表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
炭鉱跡攻略編
133/151

122

 せっかくメオントゥルムにやってきているので、ヤツハカ城に寄っていくことにしました。

 住人召喚して、ヤツハカ城にスケルトン・テイラーを配備したかったのですが。


 ……なんですかねえ、この発展ぶりは。


 鍛冶工房が悪かったのでしょうか、今や城下町ができる勢いで掘っ立て小屋がならんでいます。

 いや掘っ立て小屋と呼ぶには少し立派ですね、簡易ログハウスとでもいいましょうか。

 木造建築物を量産しているのは、きっとスケルトン・ウッドクラフターに違いありません。

 そういえばソウル・大工道具なんてものがありましたね。


 鍛冶工房とコンボで急激に発展し始めているようです。


 まあいいでしょう。

 発展する分には問題ないですし、別に廃墟となっても一向に私は構いません。

 アンデッドがたむろしているこの城、この町。

 なかなか風情ある景色じゃないですかね。


 さてそんな変化を眺めながら、住人召喚陣を使うために玉座の裏にある階段を降ります。

 さあ、新しい住人を迎え入れましょう!


【スケルトンを召喚しました】

【財政学の書を召喚しました】

【ゴーストを召喚しました】


 ……おお、なんかとんでもないものを召喚してしまった気がしますよ?


 ううむ、こうなってくると一時間ほど滞在したくなりますね。

 すごい勢いでレベリングしたので、ここはのんびり内政しておきましょうか。


 ヨサク、ちょっと十五体合体した伯爵の実力を見せてくださいな!


     ◆


 さてさて、一時間でどう変わるでもありませんが、ユニオンポイントが伸びていることからして何か内政に進展があったのでしょう。

 全召喚獣配備はなんだかんだでポイントが伸びますねえ。


 油を売っていたのが悪いのか、いや別に友人と邂逅することが悪いことではないでしょうが、いつの間にかカナコさんたちがやってきていました。


「あ、ファナがいたぞ!」


 ノマキさんも一緒ですか。

 ドラゴンメイジの試練はどうしたんでしょうか、都会にやってきて羽根を伸ばしているのではないかと疑念がもたげます。


 ま、そんなことはさておき、友人との再開を喜び合いましょう。


「久しぶりですねえ。みさなん、いまどこでなにしているんですか?」


「それはこっちのセリフ。というかメッセージにもろくに返事しないし、ユニオンポイントはバカのように伸びているし、一体なにをしていたの?」


 カナコさんがやや不機嫌そうに眉をひそめて言いました。


 ああ……ツヴァイと比べて十五年も若いと考えると、こうなんだか可愛らしく思えるのが不思議です。

 れっきとした年下の妹ですからね。


「別になにもしていませんよ。今日は一時間ほど滞在して、召喚獣を配備していただけです」


「そう。いつの間にかヨサクが伯爵になっているし……今一体、何レベル?」


「40になりました」


 ザワ……ザワ……。

 え、ちょ、なんですかこの空気は。


 エクレアさんが「恐ろしい子!」とか言いながら顔の上半分に縦線入ってますし、てかそんなエフェクトあったんですね。

 エモーションエフェクト?

 へえ、知りませんでした。


 セインさんはがっくり肩を落としていますし、バラスケも苦笑するしかないようです。


 ソコヤマさんはもう私とどれだけレベル差があっても気にならないのでしょう。

 慈愛の目で皆を眺めています。


「ていうか、どこでどうレベリングしたらこの数日で40になるんだよ……」

「まあまあ。それはファナ様のことですから、自分より強い敵を求めてさすらったのでしょう」

「攻略組の倍近いレベルがありますわよ」


「……で、トロールテイマー・レブナントが激増していたのは一体、なに?」


 カナコさんが不可解な物を見る目で私に問います。

 ああもう、そんな目でみないでくださいよ!


