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ブラックオーガ・メイジに気をつけておけば、後の敵は問題ありませんでした。
順調にスカウトだけを狙い倒し、ブラックオーガスカウト・レブナントは四体のレギオン編成となって、周囲の気配察知を担っています。
「まさかファナ様がこれほど強いとは……」
「いえいえ。まだまだ修行中の身ですよ」
どれだけ強くなっても、レベルがカンストするくらいでないと強くなったと豪語できません。
そういえば『幻想と召喚の絆』のレベルはいくつまで上がるのでしょうか。
第五職業がなかったのはともかく、レギオンという新しいシステムをレベル40で開放されたということは、またレベル50で新しいシステムが開放されるかもしれないということです。
一体、これ以上どう強くなるのでしょうか。
◆
適度に休息を取りながら一晩の野営を経て、遂に封印の塔にたどり着きました。
封印の塔は白い石造りの塔で、窓はありません。
高さは百メートルほどでしょうか。
ドナさんが緊張した面持ちで、塔を見上げます。
「ここが封印の塔です。六ケ所あるうちの街から一番近くにある塔ですね。ここは私たち戦士団が定期的に訪れ、変化がないか確認しています」
「他の塔は見て回らないのですか?」
「街はガエルミュラント以外にもありまして、それぞれ封印の塔から一日程度の距離です。見回りはそれぞれの街の戦士団が行っており、定期的に街の交流などもあります」
なんと。
他に五つも街があるのでしたか。
「塔の中はどうなっているのですか?」
「塔の内部については不明です。扉は堅く閉ざされており、内部に入る方法がないのです」
「そうでしたか。試しに扉を開けてようとしても構いませんか?」
「もちろんです。見回りでも扉が開かないか確かめていますから」
「なるほど」
では挑戦してみましょう!
両開きの扉は私からすると随分と大きいですが……さて。
リング状のドアノブを握り、ぐいっと引いてみます。
【第一の封印の塔の扉を開きますか?】
あ、やっぱりプレイヤーは開けるんですね。
もちろんここまで来たら、イエスですよ!
ギィイイイ、と音を立てて、私がドアノブを引かなくても両扉が勝手に開いていきます。
背後からは息を呑む声が聞こえてきます。
そりゃ触れただけで扉が勝手に開いたらびっくりしますよね?
「ファナ様! と、塔の封印を解かれたのですか!?」
「え、いや。扉が開いただけですよ。別に封印は解かれていないんじゃないですかね?」
多分ですが。
「ドナさん、とりあえず扉は開きましたし、中に入ってみませんか?」
「え、それは……」
迷っていますね。
ドナさんからしたらこの大事件を街に帰って報告しなければならないでしょうし、しかし扉が開いた以上、デビルサモナーなどが入り込む前に中を調べなければなりません。
両方しなければならないのが辛いところですが、優先順位はもちろん、目の前の塔ですよね?
「分かりました。半分はファナ様と共に塔の内部に、半分は塔の扉の前で待機。中にはネズミ一匹でも通すなよ!」
「は!」
元気よく返事が帰ってきたところで、ドナさんが人選を始めます。
さて塔の内部はどうなっているのでしょうか?
楽しみですね!