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西に向けて丸一日の距離に、封印の塔があるそうです。
ドナさんたちはすぐに準備をして、やって来ました。
どうやら塔までは割と頻繁に見回りするようで、野営などの準備は常に整っているそうです。
私も野営の準備は万端なので、すぐに出発と相成りました。
「それではよろしくお願いしますね、ドナさん」
「こちらこそよろしくお願いします、ファナ様。それからこちらの者達が同道します。女戦士のみで構成された隊ですが、男に引けを取ることはありませんよ」
「なるほど。よろしくお願いしますー」
二十人の女山人族の戦士たちは、各自敬礼で応えてくれました。
さあ、それでは出発しましょう!
パーティメンバーはいつも通りの面々です。
残念ながら街に入るときにジャイアントバットレブナントは破棄してしまいましたからね。
いや別にササキに不満はないのですが。
今回は戦士団の中に気配察知スキルをもつ方がいるそうなので、私は戦うことに専念すればいいだけで楽ですね。
「あれがファナ様の召喚獣……なんというか、邪悪さこそありませんが……」
「気味が悪いです」
「コラ!」
……なんかあまりいい反応は貰えませんねえ。
こんなに可愛い子たちなのに。
他人とセンスがズレているのは自覚しているので、別に今更ですね。
私たちを真ん中にして、ドナさんの部隊が前後左右に配置されています。
……しかし暇ですねえ。
魔物との遭遇戦もだいたいドナさんたちが処理してしまうので、やることがありません。
手伝っても良いのですが、出て来るのがレベル20程度の魔物ばかりなので私が戦っても経験値にならないのです。
魔なる神が封印されている地のくせに、魔物が弱いのは一体……。
「ファナ様、街を離れたので、そろそろ魔物が強くなると思います。出来る限りはお守りしますが、お気をつけください」
「え、街の近くだから魔物が弱かったんですか?」
「はい。街周辺は我ら戦士団が強い魔物を掃討するなり追い返すなりしておりますので」
「あー、そうだったんですか」
そういえばメオントゥルム周辺もやけに魔物が弱くて不思議でしたが、NPCたちが頑張った成果だったようですね。
それでもレベル20が弱い魔物ということは?
……私に丁度いいレベル帯の魔物が出現するということではないでしょうか。
ドナさんたちの動きもいいですし、獲物を取られないようにしないといけませんね。
◆
《ブラックオーガ・ファイター
Lv35 斧15 敏捷強化5 筋力強化10 生命強化5》
《ブラックオーガ・プリースト
Lv35 杖10 闇魔法10 知力強化5 精神強化10》
《ブラックオーガ・メイジ
Lv35 杖10 火魔法10 知力強化10 精神強化5》
《ブラックオーガ・スカウト
Lv35 短剣10 回避5 気配察知10 敏捷強化5 感知強化5》
うーん、物足りない。
でもブラックオーガ・スカウトは気配察知を持っていますね。
あれを今回の獲物にしましょう。
「ドナさん、スカウトは私が倒しますので!」
「え?」
「行け、グラインダー、チゼル!! マドカ、タツヤ、フジキは魔法で狙え!!」
シュッ!
シュッ!
「……シャドウ、セイバー」
「……シャドウ、セイバー」
「……シャドウ、セイバー」
二本のフライング・ドラゴンクロウと三本のシャドウセイバーが突き刺さり、ポコン! と間抜けなエフェクトとともにスカウトは消滅しました。
いつの間にか三体とも闇魔法が第七段階以上になっていますね。
マドカに至っては第十一段階――つまりアストラルゲートが使えます。
いやあ成長したもんですね、みんな。
「ササキには悪いけど、クリエイト・アンデッド!」
パーティからササキを外して、ブラックオーガスカウト・レブナントを作り出します。
これで自前で気配察知できるアンデッドを手に入れました。
できれば後、三体ほど倒してレギオンにしておきたいところですね。