「あれは次のレベリング候補地を探すためにですね。牧場を中心に探索していたんですよ」


「なぜ伯爵を置いて」


「それは……まあ新しい仲間たちをまとめ上げてもらうためにですかね?」


「自分で言っておいて疑問形……」


「ほら、周辺の探索なら戦力はエースが抜けても十分なわけですよ。みなさんも予備戦力くらいはあるでしょう?」


「まあ、必然的に予備戦力化せざるを得ないシステムだから」


 と、ここでセインさんが目ざとく私の召喚獣の数に目を留めます。


「あれ、ファナ。計算が会わないんだけど。レベル40ってことはパーティ枠は九体だよね? なんか多くない?」


「ああ、それはレベル40になったら疑問が解けますよ」


「そういう重要情報、掲示板に載せずにおくとやっかみが酷いよ?」


 セインさんも言いづらいのか、苦い顔で指摘してくれました。


 そういえば全く掲示板に情報を上げてませんね、私。

 まあそれは以前からなんですが、カナコさんと一緒に行動していないとつい、握りつぶして知らんぷりしてしまうのは悪癖ですね。


 仕方ないのでレギオンシステムのヘルプのスクリーンショットをカナコさん宛てのメッセージに添付して送ってあげました。


「やっぱり私に丸投げ……別にいいけど」


「すみません、多分、情報としてはこんなもんだと思いますけど」


「いや肝心のレベリングの内容は……それが多分、一番、喜ばれる。というか短期間でそのレベルになる方法があるなら是非とも聞きたい」


 みな頷いていますね。


「ええと、今はここから東にある山人族が作った炭鉱でアリを狩っていましたね」


「アリ? ジャイアントアントではない奴?」


「そうです。マーダーアントというジャイアントアントより少し小さいやつで、クリエイト・アンデッドでパーティに加えて、蟻兵誘引を使いまくってもらったんですよ」


「…………なるほど。その前は?」


「その前は適正レベル35のカタコンベですね。ルフレミラントの街中にあるダンジョンです」


「…………その前」


「ええと……支配地めぐりでしょうか?」


「ああ、そこに繋がるの」


 あ、ようやく納得してくれました?


「多分、ファナはレイドボスをソロで四回撃破しているから、突出したレベルになっているのだと思われる。それ以降は適正レベルのダンジョンなどで上げているようだし」


「まあ当然の結果ですね」


 セインさんが「いや。普通、レイドボスをソロで撃破しようとは思わないし、やってもできないから」と言いました。


「実際、プレイヤー数人でパーティ組まないとレイドボスには勝てなかった」


「そうなんですかー」


「どうやってソロでレイドボスに勝つのさ。ステータスもスキルも足りないだろう?」


「まあそこは気合でしょうか」


「気合でなんとかなったらレベルいらないって……」


 その辺はバラスケが「ネクロマンサーとソウルブリンガーで合体数が飛躍的に伸びているため、格上相手に渡り合えるのではないか」と自説を展開します。


 多分、その通りでしょうね。


 私の召喚獣はヨサクを筆頭に、合体数が五体以上が主戦力になっていますから。

 最初にスペクター化した時点で、武器と合わせて四体以上でしたからね。


 どうも掲示板の情報などを見るに、合体数は二、三体くらいが普通で、それらを消耗したら入れ替えるという戦術が基本になっているようです。

 特にソウルブリンガー武器を自身で装備して戦うスタイルのプレイヤーは、合体数以前に手数が足りないことでしょう。


 また事前情報ではソウルブリンガーが最強職であったため、自身で戦うスタイルのプレイヤーがトップ層に多いそうで、事前情報で最弱職であったネクロマンサーの私がトッププレイヤーという現在の逆転現象が起こっているようです。


「まあそんなわけで、これから私は炭鉱に向かうのですが」


「そう。私たちはこれからアドリアンロットの東方面に向かうところ」


「何かあるんですか、カナコさん?」


「ある。スキュラが倒されて、新しいダンジョンが見つかった」


「ほほう」


 どうも聞くだに適正レベル25程度のダンジョンらしく、カナコさんたちには少し格上で丁度いいから、一度見てみようということになったそうです。

 プレイヤーが複数いると戦力はその分、倍増ですからね。

 敵も増えますが、効率がいいならそこでレベルを上げていけばいいでしょう。


 私が適正レベル通りだと物足りないと言うと、彼女らも少し楽勝すぎると感じているようでした。

 やはり十年分のインフレがあるのでしょうが、カナコさんを除けば戦闘のプレイヤースキルが高い面々ですから、余計にそう感じるのでしょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