


     ◆


 ウルシラさんの提案を受け入れた私は、朽ち果てた寺院の攻略を再開することにしました。


 現在のレベルは5、この『幻想と召喚の絆』ではレベルアップするごとに召喚獣を増やす事ができますが、同時にスキルの段階を上げたり、新たなスキルを習得するためのスキルポイントSPを1点、獲得できます。


 プレイヤーキャラクターの初期作成では、基本的なスキルを五つ自由に選択する事ができます。

 私が選んだスキルは、闇魔法、火魔法、地魔法、杖、暗視ですね。

 私にとっては五つとも必須と言えるスキルです。

 すなわち、ここ朽ち果てた寺院の低レベル攻略を見据えた構成なのです。


 ちなみに杖スキルは杖を振り回す為ではなく、杖の魔力ボーナスの補正を高めるために習得しました。

 振り回すつもりはないのですが、もし後衛に敵が抜けてきた際には、護身術として活躍の場があるやも知れません。


 さてレベルアップは今のところ地魔法を第2段階に進めてサンドアーマーの魔法の習得に費やしました。


 あと三つのスキルを伸ばすか習得することができるのですが、実は初期作成では取得できない複数のSPが必要なスキルがあるのです。


 その名も付与魔法!


 ゲーマーならば、もう名称だけでその強さが期待できそうなスキル名ですね。


 必要なSPは3なので、ピッタリです。

 早速、習得しましょう。


 ポチッとな。


 はい、これで私は付与魔法の使い手になりました。

 これが攻略の鍵になります。


 NPCのウルシラさんにはメニュー操作が見えていないのか、それとも見えているけど興味ないだけのか、ちょっとよく分かりませんねー。


 仕方ないので、メニューウィンドウを持ってウルシラさんの顔の前でひらひら振ってみます。


「……ファナ。それは君の修行にとって、なにか意味があることなのか? 非常に目障りなのだが」


 眉根を寄せたウルシラさんに「すみません、これ見えるのかなーってふと気になったものですから。知識を増やすも修行のうち、ですよね?」


「見えている。が、わざわざ顔の前で振り回す必要は無かったはずだぞ」


 もし見えないと嘘をつかれた場合のために、視線の動きで見破れるかなーっと思ったのですが、普通に見えるようですね。


 気になったことは確認できたので、早速、進みましょうか!


「おいファナ、勝手に進み始めるな。せめて一言くらい声をかけろ。手出しはしないが、君の修行に差し支えない程度に話し相手になるくらいはいいだろう。ずっと無言では息も詰まる」


「確かにその通りでした。すみません、では先に進みましょう」


「うん。ところで付与魔法を習得したようだが、ここまで成長を温存したのか? 幼い割に先が見えているのだな」


 失敬な!

 これでも私は二十代後半ですよ!


 ……あーいや、でもアバターの容姿は十代半ばくらいでしたね。

 身長のせいでかなり年下に見られてしまったようです。


「ウルシラさん、えーなんというか私、精神的には二十代後半なので、あまり子供扱いしないでください」


「む、そうか。では君は神の手でアドリアンロットに多数召喚された者たちのひとりだったのか。かの者たちは外見と中身が一致しないことがあると聞いたことがある」


 公式の世界観でもそんな説明でしたね。

 しかし中身と外見の不一致とか、結構メタいこと言いますねえ。


 さてそんな話をしながら、入り口から見て礼拝堂の左手の扉をヨサクに開けさせます。

 外観がβのときと変わっていなかったので、マップが違うという可能性は頭から除外してあります。


 記憶のとおり、二階へ上がるための階段がありました。


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