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幻想と召喚の絆  作者: イ尹口欠
朽ち果てた寺院編
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 さて忘れる前にレベルアップボーナスの割り振りをしましょうか。

 実は朽ち果てた寺院を低レベルで攻略するために、ボーナスは全て温存してきたのです。


 ただ正直、正式版になってメニュー画面があまりに改善されていたため、ゲームバランスを含めた全体の仕様変更がどのくらいあったのか想像がつきませんでした。

 もしかしたらβ版の知識と経験は無価値になるのではないかと、内心不安だったのです。


 すぐにボーナスを割り振って草原でのレベリングの効率を上げたほうが良かったのではないか、という疑念が常に頭の片隅を占めていたのです。


 今になって真実を知った後は、その不安も当然のものだったと分かります。

 誰が正式サービス直後に十年分ものアップデートが反映されていると思いますか。


 というわけで、あれだけ大見得切ったにも関わらず、実は攻略については完全に賭けになります。

 しかし賭けに勝てたときの実入りは、それこそ他のプレイヤーを大きく引き離すものとなるでしょう。

 勝負に出る価値はあるのです。


 さてそんな状況ではありますが、朽ち果てた寺院の低レベル攻略に向けた今のところの私のプレイング、実はかなり順調でした。


 なにせログアウト障害で気を削がれてスタートダッシュに遅れたプレイヤーが多かったせいで、狩場が混み合うまで予想よりも時間が掛かったのですから。


 それにスタートダッシュが遅れた人の中には、かなり深刻な事態に直面した人もいたかもしれません。


 たとえ初日にログインしていたとしても、脳スキャンの条件を満たせなかったプレイヤーが結構な数いるはずです。


 例えば、そんな人とゲーム内で待ち合わせをしていたら?


 なぜか一向にやって来ないうえに外部と連絡がつかないのです。

 まったくスタートダッシュどころじゃありませんよね?


 そんなわけで草原でのレベリングは、目標こそパーティー枠の増えるレベル5でしたが、ここ朽ち果てた寺院攻略開始時点ではレベル4で十分に足りるのです。

 レベリングの最低限の目標は、実は達しているのでした。


 おっと前置きが長くなりましたね。

 ボーナスの割り振りはまず地魔法にひとつ、これだけです。


 さあ突入の準備は整いました、早速とりかかるとしましょう!


 朽ち果てた寺院に扉はありません。

 元は片開きの重そうな木の扉があった形跡がありますが、残念ながら今や外から丸見え、雨風をしのぐために入った野生動物がたむろしているのがよく見えます。


 さて第一関門、礼拝堂に群れるワイルドキャット戦、始まりですよー。


 ワイルドキャット……つまり野良猫のことですが、名前とは裏腹に連中のサイズは大人の虎くらいの大きさがあります。

 普通の動物ではなく、魔物の類だということでしょう。


「ヨサク、入り口に立って、そこから斧が届く範囲の猫を順に処理して!」


「……」


「サンドアーマー!」


 ヨサクの足元からゾワワっと砂が舞い上がり、体中を覆い始めます。

 これぞ地魔法第二の魔法、サンドアーマーです!


 全身を砂で覆うため、どうしても動きが鈍るという序盤の魔法にありがちなデメリットつきの防御魔法ですが、スケルトンにはほぼ関係ありません。

 なにせ全身ホネで収縮と膨張が必要な筋肉はおろか、関節には当然のことながら筋肉同士をつなぐ腱もありません。

 それどころか一部の軟組織がないため、関節に隙間すらあるのです!


 医学以前に、物理的な仕組みで動いていないんですねースケルトンって奴は。


 とはいえ砂を纏う分、やや動きは重くなります。

 逆に言えばそれだけ。


 多数の野良猫に引っ掻かかれても、ヨサクは泰然とした面持ちのまま、一匹ずつ順番に斧を叩き込んでいきます。


 ガスっ!


 ガスっ!


 ポコン!


 斧を何度か振るうたびにワイルドキャットが経験値になっていきます。

 この間、ヨサクが受けるダメージは微々たるもの。


 そもそも隙間の多い骨を相手に引っ掻くという相性の悪い攻撃手段しかないワイルドキャットでは、ろくにダメージは通せません。


 ダメ押しに、本来は呼吸を妨げないために砂で覆えない顔すらも完全に防御されているのです。

 どこを引っ掻こうが砂の鎧がヨサクへ大きなダメージを与えることを許しません。


 さらにヨサクが立っているのは扉はないものの狭い入り口部分。

 はい、後方に立つ私は安全が保たれているという訳ですね。


 まさに完璧な布陣。

 近接戦闘のできるスケルトンさえ引ければ、ここは楽勝なんですよ。


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